サラの出生の秘密を聞く
目が覚めたら、部屋には、サラとハクが居た。
「なかなか目が覚めないから心配しちゃった。」
サラにそう言われて辺りを見回すと、かなり明るくなっていて、朝の11時ぐらいの間隔だった。
「そっか。ミラとネロは?」
「ダンジョンに行ったわよ。私たちもユーちゃんが起きてから行こうと思っていたの。」
「そうか、悪かったな。心配させて。」
「そうよ。私たちの大事な人なんだから、心配させないで。」
サラはちょっとニヤけている。
「はいはい、解りました。」
俺は適当にはぐらかした。
「じゃあ、私たちもダンジョンに行ってくる。いこう、ハク。」
「わん。」
サラとハクはダンジョンに向かった。
どうやらサラが大事にしている弓は置いていったようだ。
さて、俺は何をするかな。ここはエルフの村だし、絶対に魔法を使える奴はいるはずだ。
村長に聞いてみよう。
俺は村長の家に向かった。
「こんにちは。村長さんいらっしゃいますか。」
俺は叫んだ。
「おう、これはこれはユートさん。どうなされた。あれ、今日は、女性陣は一緒じゃないのかな?」
村長は俺が一人だったので、不思議そうに聞いてきた。
「女性陣は、今、ダンジョンの探索をしています。俺は今日、別行動です。」
「そうですか。それで、ご用件は?」
「あの~。相談がありまして。エルフの村の中で魔法を使える方を紹介していただきたいのですか。」
「ん、魔法ですか?」
「そうです。教えていただきたいと思いまして。」
「そうですか。風と水と土の魔法しかエルフは使えませんがよろしいですか。」
よし、水と土があればOKだか、
「どうして、火は使えないですか。」
「火は木を燃やすからです。」
なるほど、エルフにとって火は天敵か。
「そうですか。それでは紹介していただけますか。」
「紹介って言っても、サラが使えますよ。」
「え、サラが魔法使えるの?」
「ええ。余り得意ではないけど普通に使えます。」
「そうですか。初めて聞きました。それじゃあ、もういいです。サラに教えてもらいます。お忙しいところすみませんでした。」
俺が去ろうとすると、
「ユート殿、ちょっとお話が。」
そう言って村長は俺を引き留めた。
「少し、散歩をしながらお話ししましょう。」
そう言って村長は、森の中心に向かって歩き出した。
「ユート殿、折り入ってお願いがありまして、ダンジョンの件が済んだら、サラをユート殿と一緒に連れてってもらう訳にはいかないでしょうか。」
「えっ」
俺は少しびっくりした。
「サラのエルフ村での待遇は、本人から聞いていると思います。実は、サラのお母さんは、魔女なのです。」
「ええぇぇ!」
俺はかなりビックリした。
「魔女って?」
俺は聞き返した。
「髪の毛が赤い子、ユート殿の連れのネロと申したか、あの子、魔女でしょ。」
「え、どうして解ったの?」
「ネロのお母さんの名前は、カーラ。」
「え、どうしてそれを?」
何回も聞いた。
「実は、サラのお母さんもカーラなんだ。」
「え、ええ~」
もう訳が解らない。
「ネロを見た時にピンと来て。カーラの娘さんだって。すごく似ていたから。」
そうだよ。カーラとネロは、本当に似ている って言うか、腹違いの姉妹、いやいや違う。
この場合は種か。いや、そんなことはどうでもいい。
サラはネロのお姉さん。かなり年が離れているけど。
「で、この話は。サラは知っているのですか?」
「知りません。それに、私からは言いません。 ユート殿にお任せします。」
あ、きったね~。 またか。
「じゃあ、どこで、カーラと知り合ったんですか?」
「あれは、180年以上むかし。わしが、修業のためにこのエルフの町を出た時の話だ。
場所は言えないが、ある森で魔物に襲われ、瀕死の俺を助けてくれたのが、カーラだった。
