動き出す暗黒聖女
「なんで教会にいたの?」
「君に巡り会うために、わたしは生まれ生きてきたよ」
「死んでんじゃん!」
「こりゃまた失礼」
ケラケラ笑うおばけ!
「どこから来たの?」
「内なるイデアとかそんなとこ」
「どこだよそこ!」
「コウモリだけが知っている」
助けてコウモリさん!
「ローラの姉貴!野郎なにも答えませんぜ!」
「むぅ」
コウモリじゃないローラちゃんもお手上げ!
「えー!わたしちゃんと答えてんじゃん!」
処置なしってあきれるわたしたちに!
突っかかるおばけ!
「あぁ!酔っ払いの世相批判ぐらいには参考になったよ!」
「実りあるわー!からあげもらうねー!」
「うむ」
「あ!たこわさある!たこわさちょーだい!」
「へーい!たこわさいっちょー!」
ところ変わってこちら居酒屋!
お料理システムがある原作だからか!
メニューのラインナップは現代日本準拠!
っていうかおばけってメシ食うんやな!
「たこわさ好きなん?」
「っていうか、つまみは全部好き!」
「あるあるー!」
「でしょー!」
お酒が苦手でも!
おつまみは好きってことあるよね!
わたしもお酒は基本嫌いだけどおつまみは好き!
ちなみにこの世界でも未成年の飲酒は違法!
ホントの中生代だとそうもいってられないんだけどね!
だって井戸水なんて病原菌の温床だったし!
アイツラ糞尿を道に捨てるから地下水が汚染されてるし!
衛生的に安心なアルコール摂取は未成年でも必要だったり!
「苦手だな。わたしは」
「ローラちゃん薄味好きだもんね!」
「すごいヘルシー志向ー」
セロリをパリポリつまむローラちゃん!
「だって超健康優良児ローラちゃんだし!」
「なんで得意気なんだ。フェミが」
胸を張るわたしにツッコむローラちゃん!
「セロリって苦手な人多いじゃん?」
ローラちゃんのセロリに手を出すわたし!
食べられないほどじゃないけど!
青臭さを感じる!
「苦手か、フェミも?」
「好きってほどもないけど食べられる感じ!」
「好き嫌いないの?」
「基本ないつもり!」
「おぉえらいえらい」
頭なでられてご満悦なわたし!
「さておばけ!」
「はいおばけ!」
「語尾なのか」
安いキャラ作りに入るツッコみを聞きながら!
「まずおばけのお名前なんてーの?」
「わたし?わたしはズィーベン・ナームルスって呼ばれてたよ?」
「ふむ」
ローラちゃんはただうなずいた!
「ズィーベン?ナームルス?」
だけど!
わたしはちょっと流せない!
「どうしたの?なんかヘン?」
「それ、ホントに名前?」
思わず聞いてみた!
だってヘンじゃん?
もしもその名前を日本語にしたら?
名無しの7番ってことになるよ?
「うーん、やっぱヘンか」
「やっぱってことはヘンだって自覚はあんのね?」
「その名前はわたしの体をこんなのにした教会のやつらがつけたの」
「ふむ」
具体的になにしたかは知らないけど!
人をいじくってニンゲンモドキを作ろうとした畜生!
アイツらにとって町娘なんてモルモットも同然!
だから無機質な名前がついてるんでしょ!
人の尊厳を踏みにじる暗黒クレイジー教会!
「でも?」
「ん?」
「アイツらにつけられる前の名前があるんじゃ?」
「いや。そうは限らんだろう」
疑問を呈したわたしをローラちゃんがたしなめた!
「なんで?」
「孤児かもしれん。親のわからんな」
「あー、そっか!」
経済力のないアベックとか!
都合が悪くなってとか!
こどもが教会の前に捨てられてるのはよくあったし!
そういえば朝の掃除当番ヤだったなー!
玄関の担当が回ってくるとご対面!
とくに冬だとアイツらくたばってるし!
ちなみに強姦の類でできたこどもはほぼない!
これは犯罪率が低いんじゃなくて!
被害女性がそのままぶっ殺されるから!
殺すことないじゃないって?
甘すぎるかなーそれは?
基本的に犯罪者って人目につきたくないじゃん?
でも被害女性は泣き叫ぶから焦るじゃん?
