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かかしに転生した俺の異世界英雄譚  作者: 緋色友架
第2章 森の賢者編
24/67

第24話 正しくないかかしの使い方


「あ、あなたの魔力を使うって、そんなの、どうやって――」


「リュアの槍を覚えてるか? 山賊の、ナイフでもいい! あの要領だ!」


 ノエルを脇に下ろし、傍らに立たせたハサンに、俺は言った。


 ずっと、考えてはいたことなのだ。


 俺自身はかかしだが、膨大な魔力を持ち、また魔術を使うこともできる。だが、あくまで俺はかかしなのだ。物なのだ。なら、リュアが槍を利用して魔術の精度を上げていたように、山賊がナイフを利用して魔術を使っていたように、俺自身を利用して、他人の魔術の精度を上げられはしないか、と。

 ハサンは決してバカじゃない。寧ろ賢い部類だ。

 一瞬で俺の意を汲んだらしく、目を大きく見開いてみせた。


「つまり……あなたを武器に見立てて、魔力を巡らせて、魔術を使えっていうの? …………で、でもそんなの、やっぱり無理よ! 私の魔術じゃ――」


「だが、俺の魔術でも簡単には倒せねぇ! 頼む! ノエルを守るためにも――――力を貸してくれ! ハサン!」


「っ…………!」


 眉間に皺を寄せ、思案するような顔を見せるハサン。


 だが、熟考するような時間は残されていない。

 こうしている間も、エントはじわじわと距離を詰めてきていた。どすっ、どすっと地面を根で突き刺す音が、見る見る近づいてくる。

 俺が『黄泉王の巨腕(ラグナロク)』で吹き飛ばしたところで、焼け石に水だ。こいつらはすぐに元の位置まで戻ってくる。

 それどころか、徐々に進撃してくる。


 遂に――――エントの根が、ハサンめがけて伸びてきた!


「っ! ハサンっ!」


「~~~~~~えぇいっ! 分かったわよ! やればいいんでしょ、やればぁっ‼」


 そう言うと、ハサンは俺の胴体を掴み、力任せに持ち上げた。

 俺の体重は丸太二本分+α。女子でも決して持ち上げられない重さじゃない。


 触れた瞬間から、いつもノエルが抱きついてくるのとは違う、感触を得ていた。


 なにかが流れ込んでくる――――これは、ハサンの魔力か。

 全身を、ハサンの魔力が包み込んでいく。

 そんな俺を、ハサンは――――思いっ切り前方へ振りかぶった。


「来るなぁっ! こっち来るな、あっち行けぇえええええええええええええええええええっ!」


 がむしゃらに振り抜いたそのタイミングで、ふっ、と魔力が俺から離れていくのを感じた。

 そして――――目の前まで迫っていたエントの身体が、真っ二つになっているのを、時が止まったような視界で目撃した。


「え?」「へ?」「うわぁ……!」


 根から先端まで、真っ二つに切られたエントは、そのまま力なく斃れ――――やがて、魔力へと分解され、光の塵となって消えていった。


 今のが、ハサンの魔術?


 おいおいちょっと待てよ、どこが弱いって? どこがダメだって?

 めっちゃくちゃ強いじゃねぇか!


「お、おいハサン! すごいぞお前! 謙遜する必要なんてどこにもねぇって!」


「す、すごいのはあなたよ! なにこの魔力量……全然、底が見えない……!」


「っ、次来るぞ! ハサンっ!」


「は、はいっ!」


 素早く反応したハサンだったが、しかし、エントの猛攻の方が速かった。

 仲間を倒されて激昂したのか、エントたちは一斉に根を伸ばしてきたのだ。気づいた時には既に、目の前はエントの根で埋め尽くされていた。


 今からハサンに、俺を振り回す時間はない!

 くそっ! こうなったら一か八か!


「ハサンっ! ありったけの魔力を俺に注げぇっ‼」


「や、やってるわよもぉおおおおっ‼」


 全身に漲るハサンの魔力を感じながら、俺は念じた。

 イメージは、風を纏うように、それだけで浮力たり得る竜巻でも纏うかのように。

 全身から風を吹き出し、空中さえ自在に闊歩する姿をイメージする!


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお――――『風神の蠢動(ウィンドムーブメント)』!」


「えっ? き、きゃぁあああああああっ⁉」


「ふわぁっ⁉」


 瞬間、下の方から夥しい数の刺突音が聞こえた。

 そう、下の方から。


 俺とハサンと、そしてノエルは今――――空を、飛んでいた。


 俺の身体に纏わせた風によって、俺たちは、空での移動手段を得たのだ!


「う、嘘……! こんなの、でたらめ過ぎよ! 信じらんない!」


「嘘でもなんでも、現にできちまってんだ! 活かさない手はねぇだろうよ! なぁ、ハサン! ノエル!」


「す、すっごーい! 今度は空飛んじゃったよ! ハサン、ハサンもアルもすごいすごーいっ!」


「……ほんっとこの娘は、人の気も知らないでぇっ‼」


 中空で、エントたちと目が合う。

 俺たちとエントは、その瞬間、確かに睨み合った。俺はハサンとノエルを背に負い、彼女たちを守ると姿勢で宣言していた。

 一方のエントたちは、本能を剥き出しにして、枝を振るってきた。

 俺は、両腕の端から鎌のように伸びる風の刃で、それに応じる。


 生き残るのは、どちらか一方だと、この瞬間、場にいる全員が理解した。


 森の魔物vsアルレッキーノ&ハサン。果たして勝者は――?

 次回更新は23時頃! お楽しみに!

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