アリスに拾われて
俺は、どうもアリスいう女性に拾われたらしい。
いかつい男が自分を抱っこしている女性をアリスと呼んでいた。
とりあえず一安心だ。
箱の中にいたときは、外で「ギギギギー」うるさいし、小さいけど体に衝撃は走るし、ゴンゴンゴンと大きな音が聞こえてくるし。
もうダメかな。
っと思ってずうっと泣いていた。
でも、このアリスという女性に助けられ、とても感謝している。
ここでふと、疑問に思うのだが、どういう訳か、前世の記憶があると気がついた。
地球ではよく、前世の記憶を持って生まれくる人がいると雑誌かなんかの記事で読んだことがある。
ただ、年を重ねるとその記憶も曖昧になってくるとも書いてあった。
ちょっと不安ではあるが、赤ちゃんから人生が始まったので前の記憶がない人生の時と一緒じゃん。
と楽観的に思っている。
だからしゃべっているように見えるけど本当は、頭の中で思い描いているだけで、実際は、アリスが聞いている言葉は、あーあーとかまんまとか言ってると思う。
赤ちゃんが普通にしゃべってたら怖いでしょ。
たぶんこの世界の赤ちゃんもしゃべらないと思う。
ー女神サイドー
まったくあいつは失礼しちゃうわ。
私を悪魔呼ばわりして、ほんとに頭に来ちゃう。
私は偉大なるもの。天地創造神以上の神だから、姿、形はないの。
でも、相手と話すときは印象が大切だから、その人の一番好きな容姿になってあげているだけなのに。
まったくもう。
あの時たまたま地球で、蜘蛛に食べられる蝶々として遊んでいただけなのに。
まさか助けられるとは思いもよらなかった。
少しは私の原因でもあるから。これからは本人次第。
ちょっとはひいきしてあげたわよ。
あとは自分の力で楽しく人生を謳歌してね。まったね。
アリスは生まれ故郷のダリルいう村に帰ってきている。
ユートも一緒だ。
ちなみにダンという男もだ。
ダリルという村は四季があり、今は秋。村の人口は、50人程度の小さな村だ。
主にじゃがいもに似たものを栽培し、家畜を飼って暮らしている。
アリスの両親は他界している。
アリスが冒険に出て家を空けているとき、両親は生活に必要なものを買いに町に向かう途中で魔物に襲われて命を落としている。
魔物は普段、人里に近いところではあまり姿を見せない。
しかし、食べ物がない時など人里に近づいて来て人を襲い、攫って行くことがある。
地球で言うと熊みたいな感じかな。
アリスの両親は運悪く魔物に連れ去られてしまった。
それは、アリスが18才の冬のことだ。
アリスの親が建てた家を少し手直しして、今はアリスとユートとダンで暮らしている。
あと、乳母のミランダ。
ミランダは乳母のほかに家事全般を行っているようだ。
ダンは有名な冒険者だったそうで、ある程度、蓄えがあるらしく、今は趣味程度で畑仕事をしている。
アリスは僕を可愛がってくれていて幸せそうだし。僕も幸せだ。
僕自信のことなのだが、自分で言うのもあれだが、すくすくと育っている。
人間の子供として。
そういえば、この世界に魔法があると悪魔か女神様かわからない綺麗な人から聞いていたが今の自分ではまだよく解らない。
それから2年が経ち、少し歩けるようになってきた。
ある時、いつものとおり頑張ってよちよち歩きをしていたところ、2階の階段から誤って落ちてしまった。
その様子を一階で見ていたアリスは焦った様子もなく人差し指を俺に向けてくるくると回したら、
頭から落ちるはずが、ふわっ として尻もちを着いた。
なんと半回転して俺は、無事だった。
とても不思議な感覚だった。
魔法かなっと思った。
一方、ダンは、体が鈍ると言っていつも外で剣を振り回していた。
その時、何かに向かっていつも
「ぶつぶつ」と言っている様子を見ていた。
ダンは危ない奴だなあっと思った。
それから耳が発達してきてある程度、聞き取れるようになってきた。
アリスやミランダのいうことを真似することが出来るようになってきた。
それで、いつもダンが剣を振り回しているときに、
ぶつぶつと言っている言葉の中にステータスオープンという言葉を聞いた。
「これは」
っと思いステータスオープンと呟いた。
すると、なんか視界の真ん中、目からすぐ前、50cm先の空間に長方形をした半透明のアクリル板みたいな物が現れた。
そこには文字みたいなものが書かれている。
しかもなんと、その文字は読めた。
名前「ユート」、種族「ヴァンパイア」、年齢「3才」HP1 MP0などなど。
ビックリした。
しかしそれはすぐに消えてしまった。
そしたらものすごい眠気が襲って来て、
ダンが剣を振り回している傍で寝てしまった。
正確には気を失ってしまった。
気が付くとアリスが顔を覗き込み心配そうな顔で見ていた。
