カイロの村でカイロに出会った。
そうこうしている内に依頼主の町に着いた。
なんか最初に思ったのは、この町すでにオーク臭いと。
俺は、目に付いた村人に
「オーク討伐の依頼を受けて冒険者ギルドから来たんですけど。」
と言ったら村長の家に案内してくれた。
家に入ると、村長とその娘さんが出迎えてくれ、
「ようこそ、いらっしゃいました。」
と二人に言われ、奥の座敷に案内された。
そこには大きめの年輪がしっかりとした足の低い丸いテーブルが置かれていて、
その手前には丸い敷物が2つ敷いてあった。
「どうぞ、お座りください。」
と村長の娘さんに促され、腰を落とした。
それと同時に村長も向かい合って座った。
「これはこれは、こんな田舎までお越しいただき、ありがとうございます。
私は村長のゼンと申します。この子は孫娘のリンと申します。」
「初めまして。」
にこっとして孫娘のリンは挨拶をした。
「初めまして、私はユート。でこっちはネロと申します。冒険者ギルドの使いとしてこちらの村にお伺いしました。」
「ところで本当にオークを討伐していただけるのでしょうね?」
信用していないのか、村長は疑う目で聞いて来た。
「もちろんです。そうじゃなかったらこんな遠い村まで来ませんよ。」
「そうですよね~。ありがとうございます。
早速ですが、詳しい依頼内容をご説明します。
依頼内容は依頼書に書かれている通りオークを討伐することです。
報酬は1体につき、小銀貨10枚です。
討伐数は最大で50匹。実際はどれくらいいるか解りません。
少ないかもしれません。それでもよろしいですか。」
「はい。」
「討伐方法ですが、出来るだけ村から離して駆除してください。
そうしてもらえれば、基本、そのまま放置で構いません。
3か月程度我慢すれば、土に帰って臭いは消えると思いますから。」
よし、これでだいぶ楽になったぞ。
「出来るだけと言いますと?」
「はい、村の北を行くと少し開けた場所があります。
それ以上、村から離してもらえればいいです。」
「解りました。確認してから討伐を行います。
それで、オークの子どもが居たらどうなりますか。」
「それも討伐してください。
一体と数えてもらって結構です。
いずれ大きくなったら同じですから。」
「わかりました。
それと討伐に時間が掛かると思いますが、
その間、村に居ても大丈夫ですか。」
「それは、申し訳ございません。
たぶんオークを討伐するということは、
返り血を浴びるということになります。
そうすると基本村に入らないでいただきたい。」
うわ~厳しいな。村のために やってあげるのに、村に入るな。か。
「ですので、それ相当の準備をしていただいて、
討伐をお願いします。」
「完了したらどう報告すればいいですか?」
「村の近くに来てください。
そうすれば臭いでわかりますから。
村の者を派遣します。
その時にオークの鼻の数を確認します。」
かなり徹底しているな。オークは本当に臭いからな。
ネロは嫌そうな頭をしている。
「解りました。それと、食料と着替えはありますか。
ご覧のとおり、軽装で来てしまったので。」
「はい。その辺は大丈夫です。
こちらでご用意させていただきます。」
「それと近くに川はありますか。返り血を洗い流したいので。」
「村の東側の川をご利用ください。
綺麗な水なのですが、生物があまりいませんのでそちらをお願いします。」
「わかりました。
それでは、今日は、準備をさせていただいて、
明日からオークの駆除に参りたいと思います。」
「そうですか。それでは今日は私の家にお泊まりください。
おい。」
そう言って村長が、孫娘に指示を出した。
「どうぞこちらに。」
部屋に案内された。
そこには、小さい机と布団が二つ敷いてあった。
しかもくっついて並んでいた。
「どうぞ、ご自由にお使いください。夕食は準備が出来たらお呼びします。
外出する時は、ひと声お掛け下さい。どうぞごゆっくり。」
と娘さんは、部屋を出て行った。
まだ太陽が空高くさんさんと輝いている。小さい机の前に俺とネロは腰かけて、
「さて、どうすっかな。」
と俺は呟いた。
「本当にオーク狩りするの?」
ってネロは改めて聞いて来た。
たぶん臭いから嫌なのであろう。
