また、女の子を助ける。
町を出て、3日目。
さすがに昨日みたいなことは無いだろうと考えながら、歩いていた。
ちょうど太陽が真上に上がり、お腹が空いて来たので、
道の脇に荷物を置いて昼食を食べようとしたら、
森の奥に首が短いダチョウみたいな動物が見えた。
「ネロ、あれ食べれるか?」
「ん、あれ、ホロホロ鳥だわ。とってもおいしい鳥よ。」
「捕まえようか。」
「さすがに無理よ。距離が遠すぎるし、気づかれて逃げられるわ。」
「そうだよな。」
そんな話をしながらホロホロ鳥を見ているとなぜかこっちに走ってくるではないか。
お、捕まえられるかな。
と思った瞬間、ホロホロ鳥は俺たちの姿を認識したのか、角度を換え猛スピードで逃げっていった。
「ちくしょうばれたか。」
そうネロと話していると、ホロホロ鳥がこっちに向かってきた奥の方から
「だれか助けて~。」
って女の焦った声が聞こえてきた。
「なんか誰かさんみたいな感じだな。オークに追われているのかな。」
「何よ。もう。」
「とりあえず、助けに行くぞ。」
俺たちは声のする方に走り出した。
だんだんと近づくにつれて、女の声も次第に大きくなり、違う声も聞こえるようになってきた。
「もう少しだぞ。」
そうネロに伝えると、ようやく女の姿が見えた。
「あれだな。女の後ろから追いかけてくる赤っぽいのは、魔物か?」
ネロに聞くと、
「あ、あれは、赤オーガよ。しかも3匹。私一人じゃさすがにきついな。ユート君が戦えば問題ないと思うけど。」
「なあ、ネロ、青と赤ってどっちが強いんだ?」
「そりゃあ、青オーガよ。」
「赤、3体。青、1体だったら?」
「それでも青オーガね。ほんと、ユート君が倒したって聞いて驚いたわ。」
そんな話をしながら女と合流した。
女は、服がボロボロに破け、怯えおり、ネロに抱きついている。
赤オーガは俺たちを見て警戒し、威嚇しながらこちらの様子を伺っている。
突っ込んでこないところを見るとバカでは無いらしい。
とりあえず、赤オーガを倒すため、
「ネロ、行けるか1人で。」
「無理よ~。3体なんて。」
「でもさ、オーク狩りでLv上がったじゃん。」
「そりゃ~そうだけど」
「じゃあ、頑張って。」
「ユート君の鬼。」
「危なくなったら手伝うからさ。」
「絶対だからね。助けてね。か弱い乙女なんだから。」
俺は、逃げてきた女性に、
「ちょっと危ないからこの先の物陰に隠れていて。」
そう言って下がらした。
それを見ていた赤オーガたちは、
獲物が逃げられると思い、咆哮を発した。
それを聞いた俺は、青オーガよりは、軽いなあと感じた。
しかもよく見ると、姿かたちは青オーガに似ているが、全体的に痩せているというか、迫力が無いみたいだ。
でも、2匹は棍棒。一匹は剣を持っている。
青オーガは武道派で、力を駆使して戦う単騎タイプだったが、赤オーガは連携をしてくるようだ。
しかも、身長は2Mぐらいで俺たちよりは大きい。
ちょっと連携されたら、ネロだけじゃ厳しいかな。
なんて思いつつ、ネロの戦いを見守ることにした。
ネロは覚悟を決め、剣を抜いた。
ネロと赤オーガたちは互いの出方を警戒していて、なぜかこう着状態になっている。
たぶん実力が拮抗しているのだろう。赤オーガたちはじりじりと間合いをつめ、棍棒を持った左側のオーガがネロに攻撃した。
ネロは、上手く赤オーガの左側に避け、
攻撃してきたオークが他の赤オーガの邪魔になるよう、
位置をとり、攻撃が空振りに終わった腕を、
下から切り付け、赤オーガの腕と棍棒が宙に舞った。
「ぐおーーーー!!」
腕を切られた赤オーガは悲鳴を上げて膝をついた。
すかさずネロは止めを刺すために首を切りつけようとしたが、
剣を持っている赤オーガにふさがれ、
