男2人組 2
一号と二号は、木に縛り付けてある。
とりあえず、一号は、俺の必殺技でお腹がぐちゃぐちゃになっていたので、完全じゃないが軽く直した。
「うう · う~」
どうやら一号が目覚めた。
俺は、エレナに付いていた発信機を見せて、
「おい、お前たちは何者だ?」
と聞いた。だが一号はしゃべる気が無いらしい。
さて、どうするか?
俺が悩んでいると、「ちょっとユートこれを装備して見てみて」
そう言って魔法袋をミラは俺に渡してきた。
は、何これ。
魔法袋の一覧の中に、名前があった。
しかも名前の後にカッコ書きで死体って。
「これって、死体だよね。どういうこと?」
ミラは呟いている。
「サラ、ちょっと見て。」
そう言って俺は、サラの手を繋ぎ、ステータスをオープンさせてサラに見せた。
「わ~、ユーちゃんのステータスが見える~」
サラは喜んでいる。
「サラ、意味が違うぞ。魔法袋の中身を見ろ。」
「解っているわよ。冗談よ。あるわね。大物の名前が。」
「やっぱりそうか。でもまさか、こんな使い方をするやつもいたとは。」
俺は解っていた。
魔法袋は物を入れられると。だから死体も入れられると。
でも、普通はそんなことしないだろうと思っていたが、現実にいるとは、完全にこいつらはアウトだな。
「どうしようか?サラ。」
「こいつらは、国に引き渡した方が良さそうね。」
「でもさ、それだと、ネロが魔女ってばれるよ。」
「そうね。どうしましょう。」
「魔女の扱いって世間一般的にはどうなっているんだ?」
「たぶん。奴隷以下ね。でも、エレナは奴隷だったから、魔女だからすぐに処刑されることはとないようね。」
「そうか。このままネロを普通に扱っていて、もし、魔女とばれたらどうなる。」
「たぶん、私たちも、一緒に罪を問われるわ。」
「ということは、こいつらは、処理した方がいいな。」
「待ってください。何でも話しますから。」
一号が殺されると思い、悲願してくる。
「こういう場合ってさ、悪党に慈悲を与えると後々、面倒くさいことになるんだよな。」
「そうね。」
サラは納得してくれている。
ミラは、ちょっと複雑な気持ちになっている。ネロは無言だ。
「よし、こいつらは、ここで殺そう。たぶん生かしていても何もいいことがない。」
「そうね。ユーちゃんの言うとおりね。別に情報もいらないしね。処理したら、王様に報告しましょう。」
よく物語では、悪役を助けることがある。改心するかのように。
でも、この世界ではありえない。なぜなら自分が生きて行くためには、他人を平気で殺すやつが多いからだ。
らちろん。俺たちはそんなことはしない。
でもネロが暮らしづらくなるのは絶対に嫌だ。
俺だっていくら人殺しの超極悪人でも人は殺しはしたくない。
でも、やる時にやらないと。
判断を間違えると後で大変なことになる。仲間が死んだり、もしくは自分が殺されるということも考えられる。
「ネロ。俺が殺していいか?」
「ユート君ごめんね。手を汚させて。」
ネロは涙を浮かべている。
たぶん俺たち4人は、魔物は殺したことがあるが、まだ人間は殺したことがない。
人を殺すということは、自分の心の中の何かが失われ、別の何かになってしまうという恐怖があるからだ。
「いいよ。気にするな。」
俺は、自分の心より、仲間の未来のために、変わることにした。
俺たちは今、ライオネル城に戻ってきて、城下町に入る前の門番で取り調べを受けている。
なぜならば、死体を運んできたからだ。魔法の袋に入れるということも出米たが、それをやると悪人だからやらなかった。
「いきなり、ワイバーンに乗ってきた2人に襲われたと?」
門番は俺たちの話を信用していない。
「そうです。盗賊です。」
サラはうまく説明しようとしている。
「ワイバーンに乗ってって、そんな話聞いたことが無い。ワイバーンは魔物だぞ。知っていると思うけど、エルフとの国境の山にたくさんいるでしょ。あれに乗れるわけがないだろ。それぐらいサラ姫もご存じでしょ。」
「もう。話になんないな。ギルド長か王様を呼んで頂戴。サラ姫が来たと!」
「いくらサラ姫でも、死体を持ってきたPTと一緒ですので、指示は聞けませんな。」
「あの~この剣の紋章を見せてもダメですか。」
と言って俺は、魔法の袋から紋章付の折れた鋼の剣を出した。
「だめです。しかもこの剣、折れているし。殺人者に人権は有りません。」
あ~、どうしようと思いながら周りを見渡すとちょうどアレクがいた。
「おーい。アレク。」
俺は 叫んだ。
どうやらアレクは俺たちに気が付いたらしい。
「こんな所で何をやっているんですか。ユートさん?」
「いや~、ちょっと門番につかまって。」
と俺がアレクに言うと、アレクは、
「おい、兵士よ。このお方は俺の知り合いだ。何をしている。」
「はい。申し上げます。この方が、死体を2名。運んできました。ですので、取り調べ中でございます。」
「アレク、死体を持って来たから、兵士から取り調べを受けるのは仕方がないが、完全に野蛮人扱いというか、犯人扱いされて困っているんだよ。サラ姫の話も聞いてくれないし。」
