魔王との謁見
「私は、ここを『アランディーク』を治めている魔王フィン・エトランゼだ、お前の話はラーダから聞いておる。今からでも軍に加えたいのだが、他に軍に入りたいと言っている者もおってな……お前だけ何もせずに軍に加えるのはできん。なので入軍試験を受けてもらう」
「入軍試験ですか……」
魔王と名乗った老人は入軍試験をウェルに提案した
ウェルは少し怖くなった
魔王軍の入軍試験だ、きっと地獄のような試験なのだろう、例えば、魔族とトーナメント形式で戦うとか……
「ああ、入軍希望者全員にトーナメント形式で戦ってもらう。それで優勝、準優勝、2位、3位、4位の5人が入軍の資格を得る、参加するか?」
「はい」
予想通りだった、だが試験を受けなければ目的が果たせないため『はい』と答える以外選択肢はない、なので即答だった
「わかった、なら参加の申し込みはこちらで済ませておこう、宿は城下町にいくつかあるので、その中から好きに選べばいい後で、泊めるように手紙で書いておこう」
ウェルの返事を聞いて機嫌が良くなったのか入軍試験のことや宿のことについてもいろいろやってくれるようだ
「ありがとうございます、では僕はこれで」
「終わりましたか?」
部屋を出るとラーダが扉の横で待っていた
「ああ、入軍試験を受けることになった」
「そうですか……入軍試験はとても危ないので、気を付けてくださいね、死んでしまったら、私の苦労は水の泡になってしまいますから」
ラーダは面白がるようにウェルにそういう。表情を見る限り、魔族との戦い以外にも何が危険な事があると思ったウェルはラーダにそのことを聞く
「危ない……?何が危ないんだ?」
「これ以上は言えません、試験までのお楽しみということで。私はこれから魔王様に用があるので」
聞いたが、軽く流されてしまった。
仕方なく城を出て城下町の宿を適当に決めて入ると店のカウンターには定員らしい制服を着た金髪ロングの小さい角を生やした幼い女の子の魔族が立っていた。
その女の子はウェルを見るなり、顔を青ざめてウェルに物を投げつけてきた
「げっ!?ニンゲンがなんでここに、早く自分たちの家へ帰れ!」
「ちょ!?物投げつけてくんな危ないだろ」
しまいには、包丁などの凶器なども投げつけてきた。その女の子が物をあちこちに投げつけるため、宿の中は大混乱になった
「騒がしいねぇ……うわっ!リム、大切なお客さんに何やってんの!?」
カウンターの奥の部屋から牛の角を生やした、人族で40歳ぐらいの女性が来て、リムと呼ばれた女の子を止めてくれた
「だってコイツ、ニンゲンだよ?」
「ニンゲン?ああ、その子もお客さんだよ。さっき魔王城から手紙が届いてね……ニンゲンが1人泊まりに来るかもしれないが、追い出さずに泊めるようにって書かれてたんだ」
リムの言葉にこっちを向くと納得したように頷いてリムに説明し始める
「止めていただいてありがとうございます」
魔族とはいえ攻撃を止めてくれたので礼をいう
「いいのよ、私はこの宿の店主をしている者だ、よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
店主はよろしくと笑顔で言う。ウェルはそれに返すように返事をした
女の子のほうを見るとウェルを睨みつけていた。それを見た店主は不安そうな顔で
「ええッと、この子はリムって言うんだ……さっきのことはこの子も悪気があったわけじゃないと思うんだ。だから許してやってくれないか?」
と、ウェルに聞いてきた
「いいですよ、悪気がないんだったら」
店内以外は全て無事だったみたいなのでウェルも許さない理由がないと思いそう答えた
「そうかい、ありがとね」
それを聞いた店主は安心そうに顔を緩めた
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