ドランの村
次の日の朝、城の中の一室にいる。
王様に会うためだ。
「今日は謁見の間ではないのね。」
ミラが不思議そうに答えた。
「たぶん、非公式だからよ。」
サラが説明した。
ガタン。
扉が開き、俺たちは椅子から立ち上がった。
「おお~ユート殿にサラ姫、それとミラ殿にネロ殿。
この度の活躍、あっぱれじゃった。
すまんが、昨日からその件の対応で忙しくてな、本当はもっと話したかったのじゃがそういう訳にもいかぬ。
せっかく来ていただいたのに申し訳ない。あとはアレクとやってくれ。それじゃあ。」
そう言って王は戻って行った。
「本当に忙しそうね。それだけ大事件だったのね。」
ミラが感想を漏らした。
「ユート殿、申し訳ない。こちらから呼んどいて、この対応。本当に申し訳ない。」
「いいよ。別に。忙しそうだし、もう帰るよ。」
「そうですか。そうそうこれをお持ちください。」
そう言ってアレクは、豪華な4本の銀の剣を魔法の袋から出した。
「これは、飾り用です。権力を誇示するための。ユートさんたちは、もう鋼の剣では折れてしまいますので、これを通行証代わりに使ってください。これを見せれば、門番や兵士は、あなたの言うことを聞くでしょう。」
「へ~そうなんだ。有り難くいただくよ。それじゃあ、また今
度ね。」
「ええ、また、お越しください。ユート殿。」
そう言って、俺たちは城を後にした。
「ねえ、ユーちゃん。その銀の剣は、貴族が持てる剣よ。ライオネルの貴族は皆、その剣を持っているわよ。」
「もしかして、私たちは貴族のお仲間入り?」
ミラが興奮したように聞いて来た。
「この剣だけじゃ無理よ。そもそも貴族は王様から自分の領地を貰い、管理することで貴族を名乗れるものなの。」
「な~んだ。この剣だけじゃだめなのね。」
「でも、この剣を持っているだけで、ライオネル王国のお墨付きを貰ったようなものよ。とても名誉な事なんだから。」
「ま、俺たちにはもう関係ないでしょ。クエストが終わったら次の国に行くし。」
「それもそうね。で、どうするの?」
ミラが聞いて来た。
「クエストにもどろう。依頼主も困っていることだし。」
「そうね。早く対応してあげましょう。」
そう言って俺たちは、村に向かった。
「ふう、やっと着いたわね。」
ミラは道中、馬に指示を出していたので、ミラだけ少し疲れている。
村に着いたのはライオネル城を出てから、5日目の夕方だ。
ミラの指示で、結構、途中途中、休憩を多く取った。
ポチ以外の馬はまだ旅になれていないようで、最初から無理をすると体を壊すとのことだった。
「さてと行きますか。」
そう言って、俺は、馬から降り、手綱を引いて村に近づいた。
「グオーーー」
また、魔物の大きな声が聞こえてきた。
なんか苦しがっているように聞こえる。
この声は、村に近づくにつれだんだんと大きくなっていき、この声を聴いた馬たちも結構怯えた様子だった。
魔物の声は、村の裏手、奥の巨大な山から聞こえてくる。
山はかなりごつごつしており、岩の様だ。
「どちら様ですか。この辺では見かけないようですが?」
村人が話しかけてくれた。
「ライオネル城のギルドからやってきました。この声の件で、お話をお伺いしたいのですが。」
俺が説明すると
「あ~、村長から聞いております。この魔物の叫び声を何とかしてくれる冒険者が来てくれるというお話を。貴方ですか。」
「できるかどうかはわかりませんが、全力を尽くします。」
「ありがとうございます。それでは、村長の家にご案内しますので、付いて来てください。」
「あの~この馬たちはどうしたらいいですか。」
「すみません。馬については、この村では預かることが出来ないので、う~ん。どうしましょう。」
「大丈夫よ。この辺は開けていて、背の低い草も生えているから、ほっとけば大丈夫よ。」
とミラが答えた。本当にこっちの馬の扱いは適当だ。
でも、手が掛からなくて、かなり便利だ。
「じゃ、馬たちはポチに任せて、俺たちは村長の家に行こう。」
そう言って歩き出した。
「ようこそいらっしゃいました。ドラン村へ。」
そう言って迎えてくれたのが村長だ。
「グオーーー」
また、聞こえてきた。
「いま、ドラン村の人々は、この魔物の声に困っている。これだけ声が大きいと子どもはおちおち眠れないし、恐怖心を抱く村人もおる。どうか助けてください。」
「ええ、できる限り頑張ります。」
「ここでお話しするのも、なんですからどうぞ中にお入りください。」
そう言われ村長の家に入った。
ここの村の特徴は、とんがりテントというのかな。
