歩き出す暗黒聖女
「サンダーファイヤーナナ号!」
わたしを肩にかついだナナちゃん!
いわゆるカナディアンバックブリーカーの体勢から!
後ろに540度縦回転大ジャンプして!
わたしを背中から地面に叩きつける気だな!
「神聖スカルクラッシュ!」
抱えあげられた体勢から!
ナナちゃんのあたまに!
体ごと巻きつくみたいにして!
グルッと回ってきた自分のあしをひっぱる!
ギューッ!
「ぎゃーっ!?この技使えるとか!?フェミちゃんホントに人間なの!?」
「うーん?………ちょっと自信ないかも?」
聖人強度0のシスターボディで巻き付いて!
頭蓋骨を圧搾粉砕するって必殺技!
このままシルバーリングにしてもよさそうな芸術性!
「なにをいう。フェミは人間だ。どう見てもな」
「ありがとー!ローラちゃん!」
なんかフォローしてくれた!
「そうだよね、フェミちゃん人間だよね!」
「ニンゲン!フェミ!トモダチ!」
「ぎゃーっ!?ホントにコレ人間!?エイリアンじゃないの!?」
「ワタシ!オマエ!マルカジリ!」
「悪魔じゃん!?」
「わたしが悪魔でも友達でいてくれますか?」
「オバケを殺して平気なのーっ!?」
「その答えを探すため。わたしたちは生きてるんだ」
「ローラさん!?テキトーいうのやめてよ!?」
「実際関係ないしな。試合権がないわたしには」
そう!
今のローラちゃんはリングに上がれない!
相変わらずプロレスごっこ中!
「タッチ!タッチ!」
暗黒聖女の形した!
斬新なアクセサリをあたまにつけて!
必死に手をのばすナナちゃん!
「ここにタッチ?」
フラフラしてるナナちゃんのかわりに!
わたしがローラちゃんに手をのばす!
にょーん!
「あなたから」
首ふってタッチ拒否のローラちゃん!
まぁ敵チームだしね!
わたしの拘束がゆるんだスキに!
ナナちゃんが動く!
手をのばして!
受け取ってよ!
「タッチ!」
なにもいえなくなる!
スターダスト孤独感を越えて!
リングよ!
ローラちゃんは帰ってきた!
「クローズドゴリライン!」
リングインと同時に!
刈り取るような豪腕ラリアート!
「あぶねぇ!神聖殺法ゴッドシスター!」
1/1暗黒聖女の幻影とともに散開離脱!
「うわらば!?」
その場に立ってたナナちゃんにラリアート一閃!
「おのれ、よくもナナを」
「冤罪にもほどがあるし!」
わたしのせいじゃねーよ今の!
うらむならパンチ力1tのウルトラゴリラボディをうらめ!
「ゴリライオンサルト!」
「ゴリラなのかライオンなのか以前に!」
セカンドロープにとびのって!
その反動で宙返りして攻撃する華麗な技!
ライオンサルトをよりにもよって!
「ナナちゃんのからだでやりやがった!」
「メメントモリ!」
推定体重0.2tが羽ばたく衝撃力!
ざれ言をほざきながらナナちゃんはつぶれた!
※メメントモリ…(人はいつか死ぬんだから)死をおそれよって意味のラテン語!
それがオバケのいうことか!
世界一軽い重みのあるセリフを聞き流して!
わたしをつぶそうとするローラちゃんを迎撃!
「神聖!のぼり弱キック!」
ペシッ!
「んご!バカな!」
0.2tをのけぞらせる!
驚異の当り判定の強さ!
撃ち落とされて着地したローラちゃんを!
「ジャンプ弱パン!ジャンプ弱パン!」
「ぬ」
上から固めるみたいに攻撃するわたし!
デカキャラにありがちな弱点!
便利な切り返し技がないローラちゃんはつらそう!
「神聖!百合推し!」
「ぐあっ!」
自分のうしろをひっかけるみたいに蹴る!
あたまを飛び越しながら出したら!
わたしを目で追ったローラちゃんの後頭部にクリーンヒット!
「神聖しゃがみ大パン!」
ヒザを曲げて着地の衝撃を受け止めて!
そのまま流れるようにヒザをのばしながら!
アッパー気味に全力パーンチ!
もらった!
ローラちゃんの両手を!
クロスさせながらこっちに引いて!
相手のヒザを足場にかけのぼって!
閃光魔術のヒザ蹴りでバランスを崩す!
「神聖!」
わたしのおなかまわりより太い!
ローラちゃんの首を小脇に抱えて!
「ダークネスシスター!」
全力で引き倒して!
「ドオリャアァァァッ!」
全力でぶっこぬく!
美技!ダークネスバスターを!
わたし用にカスタマイズ!
たいていの相手はわたしよりでかいから!
打撃でバランスを崩して投げに持ってく!
