本来の『ネクロマンス』
訓練はとてもシンプルなものだった。筋トレや走り込みなどの、筋力や体力をつけるものだった。だが、量がとても多く、ウェルやカイトは訓練が終わるとへとへとになっていた。
「じゃあね、ウェル。また明日」
「ああ」
カイトは訓練が終わると、すぐ帰っていった。ウェルは、ラーダに訓練後残るようにと言われたので、宿に帰ることが出来ない。
ふと訓練場の玄関の方を見ると、カイトのほかに堅気そうな男の魔族と色気を漂わせた女の魔族もいた。この2人は、第3部隊の残りのメンバーで男の方がガイン、女の方がシェルという名前らしい。
「ウェル君、こっち来て」
ラーダがウェルに言った。
「それじゃあ、今から『ネクロマンス』について、教えるからよく聞いてて」
ラーダのところにウェルが到着するとラーダは真剣な顔でウェルにそう言った。ウェルは今まで、自分が避けて来た魔法なので少し乗り気ではない。
「ねぇ、ウェル君『ネクロマンス』ってどんな魔法だと思う?」
「生き物の死骸や魂を抜かれた体を操る魔法だよな」
ラーダは唐突にウェルにそう問いかけてきた。ウェルは確かめるようにその問いかけに答える。
「うん、そういう使い方もあるね」
ラーダはそのウェルの答えを肯定する。
「けど、『ネクロマンス』の本質はそこにはない。『ネクロマンス』は『魂を可視化し、会話できるようにする魔法』なんだよ。さっきウェル君が言った使い方はその応用の1つだよ」
だが、そのあとウェルに『ネクロマンス』の本来の使い方に教える。ウェルはその使い方が、あまりにも自分が知っていたものとは違ったため、驚きが隠せない。
「それじゃあ、なんでその応用で体が操れるんだよ」
「さっき私が言ったことをよく思い出して、『ネクロマンス』は『魂を可視化し、会話できるようにする魔法』だよ。見えて会話ができるなら、魂と『使い魔契約』ができるじゃないか」
『使い魔契約』というのは生き物と主従契約を結ぶことだ。契約できるのは魔族、魔物、獣、人間など魂があるものならなのでも結べる。もちろん、魂そのものとも契約が可能で、魔力とやり方さえ知っていれば誰でも出来る技能の1つだ。
「それじゃあ、なんでその使い方しか、人間族は知らないんだ?」
「大昔、魔族と人間族で大きな戦争があったのは知ってる?」
「ああ」
ウェルがもう1つの疑問をラーダに聞くと大昔の戦争について聞かれた。
ラーダが言っているのは『聖戦』と呼ばれている戦争で決着が着く前に、お互いに被害が大きすぎて終戦した戦争だ。
ウェルはアラド学院に転校する前の学校でそのことを習っていたので、知っていた。
「その戦争で、魔族は『ネクロマンス』をその使い方で乱用したんだ。だから人間族にはその使い方が強く印象に残ってしまい、その使い方が『ネクロマンス』本来の使い方だと思ってしまったんだろうね」
ラーダはウェルがその戦争を知っていると聞いて人間族に『ネクロマンス』が外道な使い方できる伝わった訳を説明した。
説明している時、ラーダの顔は酷く悲しそうな顔をしていた。
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