剣と剣がぶつかり合ってこう着状態になっている。
剣を持っている赤オーガがもう一体の無傷の赤オーガに何やら指示を出している。
無傷の赤オーガは、指示に従ったのか、腕を切られた赤オーガの左腕の肩を担いで、来た道を、森の奥へと逃げていった。
それを見送ってから、剣を持っている赤オーガは、ネロの剣を弾き、
後方にジャンプすると、先に逃げた赤オーガを追いかけるように逃げて行った。
「待て~。」
とネロは追いかけようとしたが、
「深追いはするな。」
と追跡をやめさせた。
「ネロ、赤オーガは人間みたいだな。仲間をかばって逃げたぞ。」
「そうね、大人数で来られたら厄介ね。」
「でも、ネロさ、3匹だったら問題なさそうだね。」
「あの剣を持った赤オーガは、私より強いかもしれない。」
「またまた、ご謙遜を。」
「ほんとだって、剣を合わせた時、これは本気で戦わないとやられるって感じたの。」
「そうか。ネロがそう言うんだったらそうかもな。」
と言いながら2人で女に近づいて行った。
赤オーガが逃げて行ったのを見ていたのか、物陰から女は現れた。
「この度は、助けていただいてありがとうございます。」
よく見るとこの女は、逃げる途中で水たまりにでも転んだのか、全身が泥だらけで、きれいな人かどうかわからない。
はっきり言って、女性とわかるのは、声と細身の体と胸とお尻のラインでわかるぐらいで、
弄ばれたであろう、洋服がボロボロになっていて、泥がうまく胸を隠している状態だった。
「怪我は無いか。大丈夫?」
心配して俺は女に声を掛けた。
「はい。特には無いです。」
泣いているが大丈夫そうだ。
「ネロ、クリーンいいか?」
「あ~はい。クリーン。」
ネロが唱えた瞬間、体や髪に付着している泥は、弾けて消えた。
それに、髪の毛も泥水でこんがらがっていたのに、
綺麗になり、胸ぐらいの長さのある、金髪のストレートだった。
しかも、肌が白く、顔は綺麗系で、
耳が少し大きいって言うか、上に少し尖がっている。
「ユート君、なにじろじろ見てるの。いやらしい。」
そんなネロの声を聴いて、女は慌てて両腕で胸を隠した。
「なんか、羽織るもの無いか。ネロ。」
「あるわけないじゃない。これは想定外です。」
「やっぱり、魔法の袋が欲しい。こういう時のために洋服や着替えを入れといたら便利なのに。」
「あの~すみません。
着替えなら、私の袋にあります。
ただ、赤オーガから逃げる途中で落としてしまって、
一緒に取りに行ってもらえませんか。」
申し訳なさそうに女が言った。
「じゃあ、しょうがないか。見つかるまで、おれが脱ぐか。」
そう言ってシャツを脱いで、俺は女に渡した。
俺は今、上半身裸だ。
「なに、見てんだよ。ネロ」
「別に見てないわよ。早く探しに行くわよ。」
なんかネロの顔が少し赤い。
俺たち3人は、女の荷物を探しに歩き出した。逃げてきた道は俺たちでは分からないので、先頭を女が歩いている。
前を歩くその女はマジでセクシーすぎる。
だって、ワイシャツ一枚だぜ。しかも金髪。
どう見ても興奮するだろう。そんな俺を見ている、ネロの目線が怖い。
森の奥を15分ぐらい歩くとだんだんと、
荷物らしきものが散乱し始めた。
最初は、洋服の一部の布きれ、次がベルトと、
ここから逃げて来たとわかるようだった。
「あったわ。袋。良かった~。」
女は、袋から着替えを出し、その場で着替え始めた。
俺は、ちょっと見たかったが、
ネロが俺の前に立ち、俺の目線を塞いだ。
ちょっと残念だった。
しばらくすると着替えが終わったらしく
「ありがとうございます。」
といって俺のシャツを返して来たので、俺は返して貰ったシャツを着た。
ほんわかと甘い桃のような香りがした。




