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「え、えっと……ごめ、外で待ってる」
「あ」
優芽ちゃんは私をそっと押すと試着室から出て行った。私はやってしまったなーと思った。
突然同姓の女の子から告白されても困るだけだ。私は自分の想いを止められなかったことを悔やむ。当然服を買う気持ちにはなれなかった。
「いこっか」
私は更衣室でしばらく時間をつぶしてカーテンをそっと開いた。たぶん優芽ちゃんは帰ってしまっただろうと思ったが、ぎこちない笑みを浮かべて私を待っていてくれた。
私はそっと頷くと優芽ちゃんの後について歩き出した。隣にならんで歩くことはできなかった。
気づけば夕方になっていた。あの後時間がどう過ぎて行ったのか良く覚えていない。一緒に食事をしているときにも会話はほとんどなかった。
私は優芽ちゃんの後姿を見ながら、今日で終わりかな、なんて思った。もう一緒に話すこと、遊ぶことは無理だろう。
私たちは今川辺を歩いていて、夕陽が私たちを包み込んでいた。綺麗だな、なんて人事のように思う。
「ね、由香ちゃん」
「あ……」
優芽ちゃんはそっと振り返る。
優芽ちゃんは優しい笑みを浮かべていた。その笑みはとても綺麗で、私には到底手が届かないと実感した。
「ちょっと座ろう」
「…………うん」
優芽ちゃんは水際にそっと腰を下ろした。私は、迷いながらも少し距離を開けて座る。
優芽ちゃんはいったい何を話すのだろう。
「今日はびっくりしたな」
「ごめん、あんなことして」
私は恥ずかしくて優芽ちゃんの顔を見ることができない。
「うぅん、あの、ね」
優芽ちゃんは近くにあった石をそっと投げる。その音はどこか遠くでしているような気がした。
「なんていえば言えばいいのかな」
「……」
「私ね、迷惑じゃないかなって思ってたんだ」
「えっと、何が?」
私は優芽ちゃんが何を言っているのかわからず、顔を上げる。自然と優芽ちゃんと目が合う。優芽ちゃんの顔は夕陽のせいか少し赤い。
「突然話しかけて、強引にいろいろつれて回ったりしてさ」
「迷惑じゃないよ、楽しかったし。その、すき、だなって気づいてからは余計に優芽ちゃんと一緒にいたかったし」
私はこれで終わりだと思い、正直に自分の気持ちを告げる。
「そっか、良かった」
優芽ちゃんは手を重ねてきた。その手は温かい。
「その、嬉しかったよ。あの、自分の、えっと……うーんとね」
優芽ちゃんは迷った風にこう続けた。
「私もね、由香ちゃんのこと…………すき、だよ」
「え」
私が驚いて顔を上げると、優芽ちゃんは唇を重ねてきた。それは唇を重ねるだけのキスだったが、私は一気に心臓が飛び跳ねるのを感じた。やばい、これ、やばい。
「これ、すごく恥ずかしいね」
優芽ちゃんは夕陽より顔を赤くして呟いた。
遅くなってしまい、申し訳ないです。