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かかしに転生した俺の異世界英雄譚  作者: 緋色友架
第3章 死火山踏破編
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第42話 地属性の魔術


「GIGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAGYAA!」


「GUHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!」


「KISHASHASHASHASHASHASHASHASHASHASHAA!」


 魔物たちの、嘲笑うような声が周囲にこだまする。

 奴らは俺たちを取り囲むように集まってきて、翼で風を起こしながらこちらの様子を窺っている。異常な数だ。今まで山で相手にしてきた数をも凌駕する、圧倒的な物量。


 昨日、『惑いの森』で相手取ったエント共より数は多い。

 この数で一斉に攻められたら、間違いなくお陀仏だろう。


 だから――――奴らが油断している、今しかチャンスはない。


 集中しろ。

 魔力を、自分の中にあるエネルギーを感じろ。

 それを鉄の中に送り込み――――動かすんだ。


 それができなければ、俺たちはもれなく、死ぬ。


 生贄の少女も、ポルトも、ハサンも、俺も、そしてノエルも――――。


 そんなのは、死んでも御免だ!


「っ、アルレッキーノ! どうすんのこの状況っ⁉」


「いやぁあああああ死にたくない死にたくないいっ! あ、アルレッキーノ⁉ 守ってくれるんだよね⁉ 守ってくれるって、約束したじゃんかぁっ⁉」


「うるっせぇっ! 今集中してんだよ! だから黙――」


「…………アル」


 ぎゅうっ、と。

 いつもより強く、ノエルが俺のことを抱きしめる。


 触覚などない筈なのに、その温かみが身に染み入るように感じられた。目に見えないほどの、ほんの僅かな震えさえ、鮮明に。


 ……そう、だよな。怖いよな、ノエル。

 辺りを取り囲むのは、凶悪な魔物たち。

 大してこちらには打つ手なし。万事休すの八方塞がり。

 正に絶望的な状況だ。


 あの時と同じように。

 俺がまだ物言わぬかかしで、ダークドラゴンに迫られたあの時と、同じように。



 ――――やってやる。



 念じる。とにかく強く、強くだ。

 大地より遥かに硬い鉄を、それでも意のままに動かすイメージを持て。


 想像しろ。イメージしろ。そして念じろ。


 動け。


 動け。


 動け。動け。動け。動け。


 動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け――――――――――――――――――――――――っ!


「GISYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼」


 遂に意を決したかのように、シャンタクの一体が俺たちの方へ向かって飛来してきた。


 クソっ、動け、動けってんだよ!

 今この場で鉄を動かせなきゃ、俺たちは死んじまうんだぞ⁉


 ノエルを――――死なせちまうんだぞっ⁉


 そんなのはダメだ。絶対に、受け入れられない。

 溢れ出る魔力の全てを、足元から一気に注ぎ込む!

 すぐ足元の鉄に、莫大な魔力を!


「きゃあああああああああああああああああああああああっ‼」


「死ぬ! 死ぬよぉおおおおおおもうこんなことなら森に大人しく引きこもってればよかったぁああああああああああああああああ!」


 仲間の悲痛な叫びが聞こえる。

 それでも、俺の心はぶれることなく、ただ一つのことを念じていた。


 動け。


 鉄よ、動け。


 動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け――――――――――――――――――――――――――っ‼




「――――動けってんだよぉっ‼ このっ、鉄屑がぁっ‼」




 瞬間。

 足元から伸びた巨大な鉄の拳が――――迫り来ていたシャンタクの土手っ腹を貫いた。


「GI…………GA……⁉」


 なにが起きたか分からないように、シャンタクは穴の開いた自分の腹を見て瞬きしている。

 その目からもやがて生気は失われ――――融け落ちるように灰色の魔力に還っていった。

 俺の目の前には、力強く握り拳を作った、鉄製の巨腕だけが残された。


「な、なにこれ…………アルレッキーノ、あなた、こんなことまで……⁉」


「す、すっごーいっ! これ、アルレッキーノがやったのっ⁉ これ、キンゾクって奴でしょ⁉ そんなのまで操っちゃうなんて、やっぱりアルレッキーノってすごいねっ!」


「……随分な手の平返しだなぁ、ポルト。油断すんな、まだ敵は残ってる」


 そうだ、まだ敵は大量にいる。

 無数と言って差し支えない敵の、たった一体を撃破しただけだ、

 魔力を更に注ぎ、鉄の巨腕を動かそうと試みる――――黒々としたそれは、俺の魔力に呼応するようにうねり、動き、その拳を開いた。


 ――――いける!


 直感した俺は、惜しみなく魔力を注ぎ、巨腕を動かした。

 名づけろ。

 命名し、その魔術を自分のものとしろ。

 そして思うが儘に――――敵を蹂躙しろ!


「いっけぇええええええええええええっ‼『黄泉王の鉄拳(ヘヴィ・ラグナロク)』っ‼」


 再び固く拳を握らせた鉄製の巨腕を、俺は薙ぐように振り回す!

 ぶつかったシャンタクも、ナイトゴーントも、強固な筈の外皮を粉々に砕かれ、魔力へと還っていった。その光景を見て臆したのか、僅かに魔物の軍勢が引き下がる。


 だが、こちらは一匹たりとも、逃がすつもりはない!