「もう後には引けないよ。覚悟して。町に戻ったらアイス買って上げるから。」
「絶対だからね。」
「とりあえず準備をしに、村を見て回るか。」
「うん、見て回る。」
ネロは俺と同じで好奇心はあるらしい。
「とりあえず、討伐用に剣を買うか。さすがに50匹だと、血のりとかで切れなくなるだろうから。」
「うん、そうした方がいいね。」
「オークの鼻入れはこの前の薬草を入れた袋でいいよな。使い捨てだな。」
「そうだね。もったいないね。」
「仕方ないだろう。ネロにクリーンしてもらったっても、使うの嫌だしな。」
「うん。私も嫌だ。」
「でもこれで、お金稼いだら、ネロのお金の貸しが無くなるんじゃね。」
「うそ。じゃあ頑張ろうかな。」
「そうだよ頑張りな。」
そう言って部屋を出て、娘さんに、
「討伐の準備をしてきます。」
と言ったら
「大丈夫ですよ。うちの方ですべて用意しますから。」
と言ってきた。やることが無くなってしまった。
「それじゃぁ、見せてもらえますか。」
「いいですよ。あちらの小屋にありますから、見てってください。カギは開いていますから。」
「わかりました。確認させていただきます。」
そう言って小屋を開けてみるとそこには、
短剣から長剣までいくつも並べられていた。
その他、弓や棍棒なども置いてあった。
また、丈夫そうな紐や袋まである。
その他、タオルのような物も置いてあったが、洋服は無かった。
「ユート君。すごいね。」
「ああ、こっちで用意する物なんてなくなっちゃったな。じゃあ村でも散歩するか。」
「そうしよう。」
戸を閉めて、娘さんにお礼を言って、村を散歩してきますと伝えた。
「いってらっしゃい。」
と見送られた。
この村の名前はカイロだ。
大きさはダリルの村より倍程度大きい。
人数も倍はいると思う。
村のみんなは、少し暗い顔をしている。
たぶんこのオークの臭いのせいだ。
普通、においって慣れるもんだけど、
このオークの臭いにはなぜだか慣れない。
俺もなんか鼻の調子が悪い。
そう思いながらネロと一緒にふらふらと歩いていると
「あんたらがオークを駆除してくれる人かい?」
と言って男が近づいて来た。
「頼むよ。この村はオークに本当に困っているんだよ。
オークのせいで、
地中に埋まっているキノコがオークに食べられてしまって、
うちの特産がずたずただよ。」
って言って丸っこい、
ゴルフボールぐらいの大きさのコロコロした、
いびつな黒いものをポッケから出した。
「ん、これ黒トリュフじゃね。」
「トリュフ?」
ネロが頭を捻っている。
「ごめん。ごめん、たぶんこれ、とてもいい匂いがする食べ物だと思うよ。」
男が感心したように
「よく知っているね。庶民には滅多にお目にかかれないもの物なんだけど。」
俺は謙遜し
「いやいや、良くは知らないけど見たことがあるだけで食べたことはないよ。」
それに対し男は
「それでもすごいよ。知っているなんて。」
「へ~ユート君って物知りだね。」
とネロが尊敬している。
地球のテレビで豚というかイノシシかな、トリュフを掘り出して食べているって、問題になっていたのを見たことがある。
「実はもう一つあるんだ。」
と言って村人は自慢げにポッケから出した。それは白いトリュフだった。
でも俺は、ビックリしなかった。
というか、黒も白も同じトリュフで両方高いのは知っていたが、
白トリュフの価値は解らなかった。
そんな俺の態度にショックを受けたのか、
男は説明を始めた。
「これは白カイロ、さっきの黒カイロの数十倍の価値があるんだ。
とても貴重なんだぞ。」
「へ~」
としか俺は、言えなかった。
「だからこのカイロの値段が品不足でかなり上がっている。
カイロはこの辺の森でしか取れないんだ。」
「だからオークの討伐報酬が高いのか。」
「それもそうだけど、なんせオークはくさいからね。」
「そりゃ~そうだ。ははは~」
なんて話をしていると、その男は
「オークの討伐が完了したら俺からのお礼にこの白カイロあげるからね。がんばってね。」
と言って去っていった。
「ね~ユート君、そのカイロっておいしいの?」
「俺も食べたことないんだよね。」
「そうなんだ。ユート君も食べたことないってことは本当に貴重なものなんだね。」
