プリン
お昼を食べ終わり、いま、喫茶店に来ている。
「すみません。プリンを5つください。」
俺は店員さんに注文をした。
「え、私もいいのですか。」
エレナが聞いて来た。
「え、なんで。別にいいよ。みんなで食べた方がおいしいし。」
ミラが笑顔で答えた。
「そんなに、遠慮しなくていいよ。さっきも言ったじゃん。奴隷から解放するって。」
俺はエレナに説明した。
「でも、私を買い取るのに、相当なお金が必要だったでしょ。」
エレナは俺の懐事情を気にしている。
「全然問題ない。うまくやったから。」
「なに、上手くやったって?」
ミラがすかさず聞いて来た。
ネロもサラも興味があるみたいだ。
「いや、上手く交渉したってこと。別にいいじゃん。そんなこと。」
女性陣3人はそんな説明に不満を持っているが、特に追求はしてこなかった。
「ユートさん。私は、別に解放していただかなくても結構です。ユートさんの奴隷なら、よろこんで奉仕します。」
そんなことを言ってくるエレナ。
「だめ、俺の良心が許さない。これは、俺からの命令だ。」
「わかりました。ユートさん。」
エレナは落ち込んでいるようだ。
「ちょっと、ユート。なに、命令しているのよ。それじゃ、奴隷と同じ扱いじゃない。」
ミラは俺の言ったことに反抗している。
「ミラ。ちゃんと言うところは言わないとダメだろ。エレナの意見を聞いたらずうっと奴隷でいい。って言うよ。絶対。」
「ミラちゃん。ここはユーちゃんにお任せしましょう。きっと何か考えがあって言っていると思うから。」
「そうよ。ミラ。私たちだって奴隷の扱い方、解らないでしょ。きっとユート君はエレナのことを考えてくれているわ。」
「わかったわ。同郷のネロがそう言うんだったら、私はなにも言わないわ。」
2人に言われ、しぶしぶミラは納得したようだ。
「あの~。それでは、奴隷を解放していただいた後は、一緒のPTに入れてもらえませんか。」
「ごめん。それも無理。もうPTは増やさないと決めているんだ。」
「えぇ~、どうして。可哀想じゃない。」
ミラがエレナに気を使ったのか俺に進言してきた。
「ミラちゃん。いい加減にしなさいよ。」
サラはミラをたしなめている。
「ミラ、お前はことあるごとに可哀想だからと言って、仲間を増やすのか。その面倒を誰が見るんだ。」
「だって~」
ミラはたぶん。すごく優しいのだろう。
でも、俺は善人ではない。偽善者と言った方があてはまるだろう。
基本、自分勝手だ。全人類を救いたいとは思わない。
たまたま、俺と出会った人は出来るだけ助けたいと思っている。
でも、それはきっかけだけで、俺に依存しようとするやつは嫌いだ。
自分もそうだが、各々頑張って生きて、自分の長所を伸ばし、困った時にお互いに助け合う。
そんな仲間が最高と思っているからだ。
「私、回復も出来るわ。絶対に役にたつから。」
エレナはPTに入りたくて自分をPRしてくる。
「エレナ。いい加減にしなさい。」
ネロは少し怒っている。
「はいはい。この話は終わり。エレナ。お前は、お前の生き方を見つけろ。
それでもっと強くなれ。そうしたらお前をしたってくる人はいっぱいる。だから大丈夫だ。
もちろん。お前が心配している、2人の男は俺たちが何とかする。だから安心して暮らしていけ。なぁ、ネロ。」
「そうね。ユート君がそう言うんなら、エレナには残念だけど、諦めてもらうわ。
でも、安心して暮らせるように、男たちは私が絶対何とかするから。」
「お待たせしました。」
定員さんがそう言ってプリンが人数分運ばれてきた。
「さてと、こんなところで話せる内容じゃないから、この話は終りね。せっかくプリンを食べに来たんだからプリンの味を楽しもう。」
そう言って俺は、話を中断させた。
ミラとエレナは納得がいっていないようだったが、場の空気を読んだ。
