魔族領からの帰還
「へぇ、ここが『帝都アラド』か……」
人の住んでいる大きい都市をこの世界で見るのは初めてなのか、帝都アラドに着くと入り口で止まって、目を輝かせていた。
「ほら、ぼさっとしてないで早く行くぞ」
まだこの時間帯なら訓練をやっているはずなので、『アラド学院跡』に早く行きたい。なので、早く行こうとカイトを急がせる。
「よし、まだやってた」
今日はアラド学院の生徒以外とも一緒に訓練をしているらしく、獣人などもいた。カイトは「ケモ耳美少女がいる……これは夢か?」と意味不明な事を言っていたのでとりあえず放っておく。
「アラド学園長、今、戻ってきました」
端にサーチル学院長がいたため、事情を説明するためにサーチル学院長に挨拶をしに行く。
「ウェル君か、お帰り。大抵のことはわかっているが、まず君の口から説明してほしい」
「なんで知ってるんですか」
サーチル学院長はウェルの方向を向いて、真面目な顔で言う。何故知っているのか聞いてみると
「それは視ていたからね」
と言われた。なんだか『見る』の意味がサーチル学院長とウェルで少し違ったように感じたがスルーしておく。
すると、サーチル学院長は指で音を鳴らす。その直後サーチル学院長の横に一頭の狼が現れた。
「何ですか、その狼は」
「私の使い魔だ。君が『帝都アラド』を出て行った時について行かせた。行っただろうスパイのことについては心配いらないって」
「ちょっと待て、ウェルはスパイをしていたのか」
ウェルがそう言う事かと納得していると、カイトがやってきて、驚いた表情でウェルに聞いてくる。
「まぁ、一応な……」
「何でだ……しっかり説明してくれ」
「カイトには話しておく必要がありそうだな」
ウェルはそのことについて説明しないと、話が進まなそうなので説明をし始めた。
「そっか、でもその意味はなかったんじゃないのか?」
ウェルの説明を聞いて納得したカイトは、サーチル学院長にそう言う。
「まぁな、ウェル君をスカウトしたところがあいつの所だったとは思わなかったよ」
カイトからの問いかけに苦笑いで、サーチル学院長は答える。どうやら、あいつと言うのはウェルのいた『アランディーク』の魔王フィンのことのようだ。
「そういえば、サーチル学院長とあの魔王様は知り合いなんですか?」
ウェルは転移する前にラーダに言われた事を思い出し、サーチル学院長に聞く。
「腐れ縁って奴だ。まぁでも、あいつは人には敵対心持ってないから安全だな、それより、魔族領で起こった事を話してくれ。時間が惜しいんだろう」
サーチル学院長はどこか懐かしむような表情で、魔王フィンの事を言い、その後、真面目な表情でウェルに説明を求めるのだった。
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