初めての宝箱
みんなが立ち上がり、ダンジョンを出るために、
昇る階段を目指そうとした時、ハクが俺のズボンを噛んで引っ張った。
たぶん、こっちにこいと言っているのだろう。
「ハクどうした? わかった。行くよ。」
俺たちは、ハクの後をついて行った。
しばらくすると、赤い蟻の死体が転がり出した。
「あ、これはハクがやったんだな。」
そんな話をしていたら、蟻の死体が徐々に多くなり、赤い蟻の死体30mぐらい続いている。
たぶんネロとサラが相手をした数の倍はありそうだ。
「ちょっと何これ、全部、ハクがやったの!」
ネロがピックリしている。
ミラとサラもだ。ついでに俺もだ。
すると一番奥には、赤い蟻では無く、黒い蟻が一匹死んでいた。
「わんわん」
ハクが黒い蟻に近づき吠えている。
「ん、なに、ハク?」
近づいてハクが吠えているところを見ると、そこにはなんと宝箱があった。
木で出来た宝箱。
「おい、みんな。宝箱があるぞ。」
俺は叫んだ。
「どこどこ?」
3人も駆け寄ってきて
「わ~、本当だ。宝箱だ~。」
ミラが嬉しそうに言った。
「早く、開けて、開けて。」
ネロが俺を急かす。
「罠とかはないのか?」
俺が疑っていると、
「わんわん」
とハクも急かしてくる。
あたかも大丈夫。罠は無いと言っているように。
ハクは罠も解るのか。
と思いながら、俺は宝箱の正面の鍵の部分にに手をかざした。
すると、カチャと音がして上の蓋が後ろに倒れ、開いた。
その中には、弓?
が入っていた。
なぜ、?なのか。
それは、弦が付いていない木で出来た普通の弓だったからだ。
俺はその弓を取って、
「これって弓だよな。」
って言ったら、サラが
「ちょっと見せて!」
と言って、俺から弓を奪い取った。
サラはすごいキラキラした目でその弓を見ている。
するとサラが、その弓を構えだした。
すると、緑の弦が現れた。
と思うと、次にサラは矢がないまま、弦
を引いた。
今度はどこから現れたのか、緑の矢が現れた。
そのまま、サラは遠くの壁に向かった矢を放つた。
するといき良いよく飛んで壁に突き刺さり、しばらくして緑の矢は消えた。
「すげっ」
俺は思わず声を漏らした。
「ね~、ユーちゃん。これ、私にちょうだい。」
「え、みんなが良ければあげるけど。」
「いいよ~」
ネロとミラも頷いている。
「本当!、ありがとう。私、絶対に大切にするわ。」
「あげるのは、いいけどさ。なんかサラ、疲れてない?」
俺はサラの様子を見て聞いた。
「あ、この弓ね。魔法の弓なの。見た通り、威力はあまり無くて、普通の弓と同じか、少し強いくらいかな。
それで、自分のMPと引き換えに矢が発現するの。すごいでしょ。」
サラは興奮して話している。
「良かったね。サラ。」
ミラが言った。
「そうそう。これ見つけたの、ハクだから。ハクにお礼言って。」
俺はハクを見て言った。
「ハク~、ありがとう。」
そう言ってサラはハクに抱き着いた。
ハクや嫌がる様子も見せずにまんざらでもないらしい。
「く~ん」
だってさ。
俺はハクの心に語りかけた。
「黒い蟻、強かったか。」
「別に」
それだけ答えてサラの顔を舐めている。
つれない。
俺たちは流石に疲れたので、家に戻った。
サラは大事そうに弓を抱えている。
「みんなおつかれ~」
「おつかれ~」
そう言って、各々のベッドに向かった。
みんなだいぶ疲れている。
「お待たせしました。」
エルフの方が食事を持って来てくれた。いつもと同じ野菜のスープとパンだ。
もちろん肉は入っていない。
でも女性陣はあまり文句も言わず食べている。
きっとダイエットになると思っているのだろう。
食事を食べ終わると、みんなの体力はある程度復活して、賑やかになった。
俺は明日からの予定を話した。
「明日からは、別行動をします。俺もやりたいことがあるので。」
「で、どうするの?」
ミラが聞いて来た。
「ミラとサラのLV上げね。ミラの面倒をネロが見て、サラの面倒をハクがみる。
ミラは地下2階でサラは地下3階ね。頑張ればすぐに下の階に行けるでしょ。」
「それって釣るってこと?」
「さすがネロは解っているね。でも良く考えて釣らないとミラが死んじゃうからね。」
「解っているわよ。」
「頼むわよ。ネロ」
少し、ミラが心配している。
「ハクは私とだね。よろしくね。」
「わんわん。」
「それと寝る前にちょっと手伝ってほしいんだけど。」
俺はみんなにお願いした。
「なに、なに?」
ミラが聞いて来る。
「この前さ、川に落ちたじゃん。だから落ちないように練習したいんだ。
たぶん気を失うけど、寝る前にベットの上で誰か俺の上に乗って。
そのまま気絶しらたほっといていいからさ。お願い。」
「私がやるわ。」
ネロがいち早く反応した。
「何言っているの、私が手伝うわ。」
次にミラ。
「私で良ければ好きに使って。」
なんか違うことを言っているサラ。
「じゃあ、順番でお願いします。」
3人で相談を始めて、じゃんけんになったようだ。勝ったのはサラだ。
「じゃあ、今日は私ね。どうすればいいの?」
「ああ、この前みたいに背負って、ベッドの上で少し浮くから、
それでMPが切れたら気絶するから、そのまま寝かしといて。」
「大丈夫なの。そんなことして。」
「大丈夫。小さい時からやっていたから。」
「また出た。ユートの非常識。」
ミラが言った。
「ユーちゃんって、子ども頃から魔法出来たの?」
「少しね。」
「ユートって6歳の時に私を背負って飛べたんだよ。」
胸を張ってミラは自慢している。
もう何回も聞いているけど。
「いいじゃん。そんなこと。サラお願い。」
俺ははぐらかした。
案の定、サラを背負ってベッドの上で空中停止したら、10分ぐらい気を失った。




