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魔族の死

「ああ。ネロ。死なないで。」


ミラは薄い意識の中で、黒い男が、ネロの心臓を剣で突き刺したのを見ていた。


「痛い!」


どうやら、わたしもネロと同じようにスケルトンに頭を掴まれて、起き上がらせられている。


目の前に黒い男とその先にはユートが2匹のスケルトンに羽交い絞めにされている。


「ユート、逃げて。私たちはもうだめ。ユートだけでも逃げて」


そんなことを言いたいけど、胸を刺されていて、声が出ない。もうおしまいだわ。


そんなことを思っていると。


ユートを両脇で押さえているスケルトンが粉々になった。


え、なに?


ユートが力づくで柏手を打つようにスケルトン同士を自分の体の前でぶつけた。


いつものユートじゃない。


それに、どこからともなく、むらさきの霧がユートの周りに発生したと思ったら、ユートの体を包み込んで、ユートに吸収された。


「ウォーーー!!」


ユートが叫んだ。


見開いたユートの目が赤い。


どうしたの。一体?


え、ちょっと待って。


ユートの背中からなんか出て来た。


あれは、羽。


黒いつやつやした羽が生えてきた。


え、どういうこと?


「お前は、何者だーーー!」


黒い男が叫んだ。


と同時にユートが黒い男に猛スピードで近づき、黒い男の顔を両手で掴むとそのまま引き裂いた。


「あああ」


その瞬間、ミラを掴んでいるスケルトンは手の力を強めた。


だけど、ユートらしき人が、今度は私を掴んでいるスケルトンに一瞬で近かずき、スケルトンの腕をそのまま握り潰した。


そしてそのまま、股下から蹴り上げ、スケルトンの骨はバラバラに吹き飛んだ。


ユートの姿が変わってちょっと心配だけど、とりあえず良かったわ。魔族が死んで。


そう思いながらミラの意識は途絶えた。




ん。どうしたんだ。

なんで俺は上半身が裸なんだ。


って、黒い男はどこだ。


辺りを見渡すと、黒い男は頭から胴体が、二つに引き裂かれて、血だらけになってそこに倒れている。


スケルトン3体は、骨がバラバラになって散らばっている。


ああ! 、どういう事だ。


あ、ネロは大丈夫か?


