第4話「熱く!高く!そして行動せよ!-2-」
風船で首を吊った男と並んだ。彼は、首を九〇度捻じ曲げて、こちらに視線を伸ばした。
幸いなことにも、見つめ返すと目を逸らしてくれるシャイで照れ屋な男だった。風船で首を吊った男は、早足に消えていった。
「……あんなのも、住人なのかい?依怙」
「コスプレかもしれません。あれでも普通なほうです」
「ふーん」
メルニポネさんは、後ろへと消えていった。風船で首を吊った男を見返していた。
「悪いことをしたなら、消されますよ」
「なら安心だ」
……。
僕がメルニポネさんの顔を見ていると、
「何かな?」
と言われてしまった。
「誰かと一緒に散歩するて、こんなに楽しいことなんだと思っていました」
「変だよね、それ」
「かもしれません。でも、嬉しいんです。寂しくありません」
「ぼっちなの?」
「友達はもう、群青朱里さんだけになってしまいましたから」
「誰それ」
「僕の友達ですね」
「ふーん」
いつの日にか、メルニポネさんが友達になってくれる日はくるだろうか?もしそんな日がきたら、僕はとても嬉しいのに。
エスティアさんも友達になれたならな。EDCの人や、他のエイリアンの人たちも。友達は、たくさんいれば寂しくはない。
「危ないて、楽しいですよね。だから友達が一人だとーー」
ーー安心できるのです。寂しいから減らない友達だと嬉しくはありますけど。
「変な考え方ー」
「かもしれません」
「でも、そんな薄情者だからボクやEDCの変態にも動じないんだね、てあらためてわかったよ」
また別の人が前から来た。特殊部隊が被るようなガスマスクに、鉛の前掛け、ギザ歯のついたスコップを手にした大男だ。鉛の前掛け以外は何も着ていないから、エスティマさんと同じだ。
「……」
ガスマスクを被った独特の呼吸音が聞こえた。目は曇っているから見えない。手と足の区別がつかない太い筋肉には、相応の太い血管が浮いていた。
「……」
前掛け小父さんさんは、軽く会釈をするとそのまま去っていった。
「この町て、変な人が多いね」
「そうでしょうか?怖いだけでしょう」
「こえぇよ、なにあれ。頭を割られるかと思っちゃったよ」
「あるかもしれませんがーー」
「あるんだ!?」
「ーー大丈夫ですよ、たぶん」
「ボク、今度から外を歩くときは絶対銃を持ち歩くことにするね」
「身を守ることは大切です。ヒーローだって、生きていなければ助けられませんから」
ヒーローに助けられるのは、ヒーローが駆けつけるまで生きることのできる子たちだ。
「世の中には、悪い人はたくさんいます。問題は、それに対して『良い人がどれほどの比率でいるか』ですよ。この町には、たしかに悪い人はたくさんいますが、それ以上に良い人がたくさんいます。比率の問題ですけど」
「じゃあさーー」
メルニポネさんは言った。少し、悪戯顔だ。答えましょう、と僕も少しだけ備えた。何を訊かれるのか何を答えるのか。
「ーー依怙は、どっちの人間?良い人か、悪い人か」
僕は答えなかった。とても面白い質問だ。こういうことがあるから、誰かと話すことは好きだ。僕はひとみしりだから、緊張してしまうけど。




