私が君を許す
エマはウェルの部屋のドアの前に立つと
「ウェル君、私は、エマ・グランデって言います。家具屋であなたの部屋の家具を選んだ店員って言えばわかるかな?実は、私もウェル君と同じチームになったの。それでサーチル学院長から聞いたけど、『ネクロマンス』が使えるようになっただけでそんなに落ち込むこと?」
と、ウェルに話しかける
「……あの時の人か……あの時は家具を選んでくれてありがとう。僕は外道な事が嫌いだから……何度も『ネクロマンス』の納得できる使い方を考えたけど思いつかない。だからショックなままなんだ」
ウェルはエマの問いかけにそう答えた。だが
「うーん、私は別にショックにはならないと思うよ。ウェル君が外道魔法が嫌いだとしても使わなければいいだけだし、大昔のどっかの国の王様は「目には目を 歯には歯を」なーんて言ってるし、だから、外道を敵にするなら「外道には外道を」みたいな感じでいいんじゃない?」
とエマは能天気にそう言い返す。ウェルは今までとは違う発言に憤りを覚える。
「ふざけるな……!」
ウェルはその憤りを隠さずにその一言に込める
「ふざけてないよ、私が言いたいのは「あんまり気にするな」ってこと」
「気にするな……?そんな事できるわけないじゃないか、僕が『ネクロマンス』を使える自分を許せるまでっ!そんな事できるわけない」
次のウェルの言葉には憤りではなく悲しさが込もっていた。グレイが何か言いたそうだったが今までのウェルとエマの話し合いにはグレイやダリウス、ラミアが発言する隙はない。
「君が自分を許せないのなら、私が許す。だから、大丈夫」
エマはそんなウェルに優しげに寄り添うように話しかける
「……っ!」
「だからさ、外へ出て一緒に魔王討伐訓練に行こ?」
「嫌だ」
ウェルはエマの言葉が信頼できないためかその誘いを拒絶する
「大丈夫だから」
だがエマはその言葉に「大丈夫」と返す
「嫌だっていってんだろうがっ!」
エマの発言に耐えきれず怒りに任せて思いのままに叫ぶ
「大丈夫、私が君を許すから」
それでもエマは「大丈夫」と返す
「……っ!」
「だからさ、一緒に行こ?」
「大丈夫……なのか?」
ウェルの心配そうな不安そうな声でそう聞いてくる
「うん」
「本当に?」
「うん」
ウェルの同じ問いかけに「うん」と何度も答える。すると部屋の中から頰を叩く音がして、
「……わかった、行く。だけど今日はまだちょっと無理だ。気持ちの整理がついてない」
とウェルは魔王討伐訓練に行くと言った。グレイ達はその言葉を聞くと嬉しそうに顔を綻ばせる
「わかった。待ってるから」
ーー翌日、ウェルは2日ぶりの日差しに目を細める。目の前には自分のチームのメンバーがいる。ウェルは深く息を吐くと
「それじゃあ、魔王討伐訓練へ行こうか!」
と笑顔で言った
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