黙らすのに殺すしかないじゃん?
しかも!
やる相手しだいじゃ無罪!
領民として数えられないやつは!
この暗黒クレイジー時代!
人間として数えられてない!
税を払うから住民であって!
住民は財産だから大事にされる!
だから税を払わないやつは大事じゃない!
浮浪者!
ルンペン!
そして冒険者!
こういう人間は公的に生きる権利が保証されてない!
つまり教会から離反したわたしたちなんて!
いつ殺されても犯されても埋められても!
文句ひとついえない!
まぁそんなボウフラ並みに尊い命!
もしこのおばけがそれだったなら!
まともな名前がないのもまぁふつう!
「というわけでわたしの名前はズィーベン・ナームルス」
「じゃあわたしも名前を捨てるかな!」
それを聞いてわたしも思い立つ!
そうだ、京都行こう!
「なにがじゃあなんだ」
「アハト・ナームルスになんの?」
「なんでナームルスファミリー入り?」
「ナームルス家は幅広く門戸を開いてるよ!特に化け物には!」
「この愛されロリータフェイスのどこが化け物か!」
「キックだけで神父さん殺すなんて、こどもはもちろん、大の男だってできないんじゃない?」
「あー、それかー!」
暗黒クレイジー神父は聖女パトランプでぶっ殺したしな!
蹴り殺すこと自体は大人ならできるだろうけど!
さすがにアレはわたししかできないだろうな!
秒間6回以上の全力ローキックなんて!
「ナームルスファミリー入りはともかく!名字を変えたいってのはあってる!」
「名字?」
「わたしソーフェミニ・クレージ!暗黒悪神クレージ由来の呪いネームなの!」
そう!変えたいのクレージの部分!
「神さまと同じなんてすごいんじゃないの?」
「神さまとして奉られてるけど、あれはちょっと力が強い悪魔とかだよ?」
「神さまなのに悪魔なの?」
おばけがふしぎそうにコッチ見てた!
「だってそうじゃない?なんで世界はカンペキじゃないの?」
「む?どういうこと?」
「パーペキな神さまとやらが作ったのに、世界はぜんっぜんカンペキじゃない!なんで!」
「あー、そうだよね」
「ローラちゃんの仲間は迫害されてるし!ナナちゃんは実験に使われたし!なんでこんな目にあわされなきゃいけないの?」
「ナナちゃんってわたしか」
ズィーベンはドイツ語で7だし!
なんか名字もナで始まるし!
これっきゃない(断言)!
「カンペキなやつが作ったくせに!あんまりな世界!力不足か!悪意満点か!なんにせよカンペキとは言えないでしょ!」
「なるほどなー」
ナナちゃんもわかったみたい!
暗黒悪神クレージは!
神を名乗るにはあまりにお粗末!
だいたい!
わたしが翻意を抱いた時点で!
その反逆の芽が摘み取られなかった時点で!
ぜんっぜんパーペキじゃない!
そもそもパーペキって!
なにも欠けない!すべて満ちた!
これ以上ない状態のことでしょ!
なのに世界は変化してる!
元がパーペキなら!
変化はせったいに劣化!
世界が変化するなら!
それはパーペキじゃない!
もしも神さまがパーペキなら!
パーペキじゃない暗黒悪神クレージは!
ぜったいに神さまじゃない!
「そんな暗黒悪神と同じ名前なんて恥ずかしくてたまらないよ!」
「だから名前を捨てたいのかー、サラダとって」
「そう!もうわたしは暗黒クレイジー教会と関係ないし!はいサラダ!」
「なんにするんだ。新しい名前は」
「ふふーん!よくぞ聞いてくれました!」
「なんにするの?あーん」
「あーん!モグモグごっくん!わたしの新しい名字は!」
今いる!
ニセモノの神さまを否定して!
外側にいる!
ホンモノの神さまを讃える!
神さまを信じないなんてありえない!
わたしは神さまを信じてる!
どこのだれより信じてる!
だからわたしはこだわってる!
わたしはシスターなんだって!
どこの世界にいたって!
ぜったいにシスターなんだって!
「グノーシス!わたしは今日からソーフェミニ・グノーシス!」
ニセモノの神さまなんて!
いらない!
信じない!
ゆるせない!