宝石
「ちょっとドワーフの村の中を散歩してきていいですか。」
俺はせっかくドワーフの村に来たのだから村を見て回りたかった。
「もちろんです。私がご案内します。」
キキ姫に案内され、ドワーフの村を見て回った。
ドワーフの村には店らしい店は無かった。
ただ、いくつもの工房があり、カンカン音はしているし、村人の出入りも激しかった。
たぶん、武器や防具を作っているんだな。
「ドワーフの村は、武器や防具の生産が盛んです。ですが直接この村で販売はしておりません。
主にライオネル城にある商業ギルドを通して販売をしています。もちろん、魔鉄を含む武器や防具はほとんど卸していません。」
「ほとんどと言うと?」
「年に数本ですね。たぶん、結構な値段が付いていると思います。」
「えっと、村長の話では、装備品は勝手に売ってはいけないと。」
「ええ、ライオネル王国と商業ギルドとドワーフ村の3者で協定を結んでいます。
私たちも生きていく上で外貨が必要ですし、商品を捌くのにはライオネル王国が国として販売するのは難しいので、商業ギルドも関わっていると思います。」
なるほど。分業か。この方が一番、効率がいいよな。
「なんか、お土産になるような物はないかしら?」
ミラがキキ姫に聞いた。
「お土産ですか。これなんか、いかがですか?」
そう言って小さいお店に案内をされた。
そこには、宝石のようなものをあしらった、指輪やネックレスなどがいくつも並んでいた。
「わ~、きれいね。」
ミラの目がキラキラ光り出した。
いろいろな色があり、よく見ると、ガラス玉のように見える。
ほとんどガラス製品にようだ。
ん、青い石が目に入った。
ガラス玉にしてはやけに青い。しかもむらが無い。もしかしてサファイヤか。
「ユート殿、この青い石が気になりますか。」
「うん。ちょっとね。」
「これは、山から鉄を取る時に副産物としてたまに取れる石です。
何の石だかわからないけど綺麗だから、こうやって加工して、たまに来るお客さんにお土産用として販売しているものです。」
ん。ちょっと待て。こっちの赤いのってまさかルピーか。
「あ、それも気になりますか。それも鉱山から出たものです。ちなみに、これもです。」
そう言ってキキ姫は、緑の石を指差した。
エメラルドだ。
マジか。この世界の価値は解らんが、元の世界の常識だと宝の山ではないか。
「ちなみにこのネックレスはおいくらですか。」
どうしても気になったので聞いた。
「どれも、小銀貨1枚です。」
安す!。
日本円にして、二千円ぐらいか。
「加工するのは大変じゃないですか?」
「ええ、この青いのはちょっと固めで大変ですが、魔法がありますので問題ありません。」
そうか。魔法か。
魔法だったらなんでもありだな。なんか金の匂いがしてきたな。
「ねぇね~、ユート。
こんなにいっぱいあったら迷っちゃう。」
ミラはネロとサラのお土産と言っていたが、自分でも欲しいみたいだ。
「ちょっと、ミラこっちに。」
そう言って俺は、キキ姫に聞こえないように2人で離れた。
「ちょっとキキ姫に内緒で聞きたいんだけど、宝石ってあるの?」
「当たり前じゃない。宝石って言ったら、ダイヤモンドよ。」
「その他は?」
「なに?その他って。ダイヤモンドは全世界の女性の憧れよ。高すぎて買えないけど。」
「ここにある石は他では売られてないの?」
「ええ、私も初めて見るわ。」
「やっぱりそうか。」
「何が?」
「訳はあとで話すよ。それよりお土産は決まったの?
まさか自分の物を買おうとしてないよね。」
「ギク、まっさか~。ネロとサラのを探しているのよ。」
「まったくもう。バレバレだよ。」
「あははは~」
そう言って売り場に戻った俺たちを見て、キキ姫は首を傾げている。
「だめだ。ユート決まんない。」
「なに?お土産?それとも自分の?」
「もう。ごめんなさい。自分のです。お土産もですけど。決められないからユートが3人分選んで。」
「俺が選ぶのかよ。ずっり~な。」
「だって、公平にしないと後でネロとサラに怒られるもの。」
「わかったよ。どれにしようかな。」
うまい具合に3種類だし。ミラはお転婆娘っていうか何気に情熱的だからルビーだな。
ネロは、サファイヤだな。ネロって意外とクールそうな感じかする。
エメラルドはサラだ。森のエルフだし。
よし。決めた。ネックレスだ。そんなに大きくなく控えめやつ。しかも同じデザインぽいの。
「これをください。」
3人分のネックレスを店員に渡し、
「あと、これとこれとこれ」
と言って、少し大きめの3種類の石を買った。
「ユート。早速、付けてよ。」
とミラが催促してくる。
「もう、しょうがないなぁ。」
おれは、ミラの後ろから首に手を回し、ルビーのネックレスを付けた。
「どう、似合ってる?」
ミラはネックレスを触りながら俺に感想を求めてくる。
「ああ、似合っているよ。ミラには赤が似合うね。」
「ミラ殿、大変お似合いですわ。いいですわね。殿方からプレゼントなんて。」
「ウフフフフ」
ミラはとても満足そうだ。
辺りもだいぶ暗くなってきたので、村長の家に戻った。