俺は、ネロを見つけ駆け寄った。


「ネロ。死ぬな。」


ネロは確実に心臓を刺されたのを見ていたので絶望的だった。


「主、早く直さないと本当に死んじゃうよ。」


ハクが俺に近づいて言った。


「え、生きているの?」


「うん。僕がネロちゃんの心臓に結界を張ったから。剣は逸れたよ。」


「本当か!ハク。ありがとう。ハイヒール」


俺はネロを直した。


「げほ、げほ。」


どうやら喉に溜まった血で咳き込んでいるようだ。


「よかった~。ネロ。生きていて」


俺は、ネロに抱き着いた。


「あ、ニート君が私を助けてくれたの。ありがとう。それで、ユート君が魔族を倒したの?」


「俺もよく解らないんだ。気が付いたら、こんな状態。あ、ミラとサラも助けないと。」


そう言って ミラとサラにヒールをかけた。


「ユーちゃんありがとう。助かったわ。それで、ユーちゃんが魔族を倒したの?」


サラも俺が魔族を倒したと思っている。


「俺もよくわからないんだ。」


「ユーちゃん、寒くない? 裸だよ。」


「そうなんだよ。気づいたら裸だったんだよ。」


「ちょっとユート。本当に記憶が無いの?」


「なに?どういうこと?」


俺は、ミラに聞き返した。


「・・・ミラちゃん、内緒にして。・・・」


「誰!?」


急にミラは回りをキョロキョロ見た。


「・・・ハクだよ。声に出さないで。・・・」


ミラがハクを見た。


「魔族がユートの服を切り裂いてユートの体に傷を付けていたわよ。」


運よく、ユートの体には強く引っ掻いたような跡があったので、ミラはごまかした。


「あ、傷がある。気が付かなかった。それで、誰が魔族を倒したの?」


俺はミラに聞いた。


「さぁ~。私も胸を刺されていて、気を失っていたからわからないわ。」


ミラはハクの指示に従い、先ほど見た光景はみんなに話すのをやめた。


「そっか。誰も解らないのか。不思議だね。きっと誰かが救ってくれたんだね!」


「そうね。ユーちゃん。とりあえず救われたね。」


「私たち、もっと強くならないとだめね。全然歯が立たなかった。」


ネロは、下を向いている。


そんな話をしていると卵の方からコツコツと音がしてくる。


俺たちは卵に向かった。


卵の様子を見ていると。中から殻を突く音が聞こえてくる。


その音は次第に大きくなり、卵にひびが入り、少しずつ殻が割れて来た。


「ちょっと。火が出て来たわよ。火が。」


ミラがビックリしている。


俺もビックリした。


普通は、かわいい雛というか、赤ちゃんドラゴンが出て来るはずでしょ。


でも、卵から出て来たのは、まるで火の玉だった。


よく地球で怖い話で出てくるあれ。


他の2人もその様子を見ている。


完全に火の玉が卵から出て来た。


「よくやった。」


そう言いながら火の玉は空中に浮かびながら俺たちに近づいて来た。


俺たちは熱いので、後ずさった。


「ちょっと。なんで私を避けるのよ。」


火の玉がそんなことを言ってくる。


「そんなの当たり前でしょ。火傷するわよ。」


ネロがこれ以上近づくと切るよと意思表示するため剣を構えた。


「あら、ごめんなさい。気が付かなかったわ。数百年ぶりの

転生だから。」


そう言って火は次第に小さくなっていき、火の中の物体に吸収されていった。


「あ、ちゃんとした形があるじゃん。」


火から出てきた赤ちゃんドラゴンを見て俺は俺を言った。


「よくやったわ。あの魔族を倒すなんてお手柄だわ。」


「別に俺たちは倒してないし。俺も含めて倒されていたし。」


「ん。どういうことなの一体?」


ドラゴンは疑問に思っている。


「目が覚めたら、魔族があんな状態だった。」


そう言って俺は魔族の死体を指差した。


「そうですか。誰が倒したか解らないのですか。

でも、魔族が倒され、私は無事に転生出来ました。

これも、あなたたちがいたからです。世界の危機を救ったことには変わりがないわ。」


「そう言われてもね。俺たちじゃない誰かが、魔族を倒したかもしれないし。」


「それはのちのち、明らかになって行くでしょう。

それでは、私のことは、人間には内緒にしておいてください。ありがとう。」


そう言って、ドラゴンはまた、火に包まれた。


卵から出て来た時と同じ、火の玉に戻りそのまま、猛スピードで日が差し込んでいる場所から洞窟を飛び立った。


「おい、ちょっと待って。って。もういないし。・・・なにこれ。俺たち死ぬ思いしたよな。なんなのこの幕切れは。」


俺は、愚痴った。


「クエストはとりあえず達成したようだけど、何も説明がないこの状況は、気が抜けるわね。」


サラも不満があるみたいだ。


「なんか疲れたね。」


ネロはほっとしたのか、岩に腰かけた。


「今回の出来事は、本当に意味がわからん。なぜ、ドラゴン。なぜ魔族。どうして俺たちは死にかけたんだ。」


「そうね、ユート。納得がいかないわよね。」


「だろ。みんなもそう思うだろ。何だよ。あのドラゴン。何も説明しないで。」


「そうよね。」


みんな同じ考えだ。


「今となっちゃ何にも解らないし、しょうがない、戻ろうか。」


「ええ。戻りましょう。」


そう言ってドランの村に帰った。




ドラキュラ城


一人のヴァンパイアが大きな赤い扉を開けて王の間に入って来た。


「父上、ユートの居場所がわかりました。連れ戻しますか。」


「ああ、先ほど力を貸した。」


王の椅子に座っているのは、顔のしわは多いが気高く、相当な時代を生きてきたであろうヴァンパイア王のドラキュラ2世だ。


「どうなされますか。ユートが戻ってくれば、戦況も変わりましょう。」


「いや、コートはこのままでいい。」


「ですが父上。まだお体は大丈夫なのですか?」


「ああ、大丈夫だ。それより、ウルフマンの動きはどうだ?」


「いまだにこう着状態です。」


「そうか。もう良い。下がれ、息子よ。」


そう言われ、男は王の間から出ていった。


ふふふ。ユートはうまく成長しているな。俺の後を継げそうだ。


ドラキュラ2世はつぶやいた。


「やはり生きていたか。だが、次の王はこの俺だ。

ユートには絶対に渡さん。」


王の間を出た男は右腕の拳を強く握った。


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