「たぶんね。」
俺だってイタリア料理でスパゲッティーの上にスライスしたトリュフをかけて食べていた人を映像でしか見たことない。
日が傾いて来たので、村長の家に戻った。
しばらく自室で寛いでいたら、
「食事の用意が出来ました。」
と娘さんに先ほどの座敷を案内されて席に着いた。あとから村長もやってきて向かい側の席に着いた。
しばらくすると娘さんが料理を運んで来てくれた。
鳥の野菜スープとパンだった。
「おい、ネロこれ、上にかかっているのカイロじゃない?」
「え、そうなの?」
「よく御存じで。」
ビックリしたような顔で村長に言われた。
「そうこれがこの村の特産物のカイロじゃ。村の名の由来になっている貴重な食べ物じゃ。」
「わ~すごい。」
ネロは食べたそうにスープから目を離さない。
「どうぞ召し上がれ。」
村長の許可が下り、ネロは食べだした。
「それで、食べながら聞いてほしい。
この特産物のカイロじゃが、今はほとんど取れていない。
なぜかというとオークが食べているからじゃ。
このままだと村の存亡の危機じゃ。
それにこの臭い本当にどうにかしてほしい。
お主らはよく見ると、お若い。
言っちゃ悪いが本当に討伐できるか疑問じゃ。
この臭いもさることながら、オークはゴブリン以上に強敵じゃ。
D級冒険者が数名で討伐できるぐらいじゃ。
お主たち因みに冒険者ランクはいくつなのかな?」
「この前E級になったばかりです。」
「ほほ~。それでオークを討伐すると。本当に大丈夫なのか。」
ガシャーン。
村長の話を聞いていたネロがスープをすすっているスプーンを落とした。
「大人しく聞いていれば、あんた何様だと思っているんだい。
ユート君があの臭いオークを退治してあげようとしているのに、
なんて言い草だ。」
「ネロ落ち着け。」
「だって・・・」
「いいから。すみません。ネロもそんなつもりはありません。
ただあまりにも私たちを疑っているので気分が悪くなったようです。」
「お、すまん すまん。
こちらも冒険者ギルドに依頼を出してからしばらく音沙汰が無かったからのう。
それでいざ冒険者ギルドから来たあんたらが、
あまりにも若くてのう。
疑ってしまったわい。どうか許しておくれ。」
「いいんです。若さはどうにもならないし。
これから俺たちは、みなさんの信用を勝ち取って、
自分の道を生きて行くだけですから。
ですので安心してお待ちください。
必ずご満足のいく成果をお出ししましょう。」
「お主はしっかりしているのう。たのんだぞ。」
「ちっ。」
ネロはまだ悪態をついていたがスプーンを拾い、
スープを飲み始めた。俺もスープを飲み始めた。
食事が終わるころ、村長が
「おい、あいつを連れてこい。」
と言った。扉が開かれるとそこには、昼間に会った男が居た。
その男と目を合わせた時に、口を手で押さえた。
たぶん昼間のことを言うなってことなんだろう。
「こいつがわしの息子のゲンじゃ。ゲンが討伐を完了した時に確認をする。」
「初めましてゲンです。よろしくお願いします。」
と俺と握手を交わした時にゲンはニヤけた。
俺も
「初めましてユートと申します。」
と伝えた。次にゲンはネロの方を向き同じ様に挨拶をした。
ネロも空気を読んだのか、
「初めまして」
と言っていた。
「それでは、一旦お開きじゃ、明日からよろしく頼むぞ。」
「はい。」
そう言って部屋に戻った。
「ね~ユート君、カイロおいしかった?」
「ん、ネロにはわからなかったか。」
「もうバカにして、おいしかったわよ。」
「いや、絶対、嘘だ。おいしいと思わなかったでしょ。」
「なによ~。ユート君はおいしかったの?」
「そりゃ~おいしかったよ。あのカイロを口に含んだ瞬間、何ともいえない香りが口から鼻に抜けて行って、それが鳥のスープを引き立てていて本当においしかった。」
「やっぱりユート君ってすごいね。私、おいしさが解らなかった。」
なんて俺も言っているけど、解るはずないじゃん。
初めて食べたし。それにこの辺一帯、オークの匂いが充満しているから、
はっきり言ってカイロの匂いとオークの匂いが嗅ぎ分けられない。
でも、ネロに尊敬してもらうためっていうか、
俺の威厳を守るために適当な事を言って信じさせたのさ。




