ソロス城内
ソロス城の城下町は、ライオネル城と比べると、商人の数と冒険者と思われる人たちが多い。
それに、ところどころに兵士が配置してある。
修道院の数も多い。
地球で言うと病院兼教会みたいなものだ。
景気が良さそうで本当に賑やかだ。
「とりあえず、宿屋を探そうか。高級宿じゃなくてもいいよな。ミラ?」
「なによもう。普通でいいです。普通で。」
ミラはバツが悪そうだ。
「じゃあ、この辺かな。ダンジョンを攻略する勢いでいるので、かなり長期の滞在になるよ。今回は。」
「大丈夫。覚悟は出来ているわ。もうあんな悔しい思いはしたくないわ。」
ネロが珍しく意気込んでいる。
魔族のことは相当、心に来たみたいだ。
「ね~ユーちゃん。そのダンジョンはどこにあるの?」
「解るわけないじゃん。初めて来たんだから。泊まる場所が確保できたら、探索しよう。」
「ユート君。美味しい肉が食べたいわ。」
「わかったよ、ネロ。それも探そう。」
「じゃあ、ミラ、手続お願い。」
「は~い。」
そう言ってミラは宿屋に入って行った。
俺たちは宿屋の前で、人の流れを見ていると、ミラが戻って来た。
「ユート。まずいわ。空いてないわよ。たぶん他の宿屋も一杯だって。」
「マジか。どうしよう。予約は?」
「予約はしていないって。 いつ空くかどうかも解らないって。」
「こうなったら、ずーとダンジョンに籠るか。」
「ごめんユーちゃん。言っていなかったけど、たぶん、長く私は、ダンジョンの中には居られないわ。」
「ん。そうなの?」
「エルフの血の影響みたい。お父様に用心しろと言われたわ。
でも、どれくらいの影響があるか解らないけど。
たぶん急に具合が悪くなって、最悪、死ぬかもしれないって。」
「そっか。そうすると、定期的に戻って休息を取った方がいいな。でも泊まるところが無いなんて。」
「しょうがないわよ。とりあえずなんか食べようよ。」
ネロは提案してきた。
「もうしょうがないな。ネロは。でも、ネロの言うことも一理ある。焦ってもしょうがないし、おいしいものを食べながら考えようか。」
「やった~。」
ネロは喜んでいる。
「そう言っても、初めての所だから、どこがいいのやら。」
「それなら私に任せて。」
そう言ってネロは少し顔を上げ、鼻をぴくぴくしている。
犬か。
俺は突っ込みを入れたかった。
「こっちよ。いい匂いがする。」
もう俺は、ネロに突っ込みを入れるのを諦めた。
「よし。いこう。」
そう言ってネロの鼻を頼りに、歩き出した。
「ここよ。」
ネロが立ち止まった。
「ここよって、すげ~混んでんじゃん。」
「いいわよ。並びましょう。」
サラは、大人だ。
2時間ぐらい待った。
待っている間、ネロはお肉が焼ける臭いで口の中でじゅるじゅ
る言っているし。
完全にネロは食いしん坊キャラになった。
「ねぇ~、メニューにダンジョン名物、魔物のステーキって書いてあるわよ。」
ミラが見つけた。
「何だろう。ダンジョン名物って。」
「さぁ~」
俺もサラも知らない。
もちろんネロは字が読めない。
「ちょっとすみません。ダンジョン名物ってなんですか。」
ミラは店員に聞いた。
「ダンジョン名物は、魔物よ。このステーキはボアよ。」
「このステーキってことは他にも違う種類の魔物を食べるのですか?」
「ええ、ダンジョンの魔物はおいしいわよ。ゴブリンは人気が無いですけど、普通に食べられますよ。」
なに、ゴブリンが食べられるのか。
知らなかった。
しかも、この店員の話しぶりだと、ダンジョン内の魔物すべてが食べられるのか。
「ちょっと、全ての魔物が食べられるの?」
ネロが店員に聞いた。
「ええ、他のダンジョンはわかりませんが、ここのダンジョンの魔物は食べられますよ。
しかも、強ければ強いほどおいしいらしいですよ。」
ネロの目が光った。
「やったじゃん。ネロ。美味しいって。」
「それで、ご注文は決まりましたか?」
「あ、すみません。とりあえず、そのボアのステーキを4人前お願いします。」
「他にパンと果実酒はいかがですか。」
「それじゃあ、それも4人分。お願いします。」
