第七話 鬼畜なシエル・特訓
短いですが、更新します!よろしくお願いします!m(_ _)mタイトルがコロコロ変わってしまって申し訳ございません!
ディサフィアンテ。セルカ村から少し離れた先にあるこの森は、別名帰らずの森。一度入ったら最後二度と生きて戻れないことからそう呼ばれている。
そのように呼ばれた所以は、何人もの冒険者が腕試しにその森に足を踏み入れ、そのまま行方不明になってしまうという事件が多発した為だ。
俺たちは森のすぐ入口のところで一度休憩する事にした。水分補給や軽い食事をしているときに、俺はふと気になったことをシエルに聞く。
「何でシエルがその森の中心部のことを知っているんだ?生きて戻ってきたやつがいないってことは、この森の中のことなんて分からないだろ」
「そんなの、私が直接行ってきたからですけど。あそこは私の秘密の特訓施設でしたし」
シエルは何当たり前のこと聞いてるんですか?とでも言いたげに頭の上に?マークを作り首を傾げて俺を見る。
「いやいや、そんな不思議そうな顔されても。俺そのこと初めて聞かされたからな?」
「はい、初めて言いましたから。でも以前から私はこの森のことは話していたと思いますけど。まさか私の話聞いてなかったんですか?」
「いや、聞いてなかったというか、話半分に聞き流していたというか……。オーケー分かった俺が悪かった、だから落ち着け。落ち着いてその手を降ろすんだ」
シエルが俺をジト目で睨みながら左手を向けている。俺は両手を挙げて降参のポーズを取ると何とかシエルを説得しようとした。
シエルは溜め息を吐くと俺に向かって手招きする。俺が恐る恐るシエルに近づくと、シエルのゲンコツが飛んできて俺の脳天に直撃した。
「!?」
視界がグワングワンと揺れ、目の前に星が見える。俺が声にならない悲鳴を上げて、脳天を抑えながらダンゴムシのように丸まり痛みに耐える。こいつ、けっこう思いっきり殴りやがった!
「人の話はしっかり聞いて下さい。常識ですよ」
「そんなこと言ったらお前だって常識外れなとこ……ごめんなさい何でもないです!だから殴らないで!もう一発食らったらシャレならん!」
シエルが余計なことを口走った俺にもう一発いっとく?と言いたげに拳を見せてくるので、俺は必死に自分の頭を保護する。
シエルは俺のそんな反応が面白かったのか、クスッと笑って手を下ろす。こいつ絶対Sだよな?
「そうですね、確かに私は昔鬼畜だとか血も涙もないとかよく言われましたね」
「俺の考えてることが分かるとかそれなんてエスパーですか」
「でも私、空には結構優しくしていますよ」
俺は今までを思い返してみる。俺大分シエルから鬼畜なことされてると思うんだけどな……。それは俺の気のせいなのかな……。
俺達は休憩を終えると、森の入口に入って行く。森の奥は暗くよく見えない。天気は快晴、普通なら木々の間から木漏れ日が差してもいい筈だが、あまりにも木が大きすぎる上に枝も一本一本が長く沢山の葉を生い茂らせているので太陽が完璧に隠されて見えないのだ。
しばらく歩いていると、魔物の気配を微妙に感じた。大量の魔物の視線が俺たちに集まった。じっと気配を殺し俺達を襲うタイミングを狙っているのだろう。
普通なら気配すら感じず、魔物が何処から狙っているかすら分からないだろう。実際、俺でさえも魔物一匹一匹か何処に隠れて俺達を観察しているのかは分からなかった。それだけその魔物達は気配を遮断する術に長けていた。
だが、こちらにいるのは魔法のスペシャリストだ。微量な魔力、視線等の情報から相手が隠れている場所をあらかた割り出す。
「雷帝」
暗雲が立ち込み、空から降り注いだのは大量の雷だった。全ての雷がまるで意思を持つかのように的確に敵が潜伏している場所へ落ちる。ゴロゴロと音を鳴らし一瞬光ってから爆音を上げ、敵の元に落ちる雷。
敵は何が起こったのかすら理解出来ずにその命を奪われていく。雷に当たり、身体を炭化させプスプスと煙を上げる魔物の死骸が巨木から落ちてくる。肉の焦げた匂いがあちこちから漂ってきた。
巨木は落雷した影響で燃えてしまったものが幾つかあり、火事になってしまうかと心配したが、シエルがパチンと指を鳴らすだけで巨木を燃やしている炎は鎮火した。一体どういう原理なのだろうか。
周辺から一切魔物の気配が消えたところで、俺達はどんどん奥地へ進み、やがて開けた場所に出た。
そこには何故か木が一本も生えておらず、上から太陽がさんさんと照らしていた。生き物らしい姿が全く見当たらず、日光浴なんかを楽しみたい時には丁度よさそうだ。
俺達がその場所へ踏み入ったタイミングで下から魔法陣が浮き出し、それが眩く光ると、上空にその魔法陣と同じものが出現しそこから大量の魔物が降ってきた。
大きさは二メートルぐらい。手足が太く、見た目がマントヒヒのような魔物だ。
「フール。知能が低く代わりに運動能力が発達している魔物です。魔法は肉体強化の魔法しか使えませんが、ただでさえ肉体的スペックが高いというのに、そこに肉体強化を掛けて馬鹿力で攻撃してくる厄介な魔物です」
フールは雄叫びを上げると身体の色を赤く変化させ、俺に飛び掛ってくる。あまりの速さに少し反応に遅れてしまった。
が、俺はブルートを盾の形に変化させ攻撃を防ぐと敵を弾いて瞬時に大鎌に変え、敵の首を狙って横に凪いだ。フールの首はいとも容易く切断され、身体から離れた首は鮮血を撒き散らしながら近くの地面にゴトっと落ちた。
フールの身体は首から上がなくなった状態で、血を吹き出しながら、後に大の字に倒れた。仲間がやられたからか、フールの鳴き声が一層大きくなり、四方から二メートルの巨体が俺達に接近し、丸太のように太く、俺達の数倍の大きさはある拳を使って俺達に殴り掛かる。
「こんな単純な攻撃、当たるわけないです」
殴り掛かろうとしていたフールの足元から勢いよく細く先の尖った岩の柱がせり出す。フール達の身体を下から尖った柱が貫いた。貫かれたフールたちは串刺しになり生命活動を停止させ、ダランと首を垂らし口から血液が溢れ出ている。
「ここのフールっていう奴らはどんだけ湧いて出てくるんだ?」
「無限に湧いてきます。私達がこの中央から離れない限りは。ですので、しばらくここに篭もり敵を倒しまくってレベルアップしまくる、というプランです」
「なるほどな、ちなみにどれくらい篭るかってのは分かるのか?」
「大体三日ですね。三日間フールを倒し続ければレベルも充分上がりますし、スキルなどの熟練度を上げるのにも充分です」
「三日……だと……」
俺は今のシエルの発言が勘違いであってほしいと強く願った。
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