「あ、どういうことだ。」
アレクは門番に聞いた。
「いえ、私は、こいつらが信用できない。なぜなら、王家の紋章が入っているニセの剣を所持しておりまして。」
「ん、ユートさん。どういうことですか。」
「あ、これのことか。」
そう言って俺は、折れている剣を出した。
「あちゃ~。こんなのここで出したら駄目ですよ。それこそ、ここでは、反逆者として見られても仕方かないですよ。」
「そうなの?だって折れたんだからしょうがないじゃないか。」
「誰だって、国に忠誠を誓っている人が国の紋章が入っている物が壊れていたら不審がるでしょ。」
「そう言われてみればそうだな。」
「剣が折れたら言ってください。交換しますから。」
「わかった。」
俺は素直にアレクの言うことを聞いた。
「兵士、悪かったな。こいつらは大丈夫だ。俺が身分を保証する。開放してくれ。」
「王子がそのようにおっしゃるならすぐに開放します。ただし、この死体はこちらで預かります。」
「それでいいか。ユートさん?」
「はい。問題ないです。」
そう言って俺たちは、解放された。
「そういえば、ユートさん。奴隷は一緒じゃないんですか?」
「え、どうしてそれを?」
「ははは~。そんなの当たり前じゃありませんか。奴隷の所有者は、国の管理事項の一つですから。」
「そうなの?」
「そうですよ。秘密事項ですけど。」
「なんで、アレクは俺にしゃべっているの?」
「だって、ユートさんの奴隷って魔女だし、扱いを間違えるとユートさんたちが罪人になると思って、心配で。」
「そうか。ありがとう。アレク。」
「でも、死んじゃいましたか?確か、手足がなくて、瀕死の状態って書いてありましたけど。」
「あ、アレク。この話はお前の連れがいないときに、2人きりで話したいんだが。」
「あ~それじゃ、今夜はどうですか?」
「大丈夫だけど、どこで会う?」
「ライオネルホテルでお会いしましょう。あそこは、国賓が泊まる場所で、安全と秘密が保障されていますから。」
「解った。それで、これをアレクに見せたいけどいいよな。サラ?」
俺は、一号が、2号が持っていった魔法袋を出した。
「そのほうがいいわね。」
「アレク、これの中身を見てくれ。」
そう言って俺は、1号が持っていた魔法の袋をアレクに渡した。
「ん、これは!!」
アレクは少し大きな声を漏らした。そして、少し顔が青ざめる。
「ユートさんこれを何処で?内容によっては、俺でもユートさんを庇いきれませんよ。」
「これは、さっき門で取調べを受けた死体が持っていた袋だ。俺たちは、クエストに向かう途中に襲われたんだ。」
「はぁ~良かった。ユートさんの持ち物じゃなくて。心配しましたよ。だけどこれって、この袋の内容を見ると、機械兄弟の物ですか?」
「ん、あいつら機械兄弟って言うのか。よく知らないけど。」
「おい、先ほどの死体を確保しろ。」
「解りました。」
アレクが支持を出すと、部下が門の方に走って行った。
「俺もよく話しを聞かなかったから駄目だったが、機密情報があの死体には詰まっている。それに最近、機械帝国の動きがおかしい。どうも戦争を模索しているようだ。」
「それで、俺たちはこの件についてどうすればいい? 冒険者ギルドにその袋を持っていけばいいか?」
「いや、この件は、俺に預けてはくれないか。悪いようにはしないから。」
「いいよ。アレクに任せる。」
「ありがとう。助かる。」
「アレク王子、死体が無くなっておりました。先ほどの兵士にも
聞いたのですが、わからずじまいでして。」
「ちっ、遅かったか。たぶん誰かに魔法の袋に入れて持ち去られたか。まずいな。ユートさん。この件については後ほど報告します。私はすぐに城に戻ります。失礼します。」
そう言ってアレクたちは急いで城に帰っていった。
「ユーちゃん。さっきの袋、アレク王子に渡せて良かったわよ。これは個人でどうにか出来る問題ではないし、渡すところを間違えると、トンでもないことになっていたわよ。」
「ねえサラ、どういうこと?」
今まで黙っていたミラが話しに入ってきた。
「実は、行方不明だった貴族の名前も袋の中に入っていたわ。ここの国の人だけじゃなくて、いろいろな国の貴族の名前が。」
「そうなの?それって大事件よね。」
ミラが首を傾げながら言った。
「そうよ。大事件ってもんじゃないわよ。戦争が始まるレベルよ。」
「え~なにそれ。私たちは大丈夫なの?」
心配そうにネロは言った。
「たぶん大丈夫よ。アレク王子がうまくやってくれると思うから。それに、死体を回収したのは、たぶん機械帝国よ。このことが明るみに出ると、全世界を敵に回すから、たぶん白を切ると思うわ。」
さすが、サラ 世界情勢が解っていて判断が的確だ。
「あ~なんか夜まで時間が空いてしまったね。どうしようか?」
俺がため息をつく様にいうと
「ユート君。取り合えず、お昼ご飯食べよう。」
ネロがお腹をさすっている。
「そうだね。喫茶店でも行って食べようか。」
「賛成。」
俺たちはいつもどおり喫茶店に行って時間をつぶした。




