カミサマ
「すげぇー。見ろよ?巨大ロボだぞ、巨大ロボ」
「うん、まごうことなき巨大ロボだね」
「別に生身でも負けないだろうに」
「わざわざやられて第2形態だよ」
「まさかのアーノトーフェ級戦艦呼び出しから」
「驚天動地、ビックリ仰天の変形合体」
「さすがは奇蹟の魔法少女だな」
「白い奇蹟、ヴァイスヴンダーは伊達じゃないね」
『ホーミング!シスター!』
「おぉ!曲がるレーザーだ!」
「光自体は重力レンズとかで屈折させられなくはないけど…………実際目にすると感動だね」
『シスター!ビーム!』
「由緒正しいポージングからのビームだな」
「アレってホントは冷凍光線らしいね」
「だがこのロボットは違うな」
「えぐりとられた地形がぽっかり消滅してるね」
『10連シスター砲!』
「あれ?なんか違う武器が出てきたぞ?」
「反中間子砲とか搭載してそうだね」
「うーん?原子を破壊するから、防御力を無視してダメージを与えられるってやつか?」
「そうだね」
「しかし無敵鉱石は永遠不変の性質を持つから、それでは破壊できんぞ?」
「本体である無敵鉱石武器が不滅だから、肉体を破壊されても、復活させるまでもなく再生するって…………チートだね」
「チートは向こうもだろ。前の世界でつけた傷もなくなってるし、さっきだって何事もなかったように復活したし」
「それこそ魔法少女の面目躍如だね。光そのものになるなんて。規定路線なの、アレ?」
「まさか。光でできた立体映像を見本にさせて、そのまま光そのものになると思うかよ」
「偶然の産物なんだね。まぁわかってたけど」
「俺はそんな先々まで見通して手を打つなんて真似はできねぇよ」
「計画性ないもんね。ホント似た者同士」
「…………それは置いといて。不滅の本体を持つ使い魔と、無限にリトライできる魔法少女。このままじゃ千日手だぞ」
「うん、そうたね。今回の無敵鉱石には前みたいなタイムリミットもないだろうし。どうやって突破すんのかお手並み拝見だね」
『愛と勇気の!シスターパーンチ!』
「格闘?別に生身が潰されても、本体が無事なら復活するのにか?」
「結局、無敵鉱石をなんとかしないと話が進まないのにね?」
「…………ん?復活しない?なんでだ?」
「んー?あれ?無敵鉱石、バラバラになってない?」
「あ!マジだ!本体が破壊されたらそりゃ再生できんな」
「ってゆーか。いくら巨大ロボでもさ。なんで無敵鉱石を砕けたの?」
「ん?たしかにな?…………いくらアーノトーフェを模して作ったとしても、無敵鉱石は俺の専売特許だ」
「アダマンタイトでもオリハルコンでも。無敵鉱石は壊せない。同じ無敵鉱石を用意したんならともかく」
『死ね!死ね!死ねぇえええ!』
「お、フュンフだ。健気に反撃してるな」
「アリとゾウより絶望的な戦いだね。豆鉄砲より効いてなさそう」
「ん?効いてない?なんでだ?無敵すら侵食する無敵鉱石武器だぞ?」
「まったく効かナッシングだね」
『可憐合金プリティウムのこのボデーに!そんな攻撃は通用しねー!』
「…………」
「…………」
「可憐合金?」
「プリティウム?」
「なんだそりゃ」
「いやぁ?ネーミングセンスはちゃんと師匠のものを引き継いでると思うよ?」
『かの無敵鉱石に匹敵する可憐合金!素材がおんなじランクなら!投入量が多いわたしが勝つ!』
「はー」
「すげー説明口調」
「そうか。無敵鉱石は作れなくても、同等の代替品ならアイツも作れんのか」
「で、素材に差がないなら」
「デカイ方が強い」
「道理だね」
『フライングシスターキック!』
「うお!フライングニールキックだ!」
「ど迫力だねぇ。あの巨体でプロレス技って」