みんなの目の前には小さな皿が置かれ、その上にはプリンが乗っかっていた。
「ユート君。食べていい?」
ネロが聞いて来た。
「いいよ。食べて。」
「あま~い。おいし~」
相変わらずネロはおいしそうにちびちびと食べている
「ユーちゃん。プリンっておいしいね。」
サラも満足げだ。
ミラは無言で食べている。
「あれ、どうした。エレナは食べないのか。おいしいぞ。」
エレナは、さっきの話もあって、しぶしぶ俺に言われたので、スプーンでプリンをすくって口に入れた。
エレナは顔には出さないようにしていたみたいだが、笑みがこぼれている。
女の子ってやっぱり、甘いものが大好きなんだな。
じゃあ俺も食べようとプリンを見た。
うん。カラメルは無いが黄色いプリンだ。
ぷっち○プリンのようにプルンプルンとはしていない。
昔のプリンって感じかな。ちょっと固めの。
俺はスプーンですくって食べた。
う~ん。甘い。でも美味しい。
卵の味が濃厚だ。すっごいシンプルでおいしい。
周りを見ると、ネロはもう食べ終わっている。
「なんだ ネロ。もう食べ終わったの?」
「だっておいしいんだもん。」
「食べたければもう一個、頼んでいいぞ。みんなも。」
「ほんと。やった~。」
みんなの顔は笑顔だ。もちろんミラも。
おいしさには勝てなかったのである。
「すみません。プリンを。ユート君は?」
「俺はいらない。」
「そう。じゃあ4つください。」
とネロは店員さんに注文した。
「ごめんなさ~い。 さっきので品切れです。」
「ははは~残念だったな。」
俺がそう言うと、なんだか、女性陣4人は食べる気満々だったので、殺気が漏れ出した。
「おいおい。殺気を出すな。店員が怖がっているだろ。
わかったよ。じゃあ、アイスでいいよな。」
おれがそう言うと、場の空気が一変して、平和に戻った。
マジか~。女って怖い。
喫茶店を出てから、エレナの着替えと簡単な装備を買ってから宿屋に戻って来た。
もちろん。エレナの分の宿泊料は、ちゃんと申告したが、部屋一室の料金だったので追加のお金を支払う必要は無かった。
エレナと女性陣達は、もうすでに打ち解けている。
「ネロ、赤オーガの所に行く時は、あの石はここに置いて行ってね。」
「ん、どうして?」
「男2人はネロが対応すれば問題ないと思うけど、その石のせいで、赤オーガの居場所がばれたらまずいからさ。」
「なるほど。わかったわ。ここに置いて行くね。」
そう言って、ネロは俺に石を渡した。
「念のために、ハクも一緒に連れてってね。」
「ユーちゃん。ハクってどこにいるの?」
サラがハクの居場所を心配した。
「大丈夫だよ。サラの臭いでわかるから。森に入ったらハクの方から近づいてくるよ。」
「ユーちゃん。ハクを犬みたいに言ったらかわいそうよ。森の守り神なんだから」
「あははは~」
俺は笑ってごまかした。
「あのぅ、赤オーガの村に私は連れて行かれるのですか?」
エレナは心配して説明を求めて来た。
「大丈夫よ。エレナ。問題なから。」
ネロは適当に答えている。
「ネロちゃん。そんな説明じゃ解らないわよ。」
サラは大人だ。
「エレナちゃん、赤オーガの村はユーちゃんの村でもあるの。私たちも数日間は赤オーガと暮らしていたわ。」
「でも、赤オーガって魔物でしょ。」
「やっぱりそこが気になるよね。でも大丈夫。とっても人間らしいから。魔物だけど、野蛮じやないわ。」
「本当に大丈夫? 奴隷になって、いろいろやられたけど、さすがに魔物の所に行かせられるのは初めてです。」
何気にすごいことを言うエレナ。
「エレナ、ユート君を信じなさい。大丈夫だから。」
ネロは疑り深いエレナに言った。
「わかりました。」
エレナはとりあえず返事をしたようだった。
そんなこんなで夜は更けて行った。




