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猫月の夜2021

 ……猫月。

 人間で言う所の『三日月』の光が私。

 『ニャトソン』の茶トラの毛皮を照らす。

 私には上手くは言えないが、猫月の光を浴びながら歩いていると、何か体にいい何かが何かしてなんだか良い気分だ。

 きっと猫月の光には何かがあるんだろう。


……今の発言で読者には私があまり頭の良い猫ではないことが皆にバレてしまったと思う。


 いいさ。皆私ではなく我が友。

 猫探偵であり『猫で一番頭が良い』を自称する『ニャーロック・ニャームズ』の名推理を期待しているのだ。

 あくまで私は彼の語り部でしかない。


「久しぶりにニャームズ先生のお話が聞けるとあって、あのお方のファン『ニャーロキアン』達は喜んでいますよ」


 前を歩くミニチュアシュナウザーの『ケーブ』がこちらを向いてそう言った。


 ケーブは動物の世界の平和を守る警察……『ドーサツ』のエースである。

 猫月の夜の講演会の為に公園に向かう私の為にボディーガードをしてくれている。

 私たちの住む『鰹が丘』はどうやら田舎らしい。

 空は高く海は広く森も山もある。

 太陽が昇ると明るくなって月と交代すると暗くなる。

 それが当たり前だと思うが『東京』という場所ではそうではなく夜も明るいらしい。

 おおそうだ! 今日は東京の『雲丹伊倉(うにいくら)』で起きた『セミ殺蝉事件』について語るとしよう!


 ニャームズと居ると話すネタに尽きない。

 正直何を話そうか今の今まで決めていなかった。



 会場である公園に着いた。

 相も変わらず猫、犬、鳥にエトセトラ! たくさんのニャーロキアン達がいる。

 私が来たのに気がつくと『ワッ』と声をあげてくれた。  

 皆がいかにニャーロック・ニャームズを尊敬し、私から彼の話を聞きたがっているのかが良くわかる。

 直接ニャームズが語れば彼らニャーロキアン達も喜んでくれるだろうに……。

 あのオスは極度の恥ずかしがりなのでいつも、私が『今宵は猫月の夜の講演会をやるよ』と言うと『そうかい』と一言残し、昼間から姿を消してしまうのである。


「……ん~」


 しかし以前より家飼いされている猫や鳥の数は少ない気がする。

 いつもいたあの顔やあの鳴き声がないのは寂しい。


 仕方がないと言えば仕方がないのであろう。


 去年から『人間達は少し変わった』のだ。

 ラジオでも現実でも、なんだかんだと騒いでいるなぁと思ったら急に『マスク』なる我々から見れば息がしにくくなるだけであろう布を口にあてがい始めた。

 それは我々動物達にとってかなり奇妙な光景だった。

 そして多くの家飼いの動物達は家から出るのを禁じられ、犬達が散歩する姿すら見なくなった。

 私はそんなことは知ったことかと外出しようとしたがフジンに『緊急だからね? 緊急な事態だからね? 猫は特にかかりやすいから。ね? ね?』

と撫で肩をガッシリ掴まれて頼まれたのでしばらく外出を控えた。

 住居と食事を提供してくれるフジンの頼みなのだから仕方がない。

 私もニャームズと同じく『猫紳士』なのである。


「猫! 猫です! 三猫です!」


 あるメス猫が動物たちに肉球を指して大声を出している。

 『三猫』……『猫三匹分距離を置いて座れ』という意味なのだが、どうにも堅苦しくていけない。

 私の話など気楽に好きな場所で好きなように聞いてくれ……と私が土管の上に立って言うとそのメス猫は「まぁそうですね」と分かってくれた。


 さあ。話すとしますかね。


「んにゃん」と私が咳払いすると動物達は沈黙した。

 うーん。だからもっと気楽に聞いてほしいのだが……。


「え~。それでは始めます。まずは我が友。ニャーロック・ニャームズの2020年の奇行からお話しないといけません……」


 久しぶりの猫会議が満点の星空と猫月の光の下行われる……。

 


 

 

 

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