「ありがとうございます。」
そう言って店員は戻って行った。
「なんか面白くなってきたな。ネロ。」
「そうね。まさか、魔物が食べられるなんて。
しかも、強い魔物ほどおいしいなんて。
俄然やる気が出て来たわ。」
「ユーちゃん。うちに出来たダンジョンの魔物も食べられたのかしら。」
「さ~、さっきの定員も言ってたけど、ここのダンジョンが特別じゃないの。
さすがにダンジョンの魔物は食べたくはないでしょ。
だって、ダンジョンから生まれるんだぜ。エルフもダンジョンの魔力で目覚めたわけだし、きっと体に悪いよ。」
「そうね、普通は無理よね。」
そんな話をしていると、料理が運ばれてきた。
「いただきま~す。」
ネロは、ボアのステーキにホークをぶっ刺し、そのまま、口に持って行った。
「なに、見てるのよ?」
3人して、ネロを見ているので聞いて来た。
「いや~、その肉食べても大丈夫なのかな?と思って。」
俺は、説明した。
「おいしいわよ。」
ネロはもぐもぐしながら言ってる。
「ネロも大丈夫だし、食べようかな。」
ミラが言った。
「あ、ミラ。私に毒味させたでしょ。」
「させてないわよ。ネロだったら私たちより真っ先に食べるでしょ。
私はゆっくり食べるだけ。ね。サラ。」
「そうね。」
「もう やな感じ。」
ネロはそう言いながらボアの肉をガツガツ食べている。
俺も食べよう。ボアの肉か。
地球で言うとイノシシに近いのかな。
焼き加減はウェルダンだな。
しっかり焼いある。
俺はナイフで一口サイズにして口に入れた。
うん。普通にうまい 肉質もそんなに固くないし、肉のうまみが出ている。
ただ、少し独特のにおいが鼻に抜ける。
それさえ気にしなければ普通にうまい。
ま、地球でも、動物によって匂いが違うし、牛の匂いは慣れてしまってよく解らないけど、たまに食べたラム肉は少し匂いがあったな。たぶんボアも食べなれたら匂いなんて気にならなくなるのだろう。
「ネロ。これじゃ足りないでしょ。」
「ええ、ユート君。もっとたのんでいい?」
「いいよ。好きなだけ食べな。」
「ありがとう。すみません。これを後、5人前。」
「は~い。」
「あ、すみません。 5人前と6人前で合計11人前を追加で。それと、このボアは、ダンジョンのどれくらいの深さに居るんですか。」
「はい、11人前ね。ボアはだいたい7階にいるようですよ。」
7階か、もしかしたら、俺たちよりも強いんじゃね。
エルフのダンジョンは地下5階だったし。
「ちょっとユーちゃん。7階だって、私たちには、未知の世界ね。」
「そうだね。なんか楽しみだね。」
「あのさぁ~、ユート。誰があと6人前食べるの?」
ミラが聞いて来た。
「サラも、ミラもこれじゃあ足りないだろ。
とりあえず、ミラとサラと俺の分も頼んどいた。2皿ずつね。」
「ありがとう。ユーちゃん。」
サラがお礼を言ってきた。
「そういうこと。私もいただくわ。」
ミラも物足りなかったのだろう。
「今日は城下町に居るのに野宿になりそうだな。
ここの治安はどうなんだ。その辺で寝ても大丈夫なのか。」
「う~ん。どうだろう。寝ている間に追いはぎに遭うのも嫌ね。」
ミラが話した。
「ミラはライオネル城の時どうしたの?」
俺は聞いた。
「夜通しやっている酒場があったから、そこにいたわ。」
「そうか。最悪、そうするか。この後は、朝までやっている酒場を探すか。」
「でも、わたしみたいに、絡まれるわよ。酔っ払いのガラが悪い奴がいると思うから。」
「そうだな。顔まで隠れるローブを着て、静かにしてれば、何とかなるでしょ。
絡まれたら絡まれたで、やるしかないっしょ。」
「ユートがそう言う風に思っているんならいいわよ。」
「サラは大丈夫?」
「もちろん。ユーちゃんが私を守ってくれるんでしょ。」
「あははは~。サラが負ける相手はいないと思うけど、もちろん守りますよ。」
「わたしもよね。」
ネロも聞いて来た。
「はい。もちろん。」
「うふふ。」
「お、追加の肉が来たぞ。これを食べたら、酒場を探しつつ、探検しよう。」




