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異世界へ。そして捨てられる

目を覚ますとやはり真っ黒だった。


ん、何か箱みたいな物に入れられているようだ。


なんだここは、真っ暗でなにも見えん。


やっぱりあれかな、ヴァンパイアといえば、棺かな。


蓋を持ち上げれば出れるかな。


よっと。


蓋を持ち上げる体勢はとったものの、手は上がっているが蓋には届いていない。


え、どうしてだ。なぜ届かない。


ますます混乱してきた。


ちょっと待てよ。確か俺って死んだんだよな。


うん。覚えている。


それで白い世界で気がついたら俺好みの綺麗な人と話をしたな。


異世界と魔法とヴァンパイア。


それで最後に、


「ヴァンパイアとして異世界で人生を謳歌して下さい。」


と言っていたな。


特に年齢とか大きさとかは何も話が無かった。


ってことは、ひょっとして俺、赤ちゃん!


ガーン。


悲しくなってきてた。


箱に入れられている赤ちゃんってなんなの。


もう新しい人生、詰んじゃったじゃん。

これは捨てられたって事だろ。


結局、あの俺好みの綺麗な人は、悪魔だったんだ。


絶対そうだ。


あんなにおれ好みのど真ん中な人がいるわけないじゃん。


俺を安心させて、異世界に送って、そのまま弱って死んでいくところを笑いