奴隷
ハンバーグ店を後にして、俺たちは薄暗くなった町を散歩している。
食後の運動として。
みんな腹がいっぱいだからだ。
「あれ、あそこにも奴隷商があるな。」
「うん、ここには2つの奴隷商があるわ。」
サラが教えてくれた。
「旦那、珍しい。魔女もいるよ。見てってくだせ~。」
と奴隷商から聞こえてきた。
俺とネロは顔を合わせた。
さすがに気になったので、俺は奴隷商に近づいた。
「お、旦那~。かわいい子も一杯いますよ。どうですか。」
と奴隷商の男が話しかけてきた。
「魔女っているの?」
俺は奴隷商に聞いた。
「あれ、旦那はそういう趣味がおありで。お見せすることは出来ますが、状態がひどいですよ。
お連れさんは大丈夫ですか?」
3人とも付いて来る気、満々だ。
「ああ、大丈夫だ。」
「それではこちらに。本当に大丈夫ですか。」
「ああ」
そう言って俺たちは建物の中に入って行った。
一階は結構、華やかだった。
売れ筋商品の綺麗な女性がきわどい服を着て、椅子に座ってこっちに手を振っていた。
「こちらです。」
と建物の地下に連れてこられた。
地下は、一階とは違い、ジメジメしていて衛生的にも悪そうだ。
「ここは、病気、怪我、精神がおかしくなったものなど、ほとんど商品にならないもの置いてあります。」
そう説明された。
マジでひどい。ほとんどの奴隷は死んでいるかようだ。目に精気もない。
「ひどいわね。ここは。」
ミラが地下の様子を見て、つぶやいた。
「こちらが魔女です。」
奴隷商は牢の中の女を指した。
げ、ひどすぎる。
その女は仰向けに転がっている。
なんでそんな表現だというと、両腕、両足が無いからだ。
それだけではない。もっとひどいことをされていて、傷だらけでこれ以上、表現できない。
「なんなのこれは!」
ミラが耐え切れずに言葉を発した。
「罪人ですからね。仕方がないですよ。」
「魔女という証明は出来るか?」
俺は奴隷商に聞いた。
「魔女だと聞いております。証明はできません。ステータスを見られれば、確認できるのですが。」
「そうか。ちょっと近づいていいか。」
「いいですよ。今、牢を開けます。」
そう言って奴隷商はカギを開けた。
俺は中に入り、その女を立てた。奴隷紋は右の背中に付いている。
「おい、聞こえるか?」
話しかけたが返事がない。たぶん鼓膜もやられている。
俺は奴隷商に気づかれないように女の右耳にヒールを当てた。
女は、その違和感に反応した。
俺は女の左頬に手をやり、聞こえるだろう右耳に
「お願いだから、ステータスを見せてくれ。」
と伝えた。すると女は、なぜか涙を流した。
ん。
そう思っていると俺の目の前に女のステータスが現れた。
よし。確認した。奴隷商の言う通り魔女だ。
俺は女から離れ、牢から出た。
「旦那、確認できたのかえ?」
「いや、解らなかった。」
「そうですか。それでいかがなさいます。」
「あ~ちょっと二人きりで話したい。」
そう言って俺たちは一旦、一階に戻り、女性3人は店の外に出て貰った。
「あれ、いくらだ。」
「奴隷の相場は大金貨と決まっておりますが、あれは、処分するしかないので、小金貨10枚です。」
「は~。高すぎるだろ。いらない。」
俺は帰ろうとした。
「だんな。だんな。いくらだったら買っていただけますか?」
「だって、あれはもう使いようが無いだろ。処分代とか考えると小銀貨10枚だな。せいぜい。」
「そんな金額じゃ無理ですよ。魔女ですよ。魔女。」
「なに言っているんだい。魔女という保証は出来るのかい。うそだったら、お前が奴隷に落ちることにやるよ。」
そう言って、剣を見せた。ライオネル城の紋章が入っているやつを。
「え、貴方は、城の関係者の方ですか?」
奴隷商は急に弱腰になった。
「だからどうした!」ちょっと強めに言った。
「いえいえ、なんでもありませんが、さすがに小銀貨10枚は無理です。こちらも必要経費が掛かっておりますので。」
「じゃあ、いくらだったら、いいんだ。」
「大銀貨1枚、いや3枚でお願いします。」
「じゃあ、それでいいよ。」
「わかりました。ありがとうございます。包装に大銀貨1枚かかりますので、合計、大銀貨4枚ということで。」
「わかったよ。お前もちゃっかりしているな。」
「ははは~商売なもので。旦那様も悪趣味ですな。あれを欲しがるなんて。」
「ははは~お前も商売人なんだから俺の趣味のことを黙っておけよ。
もし、誰かにばらしたらこの剣が黙っていないぞ。」
「大丈夫です。私も商売人の端くれ。心得ております。それでは手続をしますので、こちらに。」
そう言って、小さい部屋に案内された。
「少々お待ちください。奴隷を準備しますので。」
そう言って奴隷商は部屋から出て行った。
ふ~疲れた。たぶん格安で手に入れたぞ。
魔女だったら、たぶん大銀貨4枚では買えなかっただろう。
でもなぁ。状態がひどすぎるからな。相応の金額かな。
なんて思っていると、奴隷商は大きめの木の箱を持ってきた。
「これに奴隷が入っています。」
と言って蓋を開けた。そこにはあの女が仰向けでそのまま入っていた。
「奴隷紋の認定をしますので、この奴隷紋に血を一滴、垂らしてください。」
「ん、血」
「旦那は奴隷が初めてですか。」
「ああ」
「大丈夫です。血を垂らすだけですので。」
そう奴隷商に言われ、血を垂らした。すると奴隷紋が光り出したと思ったらすぐに消えた。
「はい、もうこれでこの奴隷は旦那の所有物です。
この奴隷に限っては無いと思いますが、奴隷が悪さをしたら、全部の責任は持ち主に行きますのでお気を付けください。
ですので、ちゃんと命令はしてくださいね。聞こえないかもしれないけど。」
「ああ」
「大銀貨4枚になります。」
「ああ」
そう言って、袋から取り出して奴隷商に渡した。
「ありがとうございます。では。」
そう言って奴隷が入っている箱を渡された。
「なんか敷物とかないのか。」
あまりにも雑な扱いなので奴隷商に聞いたら
「ありません。お安いから」
と言われた。
まぁいい、あとちょっとの我慢だ。
俺は奴隷商から出た。
「ちょっと遅かったじゃない。何していたのよ。」
ミラ達を待たせていたので、少し怒っている。
「ユーちゃん。もしかして買ったの?」
「ああ、説明は後だ。すぐに宿屋に戻るぞ。」
ネロは俺が奴隷を買ってきたから魔女と確信しているので顔は不安そうだった。




