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ワールド・イグジスト  作者: ほとりうえ
第二章
8/9

007.

眠りについて30分くらい経っただろうか?


スマートフォンのバイブレーションで目が覚め、寝ぼけ眼で画面を覗き込む。



>>少しだけ遅れるから、

着いたら暇つぶしててくれる? <沙鳥>



沙鳥からのメッセージであった。



>>了解した <末人>


そう返答しつつも、時間にうるさかった沙鳥にしては珍しく、ちょっと驚いた。


まぁ、東京ともなれば暇を潰す施設なんてごまんとあるだろうし、別にいいか。


>>すまぬ! <沙鳥>


誰だよ、キャラ変わっちゃったから。

朱美のペンペンと被ってるから!


「ねーねー、東京案内してくれるっていう沙鳥ちゃんだっけ?その子ってどんな子!?どんな関係なの??」

朱美が興味津々な顔をして質問を重ねてくる。


ちなみに雄二は横でアイマスクにヘッドホンを付けて爆睡中である。


「えっと、沙鳥は・・・ちょっと変わったやつかな、なんていうかあんまり見た目とかに気を使わないやつで、ゲーマーっていうか」


「アー・・・ハハハ・・・全然わかんないかも」


そりゃそうだ、さっきのメッセージでもわかる通り、沙鳥は少し変わったやつで、掴み所がないというか俺もアイツをどう説明していいかわからない。


「どんな関係っていえば、小中学と一緒の幼なじみだから、朱美と雄二みたいなもんだよ、まぁ朱美とは全然タイプの違う子だけど」


そういう関係としか言いようがない。

アイツの印象は女の子のくせにやたらゲーム好きで対戦ゲームにおいては超絶負けず嫌いだったところか。


あとは、見た目に気を使わない奴であんまり口数も多くなかったし、友達とかもあまり多い方じゃ無かった気がする。


なんかこの辺は話すと印象が悪くなりそうだからやめよう。


昔の事を思い出しながら手元にあったペットボトルのお茶を口に含んだ。


「ふーん・・・ねぇ!二人は付き合ってたの?」


「ぶっ!!グッフ・・・!!」

思わずお茶が口から吹き出そうになるのを手で塞ぎ抑えた。


「ちょっ!大丈夫!?」

朱美が慌ててハンカチを出そうとしたがギリギリ吹き出すまでには至らず、手の動作だけでいらないというジェスチャーを返した。


「もぉなにその分かりやすいリアクションー」


「ちっ違うって・・・」

言っておくが本当にむせただけであって、別に動揺したわけじゃない!


