ユート、トラブルに巻き込まれる。
次の日のお昼前、
ミラはユートの家の前に立って待っていた。
「今日は、ユートと祝福を受ける日。
楽しみだなぁ~。
きっとユートは冒険者になるんだろうなぁ。
旅に出たいとか前に話していたし。
そしたら私も付いて行こう。
ユートに迷惑になるかも知れないけど頑張って強くなるんだ。
ゴブリンの時は、
ユートが助けてくれて嬉しかったけど。
私の方がお姉さんなんだからユートの面倒を見てあげるのよ。
前に、アリス奥さまから、
ユートは成人の日の翌日に祝福を受けると聞いて、
私も一緒にってお願いして
「いいわよ。一緒に行きましょう」
と返事をいただいたし、
もうすぐ家からユートは出てくるかな。」
しばらくするとユートが出てきた。
「よう、ミラどうしたの。そんな格好で?」
ミラが少しオシャレをしていたので、
なんだろうと思い聞いてみた。
「え、えぇ~」
ミラがおろおろし出した時、
ドアから出てきたアリスが
「ごめんなさい、ミラ。
ミラも一緒に行くの。
ユートが嬉しがると思って黙っていたのよ。」
「そうか。ミラも一緒に町に祝福を受けに行くのか。
楽しみだね。」
「うん。」
ミラは緊張していた。
村の北から出ている道の先に町がある。
馬車でお昼に出ると暗くなる前に着くような距離ってミラが言っていた。
今回はたまたま、
村で1つしかない馬車を借りることができた。
村の人たちが僕たちにのお祝いに融通してくれたらしい。
御者にアリスが着き、
暗くなると魔物が出没する危険があるため、
暗くなる前に町に着くように出発した。
道中は特に何事もなく、
俺とミラはコクコクと心地よい揺れの中で眠ってしまった。
しばらくするとアリスが、
「ユート、ミラ。起きて、町が見えるわよ。」
眠たい目をこすって起きるとアリスが指で町を指している。
「わー大きい。」
とミラが呟いていた。
町の名前はラサール。
結構な人が行き来している。
特に検問とかはないらしい。
ただ、入り口には大きな門があってそこから皆、出入りしている。
門の両サイドには、
甲冑に身を包んだ兵隊さん見たいな人が警戒している。
町に来る道中もそうだったが、
結構、安全みたいだし、治安も良さそうだ。
「ねえねえ、ユート知ってる?
ラサール町の周りには、12ぐらいの村があって、
私たちが生れたてダリルの村もその一つなんだって。
そして、ライオネルの城の周りには5つの町があるんだって。」
「へ~、よく知ってるね。ミラ。」
俺は地球の知識はあるが、
この世界のことにはもっぱら疎い。
アリスとダンは詳しそうだったがあまり教えてくれなかった。
別にそのときに知ろうとは思わなかった。
冒険にすれば嫌でも解ると思ったからだ。
しばらくすると馬車は門に近づいて行き、
門で警戒している兵隊さんが
「お疲れ様です。」
とアリスに挨拶してきて
「こんにちわ。」
と返事をしていた。
「知り合いなの?」
と尋ねたら
「ああ、昔ちょっとね。」
と曖昧な返事が返ってきたがそれ以上問い詰めなかった。
「よし、ここで馬車を預けるわよ。」
町の中にある、馬小屋に馬車を預けるて、
今晩眠る宿屋を目指した。
その途中、冒険者ギルドの前を通る時、
「ちょっと待ってて、挨拶してくる。」
と言ってアリスは冒険者ギルドの中に入って行った。
俺とミラはその場においてけぼりにされ、
回りをキョロキョロしていると、
「お嬢ちゃん、どうしたんだい。」
と太っていて、
ニタニタしている気持ち悪い男がミラに話しかけている。
ミラは嫌そうな顔をしてこちらに助けを求めている。
は~、しょうがないなぁ。
「おい、俺の連れになんかようか!」
その太った男は俺を見て余計調子に乗ったのか、
ミラを掴んで連れて行こうとした。
俺はその手を叩き、ミラを取り返した。
太った男は、俺の行動が気に食わなかったのか、
激怒して、俺に殴りかかってきた。
俺は身を低くして避けると、
地面につまずいたのか、
前のめりに転んで顔を地面に打ち付けた。
「てめ~、許さね~」
太った男は俺を睨め付け、腰から剣を抜いた。
いつの間にか周りに多くの人だかりが出来ており、
騒然としていたが、助けてくれる人はいなかった。
「しねや~!」
と太った男は切りかかってきた。
その時、
「冒険者ギルドの前で何をやっている!!」
冒険者らしい厳つい男が大声を張りだし、太った男は、
「ビクッ」
として動きを止めた。
アリスが冒険者ギルドから駆け寄って俺たちの前に出てかばった。
「ん、お前はアリス。
なんでこんなところに。
冒険者に戻るのか。
まあ、いい。その二人はお前の連れか。
覚えたぞ、ちくしょう。」
そう言って太った男は人混みを分けて去って行った。
「ユート、ミラ、大丈夫だった?
怪我はない?」
「うん。大丈夫だよ。」
「ごめんね、置いてきぼりにして、
まさかこんなすぐにトラブルに巻き込まれるなんて思っても見なかったの。」
野次馬たちは、蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。
「また、ユートに助けられちゃたね。」
赤い顔をしたミラが印象的だった。
先程、大声を上げて騒ぎを納めた冒険者ギルドの男は、
ふと思った。
確か、明日、アリスが祝福に連れて行く2人だよな。
確かあのデブ、ギースは冒険者ランクD。
冒険者としては弱い部類だが、
祝福を受けていない子が絶対に勝てる相手ではない。
なんせ、祝福を受ける、受けないじゃ、雲泥のがあるからな。
祝福を受けないとステータスは初期値から上がらないからな。
それなのになぜ、
怪我をしたのがギースなんだ。
仮にも冒険者だし、祝福の件もある。
たまたまでも、成り立つものなのか。
まぁ、アリスとダンの息子だから多少はできるのかな。
ま、いっか。・・・・・・
この冒険者ギルドの職員は楽観的であった。