昨夜の出来事
「サーチル学院長、大切なお話があります」
ウェルは訓練が始まる前にサーチル学院長に相談しに来ていた
「ん?ウェル君か、どうした」
「実は、昨夜魔王の幹部と名乗るラーダ・ストライブという男が僕の部屋にやって来ました。その男は僕を魔王軍に引き入れに来たそうです」
ウェルが淡々と昨夜起こったことをサーチル学院長に伝えていた。サーチル学院長は少し考えるそぶりをして
「そうか、それでは魔王軍に入りなさい」
と、言った
「はい?何故敵である魔王軍の味方になければいけないのですか」
ウェルは予想外の答えに驚いて少しの間、サーチル学院長の言っていることが理解ができなかった
「魔王軍の味方になれとは言っていない。いわゆる『スパイ』というやつだ」
サーチル学院長が少し呆れたように言う
「ですが僕はそれに長けた魔法を使えません」
「それは心配しなくても良いこちらでなんとかできる」
「そうですか、それなら自分はいいですが、チームメイトが納得しますか?」
「それは、訓練中に私とウェル君で説得すればいい、訓練中にチームメイトと一緒に私のところへ来なさい。そこで説得しよう」
「………わかりました」
ウェルは少し考えてそう答えた。ウェルにとっての『スパイ』をする上での心配事は無くなったためだ
訓練が始まるとウェルはチームメイトを連れてサーチル学院長のところへ行き、ウェルが魔王軍に入り、『スパイ』をすることを告げた
「私は反対ですっ!」
ラミアが大きな声でキッパリとそのことに反対する
「俺もだ、第一、ウェルはそれでいいのか」
グレイもラミアに賛同して、更に、ウェルに真意を問う
「うん」
だが、ウェルはその問いに即答する
「でもっ!」
ラミアはそれでも納得がいかないようで反論しようとするが
「私はウェル君が抜けてもいいかな」
エマがラミアが反論する前にウェルが『スパイ』をすることに賛成する
「エマ?何言ってんだお前、ウェルが死ぬかも知れないんだぞ?」
ダリウスが恐る恐るエマに聞く
「うん、私はウェル君を信じてるから、死なないって、生きて私達のところに戻って来てくれるって」
「なんでそんなこと言えるんだよ」
「だってウェル君ってすごい強いし、目が本気だから」
「っ!」
ダリウスがはっとする、実際、ウェルの目からはとてつもないほどの覚悟が感じられた
「だからさウェル君を信じよ?」
そんなダリウスにエマが諭すように言う
「はぁ、わかったよ、ラミアもグレイもいいか?」
「しょうがないわね……ただし、ウェル、絶対生きて帰って来なさい、わかった?」
「うん」
「俺もラミアと同じだ」
ダリウスたちは諦めたように少しため息を吐きながらも、ウェルが『スパイ』をすることに賛成した
「チームメイトから承諾を得たな………ならウェル君にやっておきたいことがある。ウェル君、ちょっと付いて来てもらえるかな?」
チームメイトからの承諾を得るとサーチル学院長がそうウェルに聞く
ウェルはそれに「はい」と答えサーチル学院長の後を付いて行った
昨夜の出来事 を最後まで読んでいただきありがとうございます。もし何か思うことがありましたら、感想やアドバイス、評価、ブックマークなどお願いします!