これがわたしのダークネスシスター!
ズドンッ!
大地に轟音が駆け抜ける!
これが推定体重0.2tを叩きつけた音だ!
「暗黒聖女が伝家の宝刀を抜いたー!ワン!ツー!スリー!」
実況兼レフェリーのナナちゃんがすかさずカウントに入る!
「スイッチーオンー」
ナナちゃんが突然さけんだ!
「シスターチェインジ!」
わたしもさけぶ!
「奇怪だな」
ローラちゃんものそりと起き上がる!
まぁ!
クラッチ(拘束)をほどいて!
背中から落ちるようにしたし!
ローラちゃんも生きてます!
「まさか負けるとはな。1対2の変則マッチで」
わたしたちは練習試合で技を調整中!
「うん、おかしいね!首刈りラリアートされたあげく、リングロープ代わりにされたんだけど!いつから三つ巴戦になってたのこれ!」
まさかのタッグ相手からいいやつが決まって退場したナナちゃん!
かなり不満そう!
「戦況は絶えず変化してる」
「まごまごしてると?」
「孤立してしまうぞ」
「うるしゃーい!孤立させた本人がしたり顔してんじゃねー!」
「許せ。ほら」
サッ!
「許す」
スッ!
目にも止まらぬ早業で!
ワイロをやりとりする!
山吹色の菓子ってやつ!
「わたしもちょーだい!」
「ほら」
「わーい!ありがとーローラちゃん!」
モグモグ!
運動の後はバナナにかぎりますな!
わたしたち!
所定の任務に従い!
目標地点へ移動中!
腕試しがてら!
冒険者ギルドでクエスト受けてたら!
かなりよゆーだったし!
「風の塔とかいうとこへ出発進行ー!」
「おー!」
「おー」
いよいよメインストーリーを進行させよう!
おぼえてますか!
わたしたちの当面の目標は!
各地の精霊とやらを味方につけて!
暗黒クレイジー教会を滅ぼすことだったんだよ!
「しかし」
「どったの?」
眉間にしわよせてむずかしそうなローラちゃん!
「時間をかけすぎた」
「時間?」
「無事ならいいが。同胞たち」
「あー!」
今も迫害されて………全力パンチで撃退してる!
ウルトラパワフルな仲間たち!
ローラちゃん一族が心配なのか!
「まぁだいじょーぶじゃない?」
「む?なぜわかるんだ?」
「あの教会で組織だって動けるよーなの、いないはずだし?」
「それはそうだが」
わたしがそういっても!
ローラちゃんの不安は取り除けなかった!
………アイツらに協調性はないぐらいのニュアンスに思ってない?
そういうレベルじゃなくて!
暗黒クレイジー教会と戦うために!
精霊の力を借りるっていったけど!
………もう力を借りてる精霊がいるのを忘れてませんか?
「があああああっ!」
「うっせえええええ!」
「毎日毎日毎日!」
はい!
こちらところ変わって暗黒クレイジー教会!
全国津々浦々の暗黒クレイジー教会のうち!
生きる価値のないパツキンショタがいるとこをピックアップ!
そこには!
血走った目で暴れまわる!
暗黒クレイジー狂信者どもの姿か!
現在の時刻は夜中の12時!
なんでそんな時間に暴れまわってるのか!
それは!
ここのところ連日連夜一晩中!
耳をつんざく轟音が教会になり響いてるから!
べつにここだけ工事してるってわけでもないのに!
なんせ各地の教会で!
同時多発的に起こってる怪現象だし!
原因はなにか!
そう!
BGMの精霊さんだね!
わたしが最初から使えた!
システムの精霊の1つ!
精霊さんのかわいいイタズラにより!
厳かなパイプオルガン教会BGMは!
地面がゆれるぐらいの轟音が!
不定期になり響く暗黒クレイジー雑音SEの羅列に変更!
施設BGMだけじゃなく!
個人BGMも同じのに書き換えたから!
もうアイツらの人生に静寂と平穏は訪れない!
ねれないし殺気立って!
すごいギスギスしてる!
ちょっとしたいさかいで流血沙汰になるぐらいには!
それだけでも強力だけど!
「これは神の怒りだ!」
「司教の主張が神の道を外れているからだ!」
「違う!お前たち神父が神のご意向を軽々しく語って利用しておるからだ!」
このとーり!
上位の派閥とか敵対派閥とかに!
攻撃材料として使われてる感じ!
イエイ!
もう争いは表面化してて!
内部抗争から!
組織崩壊まで待ったなし!
ブタがブタを駆除する!
悪が悪を凌駕する!
これが正常な組織の自浄作用!
「だあああああっ!」
「うっせえええええ!」
「ふざけんな!」
「ぶっ殺してやる!」
衣食足りて礼節を知る!
衣食もいいけど住環境もね!