ドランの村長に報告
ドランの村に戻って来た。
「おお~、どうじゃった。ユート殿?」
「一応、もう泣き声は聞こえないと思います。」
「そう言えば、さっきから泣き声がしないのう。何か魔物が居たんですか?」
「ええ、居るにはいましたけど、俺たちが洞窟に入ったら、逃げて行きまして、私たちもなぜ逃げて行ったか、解らないんですよね。」
「どんな魔物が居たんじゃ?」
「ドラゴンの様に見えましたが、猛スピードで飛んで逃げて行きましたので、確認できませんでした。ただ、大きな傷を負っているようでしたから、俺たちの姿を見て、敵わないと思って逃げ出したんでしょう。」
「なんにせよ。魔物の声が聞こえなくなって村人も安心じゃ。これで夜もゆっくり寝れるわい。ありがとうユート殿。」
「いえいえ、俺たちはほとんど何もしていないので」
「そんなことはない。ユート殿たちだからこそ魔物も逃げだしたんだろう。」
「ん。この子は?」
さっきから俺の前でジーと俺の顔を下から覗いている女の子がいる。
「おにいちゃん。ありがとう。」
女の子は俺にお礼を言って村の奥に走って行った。
「はて、なんでお礼を言われたんだろう?」
俺は解らなかった。
「あの子は、一つ前の村長の孫娘でのう。少し、変わった子なんです。それはそうと、疲れたじゃろう。テントに戻ってお休みくださいませ。」
そう言って俺たちは先日宿泊したテントに戻った。
「ふぅ、なんかすっごい疲れたね。」
ネロはテントに入るなり、大の字に寝そべっている。
「私も疲れました~」
サラも横になっている。
ミラはハクを抱いて座っている。
「さすがに今回のクエストは参ったね。やっぱりちゃんと話を聞いてある程度、内容が解るものを受けないとだめだな。」
「そうね。でも、冒険者ランクが上がるとこういう不確定な依頼が多くなるんじゃないの?」
サラが横になりながら俺に聞いて来た。
「それもそうか。難易度が上がるとどうしても不確定要素が大きくなるか。なんだよ、ミラ。珍しく黙って。」
「うん。ちょっと疲れちゃってさ。初めてだったから。剣であんなに刺されて死にそうになったの。」
「私もあんなに切られたの初めてよ。」
「うんうん。」
サラもネロも頷いている。
「俺も魔族に思いっきり殴られたところまでは覚えているんだけど、その後の記憶が無いんだよね。
本当によく解らない結末だったけど、今はみんな無事だし。良かったっという事でお疲れ。」
とみんなで会話をしていると、村人たちがまた俺たちのテントに押し寄せてきた。
「村を救ってくれてありがとう。これを食べてください。」
「これで夜は静かに眠れるわ。ありがとう。」
など俺たちのに御礼を言っていろいろな食料を置いて行った。
「本当にここの村の人はいい人ばかりね。」
ネロは食べ物を見て笑っている。
「今日は食べましょう。やけ食いね。」
サラも珍しく、言葉が汚い。しょうがない、ミラの影響かな。
「とりあえす、クエストは達成したから。有り難くいただこう。」
そう言って食べようとしたら、テントの出入り口にさっきの女の子がいた。
「ん、どうしたの?」
サラが女の子に聞いた。
「私は、ミケ。レッドドラゴン様を助けていただいてありがとうございます。」
「え、レッドドラゴンを知っているの?」
サラはミケに聞き返した。
「私は、ドラゴンの巫女だそうです。ドラゴンたちがそう言っていました。」
「そうなの。今も話せるの?」
俺は聞いた。
「話せます。」
「それじゃあ、レッドドラゴンにどうして魔族が出て来たか聞いてほしい。」
「はい。聞いてみます。」
女の子は目をつぶった。
俺たちはしばらく女の子の様子を見ていた。
「お兄ちゃん、それはお答えできないようです。」
女の子は申し訳なさそうに言った。
「はぁ~。意味がわからない。」
ちょっと俺はイライラした。
その様子を見てミケは少し怯えている。
「ユーちゃん。可哀想よ。ただの橋渡しの女の子なんだから。」
サラが俺を咎めた。
「そうだよな。ごめんね。イライラして。」
俺は謝った。
「いいんです。きっとレッドドラゴンは、お兄ちゃんに失礼なことをしたんだと思います。私も、ドラゴンたちにはむかついているんです。我儘だから。」
「へ~。小さいのにしっかりしているわね。はい。」
そう言って、ミラがハクを女の子に渡した。
「わ~。かわいい~。貰っていいの?」
「ごめんね。ハクはあげられないわ。一緒に遊んであげて。」
「うん。御邪魔します。」
そう言って、ミケは、テントの中に入り、ハクと遊びだした。
「あっ!。なに先にご飯食べているんだよ。ネロ。」
「だって、お腹が空いたんだもん。目の前にこんなにおいしそうなごちそうがあったら、我慢でき無いわよ。」
「もうしょうがないなネロは。ミケも一緒に行こう食べて行くか。」
「うん。ありがとう。」
そう言ってミケはネロの横に座って、もりもり食べだした。
「もう、ドラゴンのことは忘れましょう。気にしてもどうしようもないわ。」
ミラが俺を諭すように言ってきた。
「それもそうだな。ミケも大きくなれば、ドラゴンのことがいろいろと解りそうだし。」
「そうね。ユーちゃん。何年か経ったら、ミケに会いに来ましょう。」
「お兄ちゃんたち、また、私に会いに来てくれるの?」
「ああ。大きくなったら会いに来るから。それまで、ドラゴンの巫女として、頑張ってね。」
「うん。 頑張る。絶対に来てね。」
「うん。わかった。」
「絶対だからね。今まで、誰もドラゴンのことなんか信用してくれなかったの。でもお兄ちゃんたちは、レッドドラゴンを助けてくれた。初めて私を解ってくれる人に会えた。」
「そうか。大変だったね。お兄ちやんたちは、ミケのことを信用しているよ。」
「じゃあ、私もお兄ちゃんのことを信用するから。絶対にまた来てね。」
「わかったよ。ってネロ。食べ過ぎだろ。お腹が膨れているぞ。」
ネロはお腹がいっぱいになったのか、仰向けに倒れ、お腹が大きく膨れている。
「きゃはははは~」ミケはネロのお腹をポンポン叩いて笑っているのでした。