 俺の背には、俺が守るべき大切な人が乗っているんだ。

 それを攻撃するってことはどういうことか――――分かってるんだろうなぁっ⁉


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――『根堅洲國王の鉄拳(ヘヴィ・ヨモツイクサ)』っ!」


 鉄を操作する感覚にも、だいぶ慣れた!

 背後に二本目の腕を伸ばし、周囲を更に薙ぎ払っていく。

 次々と、魔物たちが砕け散り、魔力へ還って死んでいく。


 その様子を見て、尻に火が付いたのだろうか――――意を決したように、魔物の軍勢は一斉にこちらへ襲い掛かってきた!


 上等だ!

 全員、まとめて相手してやるよぉっ‼


「『地獄王の鉄爪ヘヴィ・ナラクフォビア』ぁっ‼ やっちまえぇえええええええええええええええええええっ‼」


 両の拳が俄かに開き、その鋭い爪を剥き出しにする。

 腕が振り回されるごとに、近づいてきた魔物が爪の餌食になる。まるでミキサーだ。魔物たちは俺たちに近づき、あわよくば喰らわんと果敢に攻めてくるが、その悉くが鉄の爪の餌食になる。


 一匹たりとも、通して堪るか!

 俺の大事な人を、仲間を、傷つけて堪るものか!



「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ‼」




 何秒、何分、何時間経っただろうか。

 気が付けば、周囲に魔物の影はなく――――色取り取りの魔力の雨が、周囲に降り注いでいた。

 …………勝った、のか? 倒したのか? この場にいた全ての魔物を。


「アル。おつかれさま」


 隣に立つのは、唖然として口を開けているハサンとポルト。

 そうか…………終わったんだな。倒したんだな、全部。

 なら……よかった。


「……ふぅ」


「っ、アルレッキーノ⁉」


 と。

 ふらぁ、と倒れかけた俺の身体を支えてくれたのは、すぐ隣に立っていたハサンだった。

 危ない。危うくノエルを下敷きにするところだった。


「大丈夫? あなたがふらつくなんて、珍しいこともあるものね……」


「あ、あぁ、大丈夫だ。すまんな。ノエルは、大丈夫だったか?」


「うん、平気だよ。……やっぱり、アルはすごいね! いい子いい子ー♪」


 無邪気に頭を撫でてくるノエル。

 あぁ、それだけで報われる。心地よい達成感が全身を包み込み、ふらついていた身体を安定させてくれる。


 ふと、さっきまで猛威を振るっていた鉄の巨腕に目をやった。もう俺は、鉄に魔力を注いではいない。それでも、巨腕は腕の形で固定され、微動だにしていない。

 そりゃそうか。魔力を注入するのをやめたからって、鉄が独りでに元の位置に戻る訳がない。地面だって、その場でぼろぼろと崩れていくだけだったんだしな。


「あ、あなたたち…………一体、何者なの……?」


 と。

 問いかけてきたのは、磔から脱した少女だった。


 それだけじゃない。下からわらわらと、人の気配がする。ふと視線を向けると、あの鉄の扉が開いたのだろうか、ドームの下で多くの人々がこちらを見上げていた。

 居住区を守っている鉄のドームそのものを操った訳だし、内部の人間に伝わらない訳がないか。


 しかし、これはまずい。


 なにせ、俺の見た目はかかしなのだ。おまけに隣には魔物であるポルトもいる。ステュクス村の時がそうだったように、俺たち自身が魔物だと勘違いされてもおかしくない。

 どうしようかと思案していた、その時。



「聞きなさい! ニッケル村の人々よ!」



 ハサンが。

 鉄のドーム状でも足音なく歩くハサンが、自分から前に出て、大きな声を張り上げていた。


「私たちは、魔物を退治して回っている旅の一行です! これなる魔術を操るかかしは、魔王によって姿を変えられた元勇者! 突然の無礼はお詫びします! しかし、いたいけな少女を魔物の餌にしようという蛮行に、私たちは一言物申したい! ついては詳しい話を聴きたいのですが――――この村の長はどちらか!」


 俄かに、村人たちが騒めき始める。

 ……しっかし、よくもまぁぺらぺらと口が回るものだ。俺が、魔王に姿を変えられた勇者だって? まったくとんでもない嘘だな。


「ハサン。嘘吐いたらダメなんだよ?」


「あたしも、嘘吐くのはどうかと思うなー」


「ポルトには言われたくないわね。それに、黙ってなさいな。二人には、いい言葉を教えてあげる」


 やがて、村長と思しき老人が鉄のドームから出てきた。

 その目は、俺たちを訝しむそれではない。寧ろ期待するような、救いを求めるような目だ。ハサンの咄嗟の嘘のおかげで、難は逃れられたようだ。


「嘘も方便、ってね。嘘は女の武器よ、上手く扱えるようになりなさいな」


 確かに。

 今回ばかりは、ハサンの嘘に感謝を禁じ得なかった。


 窮地脱出! ニッケル村にて、アルレッキーノ一行を待ち受けるのは……?

 次話更新は1時間後! お楽しみに!


 面白かったら是非、ブクマや評価、ご感想お願いします!

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