奥の手
ウェルは入軍試験で順調に勝ち続け、今、決勝戦の相手と戦っているところだ、相手はキサラギと似たタイプでスピードで相手を翻弄するタイプだった。
ウェルはキサラギとの戦績では25勝25敗となっており、今の相手に勝てるかどうか分からないという感じだったので奥の手を使うことにした。
ウェルは自分のズボンのポケットから鉄製の定規をいくつか出して『マテリアル・チェンジ』を発動し大量の剣を生成する。それを全て魔力操作で相手の周りに設置して一斉射撃する。
鉄製の定規を使い、『マテリアル・チェンジ』使用時の消費魔力を削減したから出来る事だ。恐らく、消費魔力を削減せずにこれをすると魔力切れになるだろう。
奥の手というのはいわゆる、『数の暴力』というやつだ。
「ぐはぁっ!」
相手は逃げ場がなく、その攻撃を受けるがだんだんとウェルの攻撃を捌ききれなくなり、吹っ飛んでいった。
「勝者、ウェル・クラウス!なんと、今年の入軍試験の優勝は人間だぁー!」
実況者も観客も人間が優勝するとは思わなかったようで歓声が上がる
「ふぅ……」
「お疲れ、ウェル」
「ありがと、カイトも4位、おめでとう」
カイトというのはウェルが試合前に会ったあの男の名前だ
「うん、でもウェルと比べたら全然だよ」
「なんで、カイトは準決勝と3位決定戦で手を抜いて負けたんだ?」
カイトは準決勝と3位決定戦で明らかに手を抜いていた。攻撃をしたら勝てた時はいくらでもあったのに全く攻撃をせずに防御ばかりしていたのだ。
「いいや、手を抜いてなんていないよ。相手が強かったんだよ」
「はぁ……あ、もう表彰式だ、行こう」
笑ってその事を否定するカイトに問い詰めても意味がないと思ったのか、ウェルはこれ以上その事をカイトに追求するのは辞めた
「あー、疲れた……」
入軍試験が終わり、宿に帰るともう夕食の時間になっていた
「何言ってんの、こんなことで根を上げてたら軍で皆んなについていけないよ……ほら、これ食って元気つけな」
店主のアイダはこの宿から入軍試験の優勝者が出たことで少し機嫌が良さそうだ
「あ、ありがとうございます……今日は肉料理が多いですね」
アイダから渡された料理を見ると、料理の8割程が肉料理だった。
魔族の肉料理は魔獣の肉などを使うのだが、ここの肉料理は本当に魔獣の肉を使っているのかと疑いたくなるほどに美味しい。
だが、今日は量が異常に多かった。
「もちろんだよ、あんたは肉たくさん食って力をつけないといけないからね」
「はは……そうですか……」
ウェルはこの量に対して乾いた笑い声を上げるしかなかった。
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