走る暗黒聖女
「うおおおおお!」
シャカシャカシャカシャカ!
全力聖女走りで無人の野を行くわたし!
ただいま追っ手を振り切るために逃走中!
否!
逃走中であるものか!
あのまま戦えば勝つのはわたし!
なぜ勝者のわたしが逃走するか!
つまりこれは逃走にあらず!
そう!
この道こそビクトリーロード!
あの果てしなき空へと繋がる勝者の道!
このまま駆けて!
いざ行かん!果てしなき空へ!
時速20kmを突破!
時速30kmを突破!!
時速40kmを突破!!!
時速50kmを突破!!!!
時速60kmを突破!!!!!
「まだまだー!」
わたしは1分1秒進化し続けている!
昨日のわたしより!
今日のわたしはブランニュー!
「時速100km突破だー!!!!!」
速い!
速いぞ!
ぼくらの暗黒聖女!
「どんどん行っくぞー!」
無人の野を切り裂く暗黒の弾丸!
あれはだれだ!?
だれだ!?
わたしだ!
わたしは炎の暗黒聖女!
「時速150km突破ー!!!!!」
ロリータボディにマキシマム詰め込んだ!
夢!
希望!
乙女心!
「燃えろファイヤー!」
それらが合わさり瞬間バーニング!
奇跡の化学反応!
暗黒聖女を動かす動力となる!
「限りないサンダー!」
もはや暗黒聖女のエネルギーは!
闇夜を切り裂く稲妻とみま号!
よくわかんないけど多分超速いぞ!みま号!
「時速200km!!!突破だーっ!!!」
ずどどどどどどどど!
暗黒聖女を追いたければ地面を見よ!
何故なら地面を穿った足跡が残ってるから!
コンバインいらずだ暗黒聖女!
「飛び立て!暗黒聖女!」
空気を切り裂く暗黒聖女は今!
両手を水平に展開!
その空気抵抗を揚力に!
ミラクル聖女コンバート!
「テイクオーフッ!」
―――時速―――300km!!!!!
お手柄!
暗黒聖女!
人類史上初!
生身でのフライトに成功!
「なんてなぁー、はぁーしんど」
少し休憩!
わたしの脳内では、それはもう華麗にフライトして!
ミサイルとレーザーとオプション3つとバリアーまで装備してたんだけどな!
いくら暗黒聖女でも!
両腕を開いて走っただけで!
空はとべなかった!
遠いぞ!空!
だいたい時速72kmで走れたら!
100mを5秒フラットで走れる!
もはや金メダルでオセロできるレベル!
男という名の物語!
ロマンというには熱すぎる!
許されるはずもない!
「聖女~♪フフンフフフン♪聖女~♪フフフフフフン♪聖女~♪フフフフフン♪フフフフ~ン♪」
鼻歌を歌いながらランランラン♪
くるっと回ってスースースー♪
大きく飛んでミキミキミキ♪
わたしは暗黒クレイジー教会から解放された!
わたしはしょうきにもどった!
ジャーンプ!
飛んでる平賀源内!
そして気が済んだら!
その場に乙女座りしてうなだれる!
カモンスポットライト!
独白シーン!
「でもダメ!始まっただけだもん!暗黒クレイジー教会の連中を根絶やしにするまで!わたし負けないんだから!」
真珠のような大粒涙を流す!
ひととおり済んだら!
仮面の下の涙を拭え!
やるぞベガス!
暗黒聖女がやらねばだれがやる!
倒立!
側転!
バック転!
瞬く間にロンダート!
微動だにせず着地!
冴えに冴え渡る暗黒聖女マニューバから!
ターゲットインサイト!
そのまま神聖バックホーム!
「いで!あ!?なに!?なにが飛んできた!?」
教会の敷地であくびしてたマヌケ面の暗黒クレイジー勇者に直撃!
油断大敵だでれすけこんにゃろ!
今日も体調はバッチリ!
聖女の健やかな朝は!
勇者に石をぶつけて始まります!
しかし勇者は殺せず!
投石じゃダメージが足りない!
アイツ、自前で回復魔法持ってるからな!
しかも教会にはわたし以外の聖女候補もいるし!
回復可能なダメージじゃ殺せない!
「かぁー!」
ガシガシと頭をかく!
「ままならなーい!」
ホントに相性が悪いし!
魔法攻撃はダメージ軽減された!
お互い神聖属性だから有効打にならない!
物理攻撃は致命傷にいたらなかった!
わたしのぷにぷにロリータボディに!
人1人を撲殺するパワーはなかった!
どうする!
どうする!
どうする!
君ならどうする!
戦力増強しかない!
例えば原作の聖女は武器が装備できない!
これは刃物を装備できないという意味ではない!
杖すら装備できないのだ!
人呼んでステゴロ聖女!
代わりにホーリーシンボル的なものを装備するとかもない!
それで魔法系ステータスが増えるとかもない!
とにかく素手!
無手勝流!
ちなみに原作で杖を装備できない理由!
それは明らかになってないが!
この世界で装備できない理由はわかる!
それは暗黒クレイジー聖職者にとって!
杖は権威の象徴だからだ!
暗黒クレイジー教会内で!
偉くなればなるほど!
豪華できらびやかな装飾の杖を持つ!
そして聖女に杖を持つことは許されない!
