正騎士長とネロ
「アレクすごいじゃないか。見違えるようだ。」
聖騎士長がアレクを褒めている。
「そこのユート殿のおかげで強くなったんだ。」
「そうか。まだまだアレク王子は行けそうだが、俺と戦うか?」
聖騎長がアレクの強さを確かめたくて聞いている。
「いや、もういい。俺はもう戦わない。これからは父の横で国造りの手伝いをすることに決めた。」
「ほほ~どうしたアレク。なんかあったのか。」
王様はアレクの雰囲気が大人びていることに気が付いたようだ。
「戦いではどうしても勝てない奴らがいる。だから戦い以外で俺が出来ることを全力でやって、そいつらを見返してやりたい。」
「ほうほう。そいつらとは?」
「もちろん、ユート殿たちだ。」
と言ってアレク王子は俺たちを名指しした。
「お、そんなに強いのか、あ奴らは。どうだ、俺と勝負をしてみないか。」
聖騎士長が俺たちを挑発している。
無理無理。
「戦っても意味が無いのでご遠慮します。」
と俺が言っている横でネロは戦いたがっている。
「そうか。でも横の御嬢さんは、戦いたいそうだが。」
「ほほ~。ワシも君らがどれだけ強いか見てみたいぞ。良い戦いをしたら褒美を取らせよう。」
王様も俺たちの強さに興味津々だ。
さて、どうするかな。
っと思っていると。横から白髭の執事が来て耳元でささやいた。
「赤オーガの件。王様に話してもよろしいですか?」
なに!
俺は、白髭執事を睨んだ。
「ほほほ~。相手はそこのネロ様でもよろしいですよ。」
ばれていたか。仕方がない。
「ネロ、いいか?」
「いいよ~。本気出していいんでしょ。」
「ああ、構わない。」
「とう」
そう言ってネロはジャンプし、闘技場に下りていった。
「大丈夫なの。聖騎士長だから強いわよ。」
ミラは心配するように俺に聞いて来た。
「聖騎士長の実力は解らないが、たぶんネロは負けるだろうね。」
「そうね、ネロじゃ負けてしまうわね。」
サラも最近鋭いところがあり、相手の強さを感じることが出来るらしい。
「おい」と聖騎士長が合図をしたら、剣が2本飛んできた。
「ほれ、これでやるぞ。」
そう言って、ネロに聖騎士長は剣を渡した。
「始め!」
王様が急に言い出した。
全員が急に始まったのでびっくりしている。
「ほほほ~。ここは私が仕切りましょう。」
そう言って白髭執事が闘技場に下りた。
「どうぞ。始まっていますよ。」
改めてネロと聖騎士長に試合開始の合図をした。
ネロが消えた。
すると聖騎士長も消えた。
実際には消えていないけどものすごい速さで剣と剣がぶつかる音だけが聞こえる。
たぶん普通の人は見えないと思う。
おいおい。早過ぎね~か。
王様はこの戦いが見えるのか。
そう思いながら王様を見ると王様の目の瞳が高速に動いていて、
二人の動きを追っているようだった。
マジか。
王様もかなり強い部類か。
じゃあアレクはどうだ。
アレクも何とか見えるようだ。なんだかんだ、アレクも強くなったな。
と思いながらネロと聖騎士長との戦いに目を向けると、
聖騎士長が尻餅をついていて、降参のポーズを取っていた。
「ちょっと。なに手加減しているのよ。」
「だって、おれ、剣得意じゃないし。でも、ほんとに強いね~。」
「ちっ」
ネロは地面に剣を突き差し俺の横に戻って来た。
「ほほほ~。さすがはネロじゃ。
聖騎士長の本業は闘拳士でね。剣があまり得意ではないが、それでも聖騎士長から参ったと言わせるとは、大したものだ。」
と王様は賞賛した。
「べ~」
ネロは不貞腐れている。
不完全燃焼なのであろう。
「久しぶりにいい戦いを見させてもらった。じゃあ、わしはこれにて。」
と言って王様は白髭執事と共に戻って行った。
「さてと、俺たちも今日の泊まるとこを探しに行かないとな。」
「ユートさんたち、今日はお城に泊まってってくださいよ。」
アレクは城に泊めてくれると言っている。
「いいよ。なんか固っくるしいし。」
「そうですか。じゃあ、ちょっと待っててください。」
そう言って、王様が消えた方にアレクも出て行った。
「どうじゃ、お主ら、まとめて俺が面倒を見てやるから、ライオネル城の聖騎士にならないか。」
今度は聖騎士長に誘われた。
「ごめんなさい。さっきも王様から直々に誘われましたが、丁寧にお断りしました。」
「そうか。残念じゃのう。お主らだったら、団を一つ任せられるのに。」
「いやいや、買いかぶりですよ。」
「ユート殿はこう言っているが女性陣はどうだ。いつでも歓迎するぞ。」
「ごめんなさい。」
3人綺麗にそろって頭を下げている。
「あ~、振られたか。ユート殿はモテモテでいいな。」
そう言って俺の腕を肘でつんつんとして来る。
「そんなにモテませんって。」
「謙遜なさるな。」
そんなことを話していると、アレクがやって来た。
「ユートさん。これ。」
小さな包みを渡してくれた。
中を覗いてみると、大金貨が3枚入っている。
「ん、アレク王子、これは?」
「これは、俺の面倒を見てくれたお礼で1枚。ネロの勝利で1枚。褒美で1枚。」
「もらっていいの?」
「どうぞ。貰ってください。ユートさんには本当にお世話になりました。
ユートさんと出会わなければ、俺は変わることが出来ずにこのまま、城から追い出されるところでした。
とても感謝しております。
また、ぜひ気軽に遊びに来てください。」
「ありがとう。」
「アレク王子、聖騎士との戦い、カッコ良かったわよ。王子様の仕事頑張ってね。」
ミラは、アレクを讃えたのでした。