「っつーか、運動性が高すぎる。たしか大きさの違うものが傍目から見て、同じ早さで動いてるように見えるなら」
「大きさの違い分早いってことだね」
「全長4kmの巨大ロボが、元の魔法少女と遜色なく動いてるよーに見える」
「元の身長って130cmぐらいだから軽く3000倍早いってことになんの?赤い人の1000倍だね」
「それにレスポンスが良すぎる」
「たしかに操縦してるみたいな辿々しさはまったくないね」
「人型巨大ロボの唯一にして最大の強みを押し出してきたか」
「機能性を考えたら戦闘兵器は、人型である必要がないって、そもそも論の話だね」
「戦車と同じ武器を人型ロボットが持ってても、機動力・射撃の安定性・攻撃射角・被投射面積のあらゆる面で車両型に劣る」
「航空兵器と比べても同じだね。車も飛行機も目的のために最適な姿をしてるんだから」
「そんな不適切な人型の実利的メリットは、主に2つだと結論付けた」
「人間大の大きさなら、人の道具をそのまま流用できる点だね」
「専用の装備なしに高い拡張性を持てるようになる」
「でもあれは巨大ロボット。人間の装備は使えない」
「なら残るメリットは1つ」
「操縦者と連動する直感的な操作性の実現だね」
「もしも腕が何本もあるロボットを動かすとなると、各腕を動かす為に操作の習熟が求められるだろう」
「だけど最初から人型にして、思った通りに動くようにすれば、専用の知識はいらなくなる」
「レバーをガチャコン動かすコクピットで、人型ロボットを操縦するのって、かなり意味がないんだよなぁ」
「人型ロボットである必然性を求めるなら、操縦系統は本人追従式」
「まぁつまり」
「あの巨大ロボは、魔法少女の非常識な身体能力を、あのド迫力スケールで発揮できるんだね」
『シスターサルトプレス!』
「全長4kmの月面宙返りってすげぇ迫力だな」
「3人娘もなす術なく全滅したよ」
『ギャラクティカシスター!』
「なんだ?マグナムか?」
「いんや…………あれはバスターだね。極太ビーム」
「地形をえぐり去ったな」
「地表がガラス化とかしてないから、温度はないみたい」
「ならあれは熱量攻撃じゃなくて、トラクタービームの類いなのか?」
「というかエナジードレイン攻撃?」
「質量保存の法則ってなんだったんだろうな」
「消えたはずの質量が生むエネルギーもどこ行ったんだか」
『シスターウィング!』
「飛んだ」
「うん飛んだね。どこ行くんだろ」
「ん?教会?」
「だねぇ。ゲームの最初の街。主人公の勇者の本拠地」
『出てこいや腐れパツキンショタ!ドメス・ヴィオレン・モラハザード!てめーをバラバラに砕いて!わたしのぷにぷにロリータボデーの潔白を証明してやらー!』
「ん?なんか勇者に恨みでもあんのか?」
「はぁ…………お兄さんがそれを言う?」
「なんだよ」
「後ろめたいことがないのに、本気で好きな人に誤解されるって辛いよ」
「…………」
「エンディングで結婚なんて。その気もないのに」
「なにがいいんだか」
「一途なんだよ。全身すべてで愛してる」
『シスターストンピング!』
「うわ。勇者が全身の骨砕かれた」
「金髪の子かわいそう」
『ふふふふふーん………これでいい。待っててね』
「こっち見たぞ?」
「あの娘は最初から、仕組まれてたことを知ってたぽいし。こっちの監視は折り込み済みでしょ」
『今行くから』
「地面が歪んだ?重力を操ったのか?」
「ブラックホールを作ろうとしてるのかな?」
『おに………』
「…………消えた」
「さぁ。もう逃げられないよお兄さん。あの子は世界を越える旅に出たんだから。光になって。どんな障害も乗り越える。初恋のために」