赤オーガの村を出る
今は、赤オーガの村に戻っている。もちろんハクも一緒だ。
村に入る時、少し混乱した。
子どもたちが珍しそうにハクに寄って来て、おっかなびっくりで触って来たからだ。
もちろんハクは大人しい。
するとその様子を見ていたのか、村の住人すべてが集まって来た。
どうやら本当にハクは森の守り神らしい。
サブもホープもハクが現れたとき、本当に戦っていいのか迷っていたようだった。
しかも、俺たちの態度と仲間にしてしまった事に対して、かなり信じられないと言った様子で見られていた。
でも俺は、ちょっと大きい白い犬と思っているけどね。
そんなこんなで、10日は過ぎた。
LV上げのおかげで、村のみんなは明るい。
そりゃそうだろう。いつもおいしい食べ物があふれている。
村人がこれに慣れるとまずいが。
ホープはだいぶ強くなった。俺が倒した赤オーガのリーダーよりも強い。
この辺の魔物なら一人で問題ないだろう。
ホワイトウルフもそうだが、ネロが連れてくる魔物って結構、レアが多く、
極端に防御力が高かったり、素早かったり、大きかったり。
絶対、わざと連れて来ているとしか思えなかった。
それを文句一つ言わず、3人で倒していた。
サブはホープより強い。でもほとんど大差がない。サブは頭がいい分だけ、ホープよりは強いのだ。
サラは普通の赤オーガよりは強いかな。サラはこれからも特訓が必要だな。
でもみんな強くなった。この短期間で。
そうだ、俺がリーダーになって受け取った黒い剣はサブにあげた。なんか遠慮していたけど。命令して。
それで、ホープには俺が持っていたロングソードをあげた。すごく嬉しそうだった。
サブが最初に持っていた、大きめのロングソードは刃が折れており、
結構ボロボロだったので、今は村人の練習用になっている。
もうそろそろ、この村を出ても問題ないだろう。明日、出て行くとネロとサラに伝えた。
次の日、俺たちが出て行くことをサラからサブやホープに伝わると、急いでこちらにやってきた。
「もう発たれるのですか。」
「うん。もう大丈夫そうだしね。」
「そうですか。でしたら私を連れて行ってください。」
とサブが悲願してきた。それと同時にホープも
「私もお願いします。」
と言って来た。
「無理だろ。人間の町に行くし。」
「人間の町に行ったときには外で隠れているので。」
「無理だってすぐにばれる。お前たちの助けが必要になったら呼ぶからさ我慢して。
ホープもだぞ。後ろの女の子を置いて村を出て行くのか。」
「うぐ」どうやら図星の様だ。
「ホープには、この村を守るという役目がある。サブもホープのそばで支えてくれ。
それでお願いだが、人に対して無益な殺生はしないでほしい。
襲ってきたら戦っていいが。こちらから襲うことは絶対にしないでくれ。お願いだ。」
そう言って俺は、約束を交わした。
俺とネロとサラは今、森を歩いている。
ライオネル城を目指して。もちろんハクも一緒だ。
「あ、ここは赤オーガに襲われたところだわ。」
サラが思い出したように言った。
「そうするともうすぐ道に出るな。あ~、ハクをこのまま連れて行くとどうなる?」
俺は、2人に聞いた。
「わかんなぁ~い。」
ネロは首を傾げながら適当に言った。
「たぶん、まずいでしょ。ホワイトウルフは魔物だから人に見つかったら騒ぎになるわ。」
とサラはちゃんとした回答をしてくれた。
「そうだよな。まずいよな。じゃあハクとはここでお別れだ。」
「え~、お別れなの~」
残念そうにネロはハクに抱き着いた。
「お別れって言っても、一緒に行動は出来ないから、森の中から、人に気づかれないように付いてこいって意味。」
「なあ~んだ。そういうことか。もう会えないかと思った。」
ネロは安心したようだった。
「この世界に、動物を飼っていることはあるのか。例えば犬みたいの?」
とサラに聞いてみた。
「なくは無いけど。貴族が番犬として飼っているぐらいよ。」
「そうか。なら番犬だったら大丈夫なんだな。」
「ハクは無理よ。ホワイトウルフだし、すぐに解っちゃうわよ。」
サラが心配そうに言った。
「大丈夫、ハクだったら何とかなるだろう。知能高いって言ってたし。」
そう言って俺はハクに近づき、ハクの顔を両手で挟み、
俺のおでこと、ハクのおでこを合わせ心の中で念じた。
「いいか、ハク。今は、お前を人の町に連れて行くことはできない。
森の中に居ろ。必要な時には呼ぶから待っていてくれ。
あと、俺の血を飲ませた時に体が一瞬大きくなって元に戻った。
だから、小さくなることも可能だと思う。
子犬ぐらいの大きさになれるように頑張ってくれ。
それと泣き声は「わん」と「く~ん」だぞ。
それが出来たらたぶん町にも連れてけると思う。いいな。」
そう伝えた。ハクは
「わん」
返事をした。ネロとサラは
「なになにどういうこと?」
と二人で目を合わせている。
ハクが「わん」と吠えたからであろう。
俺は、ハクのおでこに俺のおでこを合わせたが、実際は、あんなことしなくても、
俺とハクはつながっていて意思の疎通ができる。
でも、ネロとサラには内緒だ。




