ドワーフの村
ドワーフ村の村長の家に着いた。
さすがにデカい。
周りは塀で囲まれている。平屋木造建てだ。
作りはシンプルだが丈夫に出来ていて、屋根も瓦風だし、建物の壁も綺麗に板が並んでいる。
正門から入ると、目の前に大きい引戸の玄関がある。
そこから中に入り、左に行くとすぐに大きな居間があり、庭が見えるようになっている。
和風みたいだけどそこまで粋があるという訳でもない。
なぜなら、床に座るのではなく、テーブルと椅子あり、しかも土足だからだ。
「どうですか。我が家は?」
村長が聞いて来る。
「すごい立派ですね。庭もきちんとお手入れが行き届いていて素晴らしいですね。」
「そうか そうか。この良さが解るか。どうじや。わしの娘と結婚して、儂の息子にならんか?」
はぁ~。どうしてそうなるんだろう。この世界は。
「娘さんは、すごく気立てが良くて、しかも可愛らしい。でも私には、目的があり、今は冒険の途中ですから、結婚は考えておりません。」
「そうか。残念じゃ。ちょっとお待ちくだされ。ドワーフ村の特産を紹介しますので。」
そう言って村長は部屋を出て行った。
「ちょっと、ユート。あんた、受け答えが上手じゃないの。見直したわ。」
そんなことを言ってくるミラ。
今は、ミラと2人きりだ。
キキ姫は、洋服がボロボロだったので、着替えている。
グランじいも、正装に着替えると言って家の奥に入って行った。
「お待たせしたのじゃ。」
そう言って、2mぐらいある木箱と1mぐらいの木箱を村長が持ってきた。
「そう言えば、自己紹介がまだじゃったのう。
私は、ドワーフ村の村長のゴロンじゃ。
改めてお礼をいう。娘を助けていただいてありがとうございます。」
「いえいえ、実は、たまたまでした。だから、そんなにお礼を言われても困ります。」
「たまたまで、娘を助けていただけるとは、本当にお心が広いお方じゃ。」
「あ、すみません。こちらも自己紹介がまだですね。私はユートと申します。はい。」
俺はミラに振った。
「私は、ミラと申します。ユートとは旅を一緒にしており、PTも組んでいます。」
「ん、PTとは?」
「あと、二人、仲間がいます。その2人は他の用事で、今は、別れて行動していまして。
たまたま、時間が空いていたから、雪男の討伐に参りました。」
「本当に、たまたまじゃったのだな。」
「ええ。」
「でもよかった。雪男は本来、人間の姿を見ると逃げて行くし、性格はやさしい。
そんな臆病な魔物じゃ。
だからキキ姫が攫われても命の危険は少ないと思い、グランじいに雪男の討伐と一緒にキキ姫の捜索をお願いしたんじゃ。」
「そうですか。実は、雪男の洞窟にホワイトオーガがいたのですが。」
「え、ホ ホワイトオーガじゃと!」
「ええ。」
「あの、野蛮でとても強く、人間を攫っては、食べる人食いホワイトオーガが!!」
「ええ。」
「なんてことじゃ。これはえらいこっちゃ。 ドワーフ村だけでは対応は無理じゃ。
早くライオネル城に討伐の要請をしなければ . . .。って、
お主ら、よく生きておるな?」
「ええ。」
「どうして、ええしか言わぬ。もしや、私をだまそうとしておるな。」
その時、ちょうどグランじいが正装して入って来た。
正装と言っても、作務衣みたいのを着ているだけだけど。
「ちょうど良かった。グランじい。ホワイトウルフが出たってことは本当か?」
「はい。本当だべ~。」
「じゃあ、なぜ、お主らは生きている。人食いホワイトオーガに遭って?」
「ユート殿が追い払ってくれたべ~」
「その話は本当なのか?」
「本当だべ~。」
「そうか。疑ってしまって悪かった。ユート殿。
はっ、ってことは、キキ姫は?」
「キキ姫は瀕死だったべ~。食われていたべ~」
「でも、元気だったぞ。」
「それもユート殿のおかげだべ~。」
「そうじゃったか。どおりで、洋服の切れ方が尋常じゃなかったのだな。ところで、どうやって治したんだ?」
「それは言えないだべ~。」
そう言いながらグランじいは俺を見た。
俺もミラも話す気が無いので村長と目が合った時にわざと下を向いた。
「解った。話したくないのじゃな。でも、良くキキ姫を救ってくれた。
これは大義じゃ。ドワーフ村はユート殿とミラ殿を、キキ姫を救った勇者として賞賛する。」
「なになに。みんなで、何の話をしているの?」
キキ姫が部屋に入って来た。
洋服は、着物みたいだが、両肩が大きく空いている。
だから、キキ姫の胸が尊重されていて目に毒だ。
しかも、足は丈が短くてミニスカートみたいになっている。
背が低くてちょっとぼっちゃりだから、そういうぽっちゃり系が好きな人はたまらないと思う。
「キキ姫、良く似合っていますね。それは、ドワーフ村の正装か何かですか?」
俺はキキ姫の服装にビックリしながらも聞いてみた。
「ええ、これがドワーフ村での正装よ。それより何を話していたの?」
マジか~。本当にこの世界のことは解らない。たって絶対に俺を挑発している服装だよ。ミラには踵で足を踏まれるし。
「そうじゃった。キキ姫を救ってくれたユート殿とミラ殿を村の勇者として迎え入れようとしていたところじゃ。」
「え~それはやり過ぎではないですか。たかが雪男から妾を助けたぐらいで。父上。」
「何を言っておるお主は、ホワ」
「ゴホン·ゴホン」
「どうしたの?ユート。大丈夫?」
俺とミラは大声で、村長の言おうとしたことを遮った。
「大丈夫かな。ユート殿?」
「ええ。大丈夫です ちょっと喉にお茶の葉っぱが引っ掛かりまして。
村長殿、勇者のお話はまた次の機会に。それより、その箱は何ですか。」
そう言って強引に俺は話題を変えた。
それを察したのか、村長も箱の話をし出した。
たぶんキキ姫の頭には、クエッションマークが浮かんでいると思うが、キキ姫も俺たちの咳払いにビックリして、勇者の話は忘れたようだ。