円錐をした形で、雨、風を凌げるようになっている。
真ん中には、囲炉裏みたいのがあり、煙をうまく天井の先が細くなっているところから排出されるようになっている。
結構中は、広くなっており、以外と快適だったが煙の匂いが服に付いた。
でも、外見的にはとんがり帽子をちょっと潰した感じでちょっとかわいい。
それが50棟はあるようだ。比較的人口が多い村だ。村人の服装は麻で編んだような服を身に纏っていて、なんか、縄文人みたいな暮らしぶりだ。
自己紹介などを一通りしてから、村長が語り出した。
「我が村では、ドラゴンを昔から祭っており、裏の山にドラゴンの伝説があります。
ですが、いつのころからか、村では、山に入ることを禁止しておりまして、ドラゴンの伝説も廃れてしまいました。
でも、今回のこの魔物の声。
村のみんなはドラゴンが復活した! とどよめき立っています。今の時代、ドラゴンなんているとは思いませんが、村の掟でドランの村人は山に入れないので、どうかユート殿、原因を突き止めていただきたい。
そして、可能ならば、魔物を排除していただきたい。」
「あの~ドラゴンって話は本当なんですか?」
俺は流石にいないと思い、改めて聞いた。
「数千年前は、ドラゴンはこの世界の覇者と聞いております。ですが、時代が変わり、ドラゴンなんているかどうかわかりません。
ただ、この村は昔からドラゴンの村として、ドラゴンの名を冠してドランと付けられたと聞いております。」
「さすがにドラゴンが出てきたら、討伐は無理ね。」
ネロもドラゴン相手だと荷が重いようだ。
「ですが、この魔物の声がするようになってから、山にいる動物や魔物の姿が無くなりました。きっと逃げ出したんでしょう。」
「グオーーーー」
また、聞こえてきた。
ドラゴンなんて聞いてないし。
ネロがいるから嫌な予感は当たりそうだし。
「ちょっとユート君。今、私の顔を見たでしょ。私のせいじゃ無いわよ。私は関係ないわよ。」
ネロは自分でも、珍しい魔物が寄ってくると解っている。
「だって、ハクだってネロが連れてきたじゃん。」
「そうだけど。ハクはかわいいからいいの。」
「何だ、その理由は。」
俺は呆れかえった。
「ユート、どうする?
まさか、ドラゴンがいる訳ないと思うけど?」
ミラはドラゴンがいないとおもっている。
「ユーちゃん。もし、ドラゴンが居たら大変よ。」
サラも心配している。
「この声が聞こえる前の状況はどんな感じだったんですか?」
俺は村長に聞いた。
「この声は約20日ほど前から聞こえてきました。
最初は、小さかった声も、今では皆さんが聞いた通りで。」
「この声は最初は小さかったと?」
「ええ、だんだん大きくなってきました。」
「ドラゴンが居るかどうか、裏山を確かめたことはありますか?」
「いえ、言い伝えだと、ドラゴンはいないと。ですが、入山を禁止されていますので、数百年は誰も山に入ったものはおりません。」
「その入山を禁止にしたのは、歴代の村長さんですか?」
「それが解らないのです。遠い昔はドラゴンと会話ができる巫女が居たという話も言い伝えにはありますが、入山が禁止になったことはわかりません。
ただ、山に入ると災いがおきると伝えられています。」
「う~ん。なんか話を聞いている限りだと、ドラゴンが居る可能性が高いな。なあ、ネロ。」
「なんで私に振るのよ。私が解るわけないでしょ。」
ちょっとネロは怒っている。
「ユート、どっちにしろ、確かめる必要があるわね。」
「そうなんだけどね、ミラ。でもさ、エルフの洞窟を守っているホワイトウルフやファルコンの例もあるだろ。
本物のドラゴンだったら、俺ら近づいただけで死ぬぞ。」
「でも~ユート。クエストの依頼、受けちゃったじゃない。」
「そうなんだよね~。話を聞いただけで、断る訳にもいかないよな。」
「ユーちゃん。ここは腹をくくりましょう。倒す必要もないんだから。」
「そうだね。さすがにこんな話を聞くと逃げる前提で確認するしかないね。」
「受けて頂けますか。」
村長は改めて聞いて来た。
「あの~最後に。俺たちは、入山してもいいのですか?」
「あなた方は、村人ではないし、勝手に入ったってことにしておけば問題ない。
それに、ドランの村が裏山を管理している訳でもないですし。」
「そうですか。それでは、明日の朝から調査に行きます。今日は、どこかに泊めてください。」
「わかりました。よろしくお願いします。
何もない村ですけど、お寛ぎください。それでは、係の者がご案内しますので、テントでお休みください。」
そう村長に言われ、寝床に案内された。