「あれ?アタシまだ何も言ってないよ〜?何が違うの?」

二ヒヒと不敵な笑みを浮かべ朱美は言う。

まるで誘導尋問だな。


「付き合った事なんてないって事だよ、ただの友達だって」


「って事は好きだったってことかー」

いやいや、なんでそーなる。


「違うって・・・」


「そうだったんだー末人!ニャハハ」

どっから湧いて出てきたんだこの猫ちゃん。


「レリオンちゃんの方が詳しく教えてくれそー!ねぇねぇ!」


「うんいいよーえっとね!・・・・」


俺はすかさずスマートフォンを操作し、秘匿モードを実行した。

このモードにすると、ファミリアが発する言葉がサイレントになり他者には聞こえなくなる。


俺の肩の上で口をパクパクさせながら何かを伝えようとしているが、残念ながら無音になり何一つ聞こえなくなった。


「あー秘匿モードにしてる!?」

朱美はすぐに気づき不満そうな顔をした。


「こいつが喋るとややこしくなるんだよ・・・」


レリオンは話すのを諦めたのか腕組みをして拗ねてしまった。


「と、とにかく別に好きじゃないし、付き合ってもいなかったし、ホントただの友達なんだって」


「えーつまんないなぁ」

朱美は納得いかないようであったが、諦めたようだ。


「あ、見て!!ドームが見えてきたよ!」

朱美が窓の外を指差しながらはしゃぎはじめた。


その声につられたのか雄二もアイマスクを外しながら、ムニャムニャと目を擦りつつ窓の方を眺めた。


「んー・・・おぉ!!」


俺も窓の外へと視線を移した。


遠方にキラキラと光る巨大な半円球状のドームがみえてきた。


ドームの表面はソーラーパネルが所々ににとりつけられているようで、それが太陽光を反射させてキラキラ輝いているのだろう。


しかしなんと言っても驚きなのはその大きさである。


スカイツリーはドームの収容外でありドームに隣接するように建っているが、それよりも遥かに大きく、高さは700mを優に超えているだろう。


何せ首都圏をすっぽりと覆い高層ビルすらその中に収容してしまうほどの大きさなのだから当然か。


「なんか高級料理とかで料理に被さってるやつみたいだな!」

雄二がドームを眺めながらいかにもらしい感想を述べた。


「あー確かにアレっぽいね!」

朱美も雄二に共感したのかしきりにアレっぽいと連呼していた。


ちなみに料理に被せるアレは英語だとドームカバーとかディッシュカバーとか言うらしく、正式にはフランス語でクロッシュと呼ぶらしい。


気になって調べちゃったよ。


でもあながちその例えは間違いではないかもしれない。


あの中は食べ物では無いものの、田舎者の俺たちは知らない、ワクワクするような何かが詰まっているのだろう。


それを今から食しに・・・体験しに行くというわけなのだから。


ドームには北、そして東西に巨大なゲートがあり、俺たちの乗る新幹線は北のゲートを通って首都圏、つまりドーム内へと入った。


ドーム内に入ってから間も無くして。


「ペンタローちゃん!!」


「おぉ、朱美が見えるでござる!!!」

ペンタローが朱美の首元で突然映像化して映し出されたのだ。


「うお!ストレットが首に!?」


「最初からずっとそうだったシュル・・・」


ストレットもまたドームをくぐった瞬間に雄二の首元で映像化し、現実空間へ投影された。


俺も肩へ目をやるとレリオンがくっきりと映し出されていた。


「なんか画面越しじゃないって逆に違和感あるな、ハハハ」


そうレリオンに話しかけるが、レリオンはパクパクとジェスチャーをするだけであった。


「レリオンちゃん、秘匿モードになったままだよ?」


「あ・・・」

朱美のツッコミで思い出した。


すぐにスマートフォンで秘匿モードを解除してやった。


「ブニャアア!ひどいよまったく!」


「悪かったって、ほら」


俺はまたスマートフォンの画面で魚のマークをタップすると、焼き魚もまた現実空間に美味しそうに投影された。


「ホントに全部が現実空間に投影されるんだね!すごすぎ!」

朱美は興奮気味にレリオンと焼き魚を見つめていた。


映像は乱れもなく本当に存在するように見えるし、改めて技術の進歩に関心してしまった。


俺はレリオンの頭の部分を触れようとしてみたが、さすがに質量は無く、あくまで映像であるということを実感する。


他の席を見ると俺たち以外にも同じように驚きの声が上がっており、みんな窓の外に釘付けであった。


何故なら窓を覗けば、巨大な広告が空中に投影されていたり、大きなケーキやら魚やらがプカプカと浮かんでいた。


「うまそーだなぁ、あれも、あれも全部映像なのかよ!!」

「ヤバイ!ヤバイ!東京ヤバイ!」


俺は雄二と席を代わってやった。


朱美と雄二は窓に張り付くようにしてドーム内の街並みと、そこに投影されるAR映像を眺め興奮を抑えられないようであった。


『間も無く終点、東京、東京です・・・』


そんなアナウンスが流れいよいよ、東京駅へと近づいてきた。


確かにドーム内のARの技術はすごい。


でも今はそんな事より、実は沙鳥とまた会えることの方が楽しみで仕方がなかった。


まぁ、さっきも言ったが別に沙鳥の事が好きとかそういう話しではない、決して無い!


「モグモグ・・・ねー沙鳥元気にしてるかなぁ?」

レリオンが先ほど焼き魚を頬張りつつ言った。


「さぁ、元気なんじゃねーの?」


「なぁ!なぁ!沙鳥ちゃんってどんな子!?」

雄二が先ほどの朱美と全く同じ質問を投げかけてきた。


さすがに二度も説明するのは面倒だ。

「ご想像におまかせだよ」


「えーなんだよその冷たい回答!?」


「アハハ、アタシさっき同じ質問したし」


「えーなんだよそれぇ!俺にも教えろよ!?」


そんな会話をしているうちに、新幹線は間も無くし東京駅へと到着した。



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