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国境の町、エスカルゴ

「やっと着いたわね。」


ミラが疲れたように言った。


ほんとミラは頼りになる。


ミラ以外はただ馬に乗って適当にしゃべって時間をつぶしているだけ。


ミラは、先頭を走ってポチと共に、後続の馬を先導していた。


「ミラちゃん。お疲れ様~。

ハイ。これ。」


そう言って、袋から飴玉を出した。


「ありがとう。サラ。」


そのやり取りをジーと見つめているネロがいる。


「ネロちゃんなぁに?」


「ミラにあげた、それはなに?」


「これは、内緒。」


「え~私にも頂戴よ。」


「あげないわよ。これは頑張った人にあげるの。」


「え~いいなぁ~ミラだけ。」


「ネロちゃんもがんばったらあげるわよ。」


サラは、エサでネロに言うことを聞かせるようにしている。ま、面白そうだから別にいいけど。


「おいし~。あま~い。」


ワザとミラも大声で感想を言っている。


「ふ~うんだ。いいもん。いらないもん。」


そう言ってネロはいじけた。


まったくネロは本当におっきい子供だな。


なんて思っていると、


「ユート君、今、わたしのことを見て笑ったでしょ。」


と怒りの矛先を俺に向けて来た。


「ちょっと、サラ、この子供にも飴をあげて。」


「わかったわ。ユーちゃん。はい。ネロ。」


そう言ってサラが飴を一つ渡すとネロはおいしそうに口の中で転がして、満面の笑みをこぼしていた。


俺とサラとミラは、目を合わせてちょっと呆れた。



この町は、とても賑やかだった。


さすが国境の町だ。人種も様々だ。前世の記憶と同じように、何系か解らないけど、黒人だったり、白人だったり、いろいろな系統の人間がいる。


ただ、エルフやドワーフなどはいない。


だから、サラが目立っている。


でも、サラだけじゃなくて、ネロもミラも綺麗だから、男の目線が気になる。


「おい、あいつら、最近、Aランクになった、3人の美女と一匹の野獣だぞ。」


「ああ。でもさ、あの男も意外とカッコイイぞ。どうなっているんだ。この世の中は」


って話が聞こえてきた。


は、3人の美女と一匹の野獣だと。なんだ、俺たちのことか。


「ユートのこと野獣だって。」


ミラが早速、笑いながら突っ込みを入れて来た。


「ユーちゃん。野獣の様に襲っていいのよ。」


サラも話に乗っかってくる。


「ユート君は、本当に野獣だったらいいのに。」


ちょっとというかかなり気になることをネロは言ってきたぞ。


「なんだよ。3人して。いい加減にしろよ。」


なんて話をしていると、


「お前たちやけに楽しそうだな。俺たちも仲間に入れてくれよ。」


と声をかけてくる野蛮そうな男3人が俺たちの前に出て来た。


俺たちは、その男たちの存在そのものを無視して通り過ぎた。


「おい、無視すんじゃねぇ~」


そう言って、こともあろうことにネロの肩を一人の男が掴んだ。


「あ、俺、知らね~。」


俺は思わず言葉に出してしまった。


その言葉を聞いたネロは、俺が好きにしていいと言ったと

受け取ったらしく、ネロの肩を掴んだ男は、3メートルぐらい吹き飛んだ。


ネロが横蹴りで男の腹を蹴ったのだ。


ネロは後の2人を睨み付けている。


蹴られた仲間の男2人は、顔が青くなって震えている。


「残ったお二人さんは何か用?」


とミラが言いながら震えている男に近づいた。


「いや、なんでもありません。」


震えている男は返答した。


「そう。用が無ければ、話しかけないで!!」


ってミラの顔が怖い。


たぶん、アレクと初めて会ったのことを思い出したんだろう。


「怖ぇ~。さすがAランク。蹴られたやつは確かBランクだろ。

最近調子に乗っていて、乱暴者の。」


「ああ、これで少しは懲りたんじゃないか。あの子のおかげで少しは平和になるな。」


そんな話声が聞こえてきた。


「いつも俺たち、初めて来る町だとトラブルに会うな。」


と俺が言うと


「しょうがないのよ。ユーちゃんがかわいい子を3人連れているから。それもとびきりのね。」


サラが言うと、3人して、腰に手をやり、俺にサムズアップしてくる。


「はぁ~。わかったからいくよ。」


おれは、ため息をつきながら、先に歩き出した。


「ちょっと待ってよ。」


そう言って俺のあとを3人が追

いかけた。




今は、この町の冒険者ギルドにいる。


情報収集をするためだ。


「あの~。すみません。ちょっと教えていただきたいのですが。」


ミラが、受付の人に話しかけている。


周りを見渡すと、やはり俺たちは注目の的みたいだ。


すると、ギルドの入り口のドアが開いた。


「ひぃい」


入って来た男はネロの顔を見て、驚いているっていうか怯えている。さっきネロに蹴られた男だ。


「どうした?ハング」


ギルドの中央の机や椅子が置かれているスペースから怯えている男に声をかけた男がいる。


