帰り道
掲載日:2019/07/24
これは学生の頃、父親に聞いた話だ。
その日、父は同僚数人と会社の近くで飲んでいたらしい。深夜零時を回り、飲んでいなかった部下の車で送ってもらうことになったそうだ。
山道に差し掛かった時である。前方の急カーブに『山火事注意』の看板が建てられていて、その前に後ろ向きで女性が立っていた。
「え……?」
運転をしていた部下は動揺したようにそう呟いた。しかし、父達は酔いが回っていたらしく、部下に車を停めさせたらしい。
「おおーい、おねえちゃーん。こんなとこにいちゃ危ないよ」
「送ってやるから、乗ってきなー」
父達はそう声をかけたそうだ。
その声に反応して、女性がこちらを振り向く。
その土色の顔は、どう見ても生きている人間のものではなかったそうだ。
何故なら、二つの瞳は真っ黒で、ぽっかりと穴が空いたように窪んでいたから。




