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かかしに転生した俺の異世界英雄譚  作者: 緋色友架
第3章 死火山踏破編
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第41話 遠きに行うは必ず近きよりできず


大地の蠢動(グランドムーブメント)』の下端を、ニッケル村の入口と思しき鉄のドームに隣接させる。

 そこから、大地に大量の魔力を流し込む。すると、岩でできたゴツゴツとした大地は一気に隆起し、見る見る内に巨大な拳へと姿を変えていく。硬く握りしめたその拳は、目を剥くハルピュイアの一体を捉え、正確に殴り抜いた!


「『黄泉王の巨腕(ラグナロク)』っ‼」


「GIAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA⁉」


 顔面が凹むほどの力で殴り飛ばされたハルピュイアは、そのまま魔力へと還っていく。

 思わぬ敵の出現に、魔物たちは困惑を隠せないでいた。その隙に、ハサンとポルトを少女の元へと向かわせる。

 が、それを狙っていたかのように、一体のナイトゴーントがハサンめがけて飛び掛かっていった。


「きゃあっ⁉」


「んにゃろっ!『黄泉王の巨腕(ラグナロク)』っ‼」


 めきぃっ‼

 渾身の力で殴ったからか、外皮が硬い筈のナイトゴーントの顔面が一撃で陥没した。

 明らかに、他の魔物たちは怯んでいる。その間に、ハサンは素早くナイフを取り出し、少女の拘束を解いていく。


「あ、あなたたちは……⁉」


「旅の者よ。気にしないで。あなたを助けるのは、うちのリーダーの気紛れだから」


「っ……よ、余計なことしないでよっ! 離してっ‼ どっか行ってよぉっ‼」


 磔から解かれる前に、少女は暴れ、ぶちぶちと粗末な縄が切れていく。

 助けられることを、拒んでいる? どういうことだ?

 これもまた、文化の違いなのか?

 ハサンの危惧していた通りの――――でも、だからといってなんだ!


 どんな世界でも、どんな文化があろうと――――命を粗末にしていい筈がねぇだろ!


「っ……アルレッキーノ! せめて魔物っ、この魔物たちはどうにかできないの⁉」


「もももっももももしもしもしもしもしもだよ⁉ もし、もしも無理だっていうんだったら、こここここここの最強のピクシーであるあたしが何とかしてやっても、いい、いいいいんだぞっ⁉」


「ご安心を。間に合ってるよ……!」


 ポルトにはそう言ったが――――実際、状況は厳しかった。

 いくら数が多くても、相手は所詮ハルピュイアやナイトゴーント、シャンタクの群れだ。俺が本来のポテンシャルを発揮できれば、決して難しい相手ではない。


 そう、本来の力が発揮できれば。


 今の俺の魔術は、『大地の蠢動(グランドムーブメント)』によって伸びた地面越しに魔力を注いで作っているものだ。謂わば大地の遠隔操作。これが思ったように動かない。『黄泉王の巨腕(ラグナロク)』一本作るのが精いっぱいだ。


 さて、どうするか――


「っ! アルっ、後ろっ!」


「⁉ く、そがっ‼」


 ノエルの叫びに反応し、俺は咄嗟に前へと跳んだ。

 瞬間、今まで乗っていた『大地の蠢動(グランドムーブメント)』の足場が、ナイトゴーントによって粉々に砕かれてしまった。なんとか着地したのは、鉄のドームの上。俺は急いで、磔になった少女の下へ向かった。


 ヤバい、これは想定外だ。


 魔術さえ使えれば、こんな烏合の衆、俺の敵ではない。だが、俺の魔術は大地を操る魔術であって、大地を生み出す魔術は使えない。


 そして、鉄のドームの上じゃ、操るべき大地に届かない!


「クソっ! ハサンっ‼ 合わせ技撃つぞっ! 準備してくれ!」


「あんまり効くとは思えないけど――――行くわよっ!」


 瞬時に戦術をハサンとの合同魔術に切り替え、息を合わせる。

 ハサンが俺の腕に手を置いた。そこから鋭い刃のような魔術が流れ込んできて――――それが、俺の腕から大量の風刃となって射出される!


「「『奴隷解放戦閃(エンドスレイブ)』っ‼」」


 鋭い風の刃が、しかし、シャンタクやナイトゴーントの外皮には弾かれてしまう。

 何体かのハルピュイアを打ち落とすことには成功したが――――焼け石に水だ。寧ろナイトゴーントやシャンタクたちは、こちらに有効打がないことを察したのか、奇声を上げて騒いでいやがる。


 クソっ! ハサンとの『奴隷解放戦閃(エンドスレイブ)』も効かないんじゃ、本格的に打つ手がない!

 ポルトの光魔術にはそもそも攻撃技がないし!

 俺の魔術も、発動自体ができない!

 この鉄のドームの所為で、大地まで脚が――


「…………待て、よ?」


 俺の魔術は、大地を操る魔術だ。

 そして今、俺の足元にあるのは鉄だ――――つまり、鉱物だ。

 元々地面に埋まっていた、俺の操っている大地に埋まっていたものなのだ。


 ずっと、疑問には思っていたのだ。

 リュアから魔術の属性について話を聴いた時、『金属を操る魔術』については全く触れられなかった。その時は、元が日本人である俺には木火土金水の五行思想の方が馴染み深くて、西洋の地水風火を基本とする四大元素に違和感を覚えただけかと思っていたのだが。


 金属とは、元々は全て大地に埋まっているものだ。

 なら、大地を操る俺だったら――――この鉄さえも、操れるんじゃないのか?


 戦闘の最中見出した、一筋の光明。果たして上手くいくのか……⁉

 次回更新は明日の22時頃! お楽しみに!


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