11. 隠れ蓑
「蓑は、身を隠してくれるだけの道具じゃない。体を小さくしたり、大きくしたりもしてくれる。変わり身の術はこの蓑を応用してできる高度な術だ。
蓑は使う者の心の内を見る。心を鍛えんとな」
先生は何度もうなずいて、自分でも納得していた。
ぼくたちに気づき、「おお、また新人がきたか。聞いておったろう? 蓑を操るのは難しい。ちょっとやってみるか」と、声をかけてきた。
「ええっと……その……」。隠してもらう正当な理由、っていうのを探しているぼくに、「ちょっと羽織らせてやるだけだ」と先生は言って、肩に蓑を乗せた。
お、重い……! ぼくはよろけて倒れた。これ、本当に蓑?
先生は笑いながら「重いか」と聞いた。ぼくは正直にうなずいた。
「どのくらい重く感じるかは人によって、修行の度合いによって違ってくるが、いずれにせよ、これを羽織ったまま、走ったり、飛んだり、動き回るわけだな」
「えー!」
「巧、体を見てごらん」。伊藤さんに言われて胸から下に目を落とすと、おおー、蓑をつけている部分は透明で、床しか見えなかった。「本当に消えちゃうんだー!!」。まじまじと確かめた。
先生がさっと蓑をはずす。とたんにぼくの体は軽くなり、着ていた洋服とズボンが姿を現した。ぼくより先に来ていたもう一人の男の子は口を開けてぼくを見ていた。
「自分の蓑は自分で作るんだよ、ぼくはまだその段階まで行ってないけど。蓑は自分の分身みたいなものだから、かなりレベルアップしてからじゃないとできないんだ」
伊藤さんは目を輝かせて、先生の蓑を見つめていた。