その村で何日間か、傷がいえるまで療養させてもらった。
その時にカーラと関係を持った。
子どもができ、 一緒に暮らそうと言ったが、子どもが生まれた時に、サラの髪の毛が赤くなかったので、一緒に住むことはできないと、断られた。
仕方なく俺は、サラが乳離れした時にあの村を出て、エルフの村に戻ってきた。」
あ~なるほど。だから種族がエルフなんだ。
ハーフの子は必ずどっちかに振り分けられるのかな。
「で、どうしてサラは差別を受けているの?」
「基本的に、ハーフエルフはこの村に住んではいけないことになっている。エルフの血を守るために。
だから、180年以上サラは周りの大人から、それと身内から差別を受けている。」
「そうだったんですか。そういう理由ならサラを連れて行くことは、別にかまいませんが。」
当然、俺はサラを連れて行こうと思っていたので、問題なし。
「ありがとう。本当にサラは変わった。
サラがユート殿といる時に見せる笑顔、幸せそうだった。
俺のせいで、子どもの時から今まで全然笑わなかったから。
あんな笑顔がまた見られる時が来るなんて思わなかった。ありがとう。」
そう言って村長は、俺の手を握り締め、泣いていた。
俺は、家に戻ってべッドで横になって考えている。
なんかすごい話を聞いてしまったな。まさか、サラがネロのお姉さんだったとは。
でも、寿命が400年とか500年とかあるとあり得るよな。
毎年産んだら、兄弟が300人ぐらいいるって怖くね~。
名前付けるのも大変だし、覚えられね~。
しかも、一番上のお兄さんが成人して、子供が出来て、そのお兄さんの一番の末っ子だったら、
長男の子どもより末っ子の方が、年が低いって。
年上におじさんって呼ばれるのかな。
やめた。こんなことを考えるのがバカらしい。
サラも兄弟が6人いるって言ってたし、
おれもヴァンパイアだから、たぶん寿命は長いと思うし、俺にも兄弟がいるのかな。
でも、サラって、183年間、笑っていなかったなんて信じられない。
エルフの守り神の時なんて、ネロとミラにお仕置きされて、ヒーヒー笑っていたのに。
でも、サラのことを考えると相当辛かったんだろうな。
でも、接し方は変わらないけどね。
「ただいま~」
そんなことを考えていたら、ネロとミラが帰って来た。
「おかえり~、どうだった。」
「ちょっと、ネロったら、スッゴイ厳しいんだよ。死ぬかと思った。」
ミラは俺に愚痴を吐いた。
「何言っているの。ミラ。ちゃんと生きているし、私はミラのためと思って。」
ちょっとネロはニヤけている。
「何だよ、ミラ。もう根をあげたのか。強くなるために地獄でもどこでも行くって言ってたじゃん。」
「言ってたけどさ。ちょっとぐらい慰めてよ。ユート。」
「だめだめ、甘やかしません。」
「ちぇ。」
ミラはぶすっとしている。
「ただいま~」
サラも帰ってきた。もちろん、ハクもだ。
サラはなんか、充実感にあふれている。
「ちょっと、サラ。なんで、満足そうな顔をしているの?」
「だって、ハクが完璧なの。私の実力に合わせて魔物を釣ってくるの。」
「何~、ネロなんか、死ぬか生きるかのぎりぎりって言うか、ほんと死ななくてよかった。」
今度はサラにミラは愚痴っている。
サラは、ミラの話を適当に受け流して、大好きな弓を持って手ですりすりしている。
「ちゃんと留守番していたのね。弓ちゃん。」
サラは弓にちゃん付けで、弓と話しをしている。相当お気に入りのようだ。
今日はみんな疲れていて食事を取ってすぐに寝てしまった。
俺の上に乗る順番はミラだったが、LV上げで相当疲れたらしく、ネロが俺の背中に乗ってくれた。
もちろん昨日と同じぐらいの時間で気を失った。