「ランズさん。」


そう言って、ハングは、急いでランズの元に走って行って、何やら話している。


「あちゃ~、絶対にトラブルになるな。」


と俺は呟いたが、ネロの目はランズを睨んで見ている。


「ユーちゃん。仕方がないわよ。諦めて。向こうが先にちょっかいを出してきたのよ。」


「そりゃ~そうだけどさ。」


そんな話をしていると案の定、ランズは席を立ち、こちらに歩いて来た。


あ~。やっぱりか。


俺は下を向いた。


「おい。」


ランズに話しかけられた。


「先ほどは、すまん。」


ランズはネロに頭を下げている。


ん、ひょっとしてランズは良い人か。


「別に」


ネロはそっけない。


「私が、君たちを連れてくるようにこいつに指示を出したのだ。

もちろん丁寧にと。それが、蹴られたというではないか。普通だったら、初対面の人にそんなことは野蛮人でもしない。

だから、詳しく事情を説明させたら、こいつに非があると。本当に申し訳ない。

私が直接、出向ければよかったんだか、所用があってな。

あ、そうそう。申し遅れました。わたくし、冒険者のランズと申します。冒険者ランクはAだ。」


「ランズさん。私の仇を取ってくれるんじゃないんです

か。」


ハングはランズに近づきお腹をさすりながら言った。


「え~い。うるさい。お前は調子に乗り過ぎだ。トントン拍子に冒険者ランクがBになっていい気になっているだろう。今回ので懲りたはずだ。」


ハングは下を向いている。


「すみません。ユート殿。ユート殿とはこんな形でお会いしたくなかった。」


「ん、俺のことを知っているのか?」


「ええ。もちろん。ユート殿のPTは今では、注目の的です。」


「え、どういう事ですか?」


俺はランズに尋ねた。


「え、知らないんですか。ホワイトオーガを退けた英雄という噂が広がっていますよ。」


「は、どうしてだ?」


俺が頭に?を浮かばせていると。


「ユート。ギルド中の全冒険者には伝わっているみたいよ。」


とミラが話に入って来た。


「どういうこと。ミラ?」


「さっき受付に聞いたんだけど。注意を冒険者に促すためみたいよ。ホワイトオーガが発見されて、その発見者が私たちということみたい。」


「そういう事です。ホワイトオーガはAランク相当の魔物ということ、裏を返せば、Aランクの冒険者では、勝てないという事。

それを退けたユート殿は、Aランク以上ということです。だから、噂にもなります。」


「ああ、ミラのせいでまた目立ってしまったか。」


「ちょっと。なんで私のせいなのよ。あれは偶然よ。それにユートに恐れをなして、逃げたんでしょ。」


「やはり。

ホワイトオーガは氷の魔法を使うと聞いていますし、どうやつて退けたんですか。」


ランズは疑り深い目で俺を見ている。


やばいな。


「いや~たまたまだよな。」


「うん。そうね。」


「たまたま、ミラがホワイトオーガの攻撃を防いでいる時に俺が投げた短剣がホワイトオーガの右目に刺さって、そしたら逃げて行ったんだよな。」


「ええ、そうよ。」


「はぁ、嘘はもういいです。 御見かけすると、こちらの方は、エルフではないですか?」


サラを見てランズは言った。


「ええ、私はエルフですけどそれが何か?」


サラは少し、ランズを睨みつけた。


「そんな睨み付けないでください。私は敵ではありません。

それにユート殿のお仲間にエルフがいるとなれば、ホワイトオーガを退けたことも納得できます。」


「ま、いいや。それで要件は?」


俺はランズに聞いた。


「実は、ユート殿にお願いがありまして、どうかわたしをユート殿のPTに入れてください。」


「ごめん。それは無理。」


俺は即答した。


「ちょっと少しは考えてくださいよ。同じ冒険者ランクA同士、仲良くしましょうよ。」


ランズはあたふたしている。


「だって、俺たち、お前のこと知らないし、仲間も増やすつもりもないし。」


「そんなことを言わずに、お願いします。」


なかなかランズは引き下がらない。


「ユート君、面倒くさいわね。しめる?」


ネロがランズを睨み付けた。


「ネロさん。やめてください。私はあなたたちに怪我をさせたくない。」


そう言ってランズは、一歩下がり、剣に触れた。


「ネロ、やめろ。ランズもいい加減にしろ。無理なものは無理だ。俺たちには使命がある。

それはとても危険だ。だから、これ以上仲間を増やすことは出来ない。それでも、仲間になりたいというなら俺が相手になってやる。」


俺は思いっきりランズを睨み付けた。


「解りましたよ。今は引くとしましょう。でも、覚えておいてください。PTに入れなかったことをきっと後悔することになるでしょう。」


ランズは不適な笑みを見せた。


「はいはい。じゃあこれで。」


俺たちは冒険者ギルドを後にした。


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