なんでって?
女だからだよ?
暗黒クレイジー封建社会において!
女こどもの立場は低い!
男と女がいればまずは男から!
ついでにいうと!
教会内の奥まった区画には!
高額の寄付を行った貴族を歓待するための!
大きなベッドだけある、よく整えられた部屋がいくつもある!
各地から集められた年端のいかぬ無垢な少年少女!
それらが一晩付きっきりになって!
暗黒クレイジー豚野郎の相手をする!
暗黒クレイジー秘密サービス!
わたしが暗黒聖女として覚醒する前は!
なにをする部屋だったかわからなかったけど!
よくわからないままお掃除とかしてたけど!
知識のある今ならわかるぞ!
汚れを知らぬ少年少女に!
暗黒クレイジー脂ぎった欲望を見せつけ!
暗黒クレイジーストレス発散する!
暗黒クレイジープレイルーム!
意識を取り戻した途端にわたしが離反するのも当然!
あのままいたらわたしも暗黒クレイジーサービス提供者になってただろうし!
あれ?
なんの話だっけ?
あぁーアレだアレ!
杖も持てないって話だ!
まぁそんなの今のわたしには関係ない!
システム的な制約も!
組織的な制約も!
ありとあらゆる面で自由!
例えシスター服にまさかり装備しても自由!
というわけで!
武器を手にしよう!
そうしよう!
ならお金を集めて店売り品を買うか!
それは暗黒ナンセンス選択!
ひとつ!
正義の味方、みんなの暗黒聖女ちゃんは!
実はアウトローなのです!
暗黒クレイジー教会が定めた暗黒クレイジー法に背くのです!
だからわたしは街に入れない可能性高め!
ウォンテッドされてたら!
ショッピングしてるとこに!
ハンティングされるかもしれない!
………と言いつつ!
あまり心配してないけど!
どうせ写真とか情報伝達手段のない暗黒クレイジーファンタジー世界!
出回るのは人相書き程度!
それも浮世絵みたいなテイストの!
わたしと結び付けられるやつはいないだろう!
萌え絵みたいな愛されロリータ顔だからな、わたし!
笑顔が邪悪なのがチャームポイント!
それより問題なのは!
ここが聖女と暗黒クレイジー勇者の育ちの地ってとこ!
つまり序盤の街!
店売り品は控え目に言ってうんこ!
うんこちゃん売ってやがる暗黒クレイジーうんこ武器屋!
初期装備から買い換える必要もない!
アイテムコレクター以外用なし!
「練習用の剣」!
「木でできた剣」!
上がアイテム名で!
下がフレーバーテキスト!
オォ!暗黒クレイジーやる気なし!
しかも原作の聖女は武器がないから!
売ってるのは勇者用木刀オンリー!
武器を売るのを生業にしてて!
なんで武器の紛い物しか売ってないんだ!
今日から看板たたんで材木屋になれ!
それか土産物屋!
アホ修学旅行生に木刀売ってろ!
わたし、材木屋に用はない!
まぁうんこ屋は置いておいて!
金物屋で刃物は欲しいな!
ナイフぐらいあるはずだし!
武器として使うんじゃなく!
普段使いの道具として欲しい!
ちなみにナイフで戦うってまずムリ!
さっきは散々バカにしたけど!
うんこちゃん改め木刀!
アレにすら勝てない!
ナイフで刺す前に!
脳天でスイカ割りされる!
リーチ重要!
小さいから受けるのも難しいだろうし!
ナイフをメインにしてるキャラってヘンだと思うの!
暗殺者キャラとか!
盗賊キャラとか!
攻撃にも防御にも不便だし!
まぁそれはそういうキャラが!
直接戦闘してるのがそもそもヘンなんだろうけどね!
ナイフは言ったとおり、道具として欲しい!
というか着のみ着のまま暗黒聖女!
旅支度とかできてないから!
ちゃんとした防寒具とか欲しい!
そしてわたしの武器選定は難しい!
だってわたしは暗黒聖女!
見た目シスター服のおしとやかロリータ!
そんなロリータがこれ見よがしに!
物騒な得物ぶら下げてたら目立つ!
シスター服自体は使い途があるから変えたくない!
聖職者って身分は役立つはず!
せいぜい暗黒クレイジー教会の評判が!
地に落ちるような使い方しようと思う!
というわけで!
シスター服でも違和感のない武器が必要!
それはいわゆる暗器というやつだろう!
鉄でできた扇とか!
鉄でできたキセルとか!
一見別の道具だけど!
武器としての性能を秘めている!
そんな暗黒シークレット武器!
しかもさっき言った!
ナイフとうんこ!違った!木刀!
いくらナイフが鋭くても!
木刀には届かない!
つまりわたしはリーチも求めてる!
それをわたしは手にする!
実はもうアタリはつけてあるんだよね!
アレならわたしが持ってても違和感ないだろうし!
殺傷力もバッチリ!リーチもバッチリ!
見てろ!
暗黒クレイジー教会!
暗黒クレイジー勇者!
暗黒聖女はお前らなんかに負けない!
次回!
別にピンチでもないけど明らかになる秘密!
2号ロボと合体した最強の暗黒聖女が登場!
その名はグレートソーフェミニ!
乙女の力を見せてやるから!
※番組の内容は予告なく絶対に変更します!