夜になり、ベッドで寝る前にまた、ステータスオープンと呟いてみた。
もっと内容を知りたかったからだ。
でも、すぐに消えてしまい、また、気を失った。
次の日の朝、起きたら気分が悪かった。
今日の夜はステータスのオープンはしなかったが、
次の日の夜のまた眠る前にステータスオープンを唱えたら、
また、同じように気を失ってしまった。
子供なので、死ぬことはないだろうと根拠のないことを考えながら。
また、自分のステータスが見えることに感動して。
でも、ステータスオープンを唱えると気絶するみたいなので、
アリスに迷惑がかからないように夜な夜な寝る前にステータスのオープンを行った。
そんなことを数日、続けていたら気を失うことはなくなり、
しかも、MPが1になっていた。
成長していると気が付いた。
ということは、ステータスを見るのも魔法の一つなのかなあ。
などと考えた。それから毎晩、
気を失うまでステータスオープンを行った。
4才になった。
今ではステータスを常時意味もなく展開出来るようになった。
ある時、居間でアリスと遊んでいた。
アリスは外から葉っぱを持ってきて空中でひらひらと操っている。
それを見て、へぇーどうしたらあんなふうに葉っぱを操れるのだろう。
と思いながら俺は、その葉っぱを捕まえようとして手を上げて取ろうとすると、
す~っとその葉っぱは俺の手をすり抜けた。
そんなこんなで一生懸命葉っぱを捕まえようとしてアリスと遊んでいた。
アリスは楽しそうに葉っぱでじゃれている俺を見て、
嬉しくなったのか葉っぱをの数を2枚増やし、
「ウインド」と呪文を唱えた。
俺に聞き取れるように。
その呪文を忘れないように覚えながら、
さらに俺は、アリスに弄ばれて、きゃっきゃと遊んだ。
夜になって寝る前に、アリスが唱えた呪文
「ウインド」
を思いだし呟いてみた。
そしたら少し風が吹いたように感じて気を失った。
朝、起きたら初めてステータスをオープンした時みたいに体が怠かった。
次の日のからもステータスオープンをしたときのように頑張ったらMPが上がると思い、常時ステータスをオープンさせたまま、「ウインド」で風お越しを行った。
すると5才になった時には、MPが2になっていて、
アリスが3枚の葉っぱを操っていたように、
自分も出来るようになった。
しかも不思議なのはMPがまったく減らなかった。
6才になった時には、
ステータスの大きさや色の濃さなども操れるようになり、
風魔法の「ウインド」で風起こしを頑張れば、
自分を少し浮かすことも出来た。
でも、アリスとダンには、内緒にしていた。
魔法の練習はかなりしていたがMPは2から減ることも増えることも無かった。
また、この頃になるとダンを相手に小さい木刀で剣の練習もした。
ダンに「え~い」と言って斬りかかって行ったが、
石に躓いて転んだりして、
膝を擦りむいたり、怪我をよくした。
しかし、翌日にはすっかり治っていて、
アリスとダンとミランダはいつも不思議そうな顔で怪我をした場所を見ていた。
ミランダはこの子ども、ユートに少し困惑していた。
ミランダにもユートと同じくらいの娘、ミラがいる。
ある日、娘と一緒に母乳をあげようとして右腕にミラ、左腕にユート君を抱いて母乳をあげようとしたの。
ミラはすぐ飲むのにユート君はなかなか飲もうとしない。
「ユート君、飲んでいいのよ」
と言って口に乳首を押し付けても、顔を逸らすばかり。
そのうちミラが飲み終わるとユート君は飲み始めたのだ。
ユート君一人に母乳を上げているとすぐに飲むのに、
ミラと一緒に母乳を飲ますと必ずミラが飲み終わるまで待っているのよ。
その他にも、ハイハイが出来るようになった冬。
ちょっと目を離した隙にユート君は暖炉の前に座ってぽかぽかと暖まっていた。
本来ならば赤ちゃんは好奇心で火に触りたがるから、
危ないので目を離したらいけないのに、
ユート君は、火に近づこうとしない。
あたかも火にさわったら火傷をすると解っているかのように。
だからその辺の心配が全くなかった。
本当に手がかからない。
いい子すぎて少し怖い気がする。
この前も、誤って包丁を落とした時、
ユート君が取ってくれた。
しかも片刃包丁の刃がない方を持って、
危なくないように柄の部分を私に向けて渡してくれた。
これはさすがに驚いた。
だって、やっと歩けるようになった子供ですよ。
そんな子がこんなこと出来るわけ無いじゃないですか。
本当だったら刃の部分を持って手を切るかも知れないのに。
この子は私のこと気遣って柄の方を渡すなんて信じられない。
アリスは奥様は、そんなユート君を見て、
「すごい、いい子。私に似て頭がいいのね~」
なんて言ってる。
私のミラは凄く手がかかってしょうがないのに・・・・。