ユート、赤オーガと対決をする
「私は、エルフ族のサラといいます。
本当にこの度は助けていただいてありがとうございました。」
「おい、ネロ! 囲まれている。
たぶんさっきの赤オーガだ。」
「そのようね。仕返しに来たのかしら。」
俺たちの様子に気づいのか、サラは黙った。
「逃げれるか。ネロ?」
「私達だけだったら問題無いけど、
サラが一緒じゃ無理ね。」
「せっかく助けて、捨てて行くのもあれだしな。
しょうがない本気で戦うか。」
「解ったわ。」
そんな会話をしていると、徐々に赤オーガの姿が現れ出した。
俺たちを中心に50匹ぐらい居るようだ。
「ガオガオガー」
など、どうも興奮しているが、一向に攻撃をしてこない。
しばらくすると、一匹の赤オーガが咆哮を上げて、
輪の中心へ出てきた。
その赤オーガは、自分の身長もある黒い両手剣を持っていた。
「あ~これはたぶん赤オーガとの1対1の対決だな。
行けるかネロ?」
「さすがにあの赤オーガは無理です。
ここのリーダーっぽいし。」
「あ~たぶん、赤オーガのリーダーだよ。
力を誇示するための決闘だな。
しかたがない俺がやるか。」
「気を付けてね。あれはきっと強いわよ。
でも、ユート君じゃ関係ないか。」
「解らないよ。やって見ないと」
そう言って俺は前に出た。
周りの赤オーガはどんどんうるさくなっている。
サラは、腰を抜かして、どうしたらいいかわからない状態だ。
俺と赤オーガリーダーは、対峙している。
「じゃあやりますか。」
俺が話しかけたら、
「グオーー」
と俺に向けて咆哮を浴びせられた。
赤オーガリーダーは、一歩踏み込むと、
黒い幅広の剣を横に切り付けて来た。
俺は、どれくらいの威力があるか確認するため、
ロングソードで受け止めた。
すると、衝撃で後ろに吹っ飛ばされ、
ネロが受け止めてくれた。
赤オーガの観衆たちはさらに大声を張り上げた。
「ありがとう。ネロ。」
「いえいえ、大丈夫そう?」
「ちょっと本気を出す。」
赤オーガリーダーは挨拶代りと言わんばかりに、
その場で俺を待っていた。
剣では倒せないだろう。
じゃあかまいたちは。
たぶん無理だろう。そうするとあれしかないか。
そう青オーガを倒した時に使ったあれ。
最初の攻撃で、赤オーガリーダーのスピードは解った。
そんなに早いわけではない。
そうすると、あれは飛ばさなくても直接叩き込めば問題ないだろう。
そう思い、ロングソードを地面に突き差し、
俺は赤オーガリーダーの前に出て、
ファイティングポーズを取った。
そんな赤オーガリーダーは、俺に突っ込んできて、
黒い剣で脳天を割に来た。
それを俺は半身で躱した。
赤オーガリーダーは、躱せられたと解ったら、
地面に剣がのめり込んでいる状態で今度は下から斜め上方向に俺の胴を狙ってきた。
それを俺は身を低くして躱した。
赤オーガリーダは、そのまま、振り上げられた黒い両手剣を、
俺に向かってまた、切り付けた。
俺は、一歩後方にジャンプし、躱した。
よし。
スピードは問題ない。
それじゃあ、行きますか。
俺は右手の掌を上に向けて前にだし、
手のひらに風を集め出した。
そうして手の上でつむじ風が発生し、
だんだん強くなり、
手の平の上で風が渦になっているところで、
左手を上から添え、
さらに勢いを増していく。
そこには真っ白いソフトボールぐらいの大きさの球が出来上がった。
赤オーガリーダーはその様子を見ていたが、
この白い塊は危険と判断したのか、
急いでジャンプをして、
切りかかってきた。
「もう遅いもんね」
赤オーガリーダーの黒い剣を躱しつつ、
懐に入り、右手にある白い球を赤オーガリーダーの腹に当てた。
その瞬間、当たった場所が右にねじれ、
ボールが当たった部分は丸く抉れ、
きれいに穴が開き、
赤オーガリーダーは口から血を吐き、
黒い剣を地面に突き差し、
絶命した。
赤オーガの観衆共は
「シーン」
となっている。
まさか自分のとこのリーダーが負けるとは思っていなかったらしい。
「さすがユート君。また、見たこともない技を使って。」
とネロはあきれ顔だった。
すると、一匹の赤オーガが、
こちらに歩いて来た。
最初に出逢い、腕を切られた赤オーガをネロからかばった1匹だ。
俺は、構えた。
だが、その赤オーガは、
黒い剣を地面から引抜き、
矛先と柄を両手で持つと、おれの前にひざまずき、
黒い剣を両手で俺に取れと言わんばかりの態度で示している。
「リーダとして認められたのよ。」
サラがびくつきながら言っている。
「この場を収めるには、受け取るしかないかな。
他の赤オーガたちも殺したくないし。
っていうか。無益な殺生はしたくないし。
どう思うネロ?」
「いいんじゃない。
リーダーが嫌だったらやめてもいいと思うし。」
ネロは適当だった。
俺は、赤オーガが掲げている黒い剣と取った。
すると観衆が大声を挙げた。
俺に剣を渡した赤オーガが観衆に何かを言っている。
「これから、我々のリーダーは、このお方だ。
みたいなことを言っているよ。」
とサラが言ってきた。
「え、サラは、赤オーガの言っていること解るの?」
「少しだけね。」
と自慢そうだった。
じゃあなぜ、赤オーガに襲われたんだろ。不思議だった。
俺たちを囲んでいる赤オーガたちを見渡してみると、
さっきネロに腕を切り落とされた赤オーガが居る。
俺は、そいつ前に立った。
赤オーガは、頭を地面に付けている。
たぶん俺に殺されるか、罰を受けると思っているらしい。
でも実は、俺。さっきの腕を持っで来ていたんだ。
何かに使えると思って。
焼いて食べられるのかなあ。なんて。
気持ち悪かったけど。
だから、俺は、腕が無い赤オーガに腕を付けてヒールを唱えた。
ちゃんと付くかどうか、わからなかったけど。
赤オーガはビックリして、俺の顔を見上げた。
俺は、赤オーガの前に手を出し、ぐーばー、ぐーぱーと手を開いたり閉じたりした。
赤オーガは意味がわかったのか、
着いた手をぐーぱー、ぐーぱーしている。
問題なく着いたようだ。
赤オーガは一度失った腕が戻って来たのか、
とてもうれしそうに泣いていた。
「サラ、何で言葉が解るのに襲われたんだよ?」
「たぶん、種族が違うから。
赤オーガというか、青オーガもそうだけど、
敵対しなければ、特に襲ってきたりはしないの。
でも、一部のオーガは物珍しさで人間を見たら襲うと言うか、
もてあそぶの。
たぶん私も命までは取られなかったと思うけど、
ユートさんに助けられなかったら、
もっとひどい目に合っていたわ。」
「だから怪我はしていなかったのか。」
「子どもが、小動物を捕まえたらそれで遊ぶでしょ。
そんな感じだと思うわ。」
「なるほど。小動物からしてみれば災難だよな。」
「で、サラは赤オーガに恨みは無いの?」
「あんな怖い思いをして、恨みは無くは無いけど、
今はもう襲われないと思うし、
ちょっとオーガの生態にも興味があるわ。」
「じゃあさあ、当分の間、通訳をよろしく。」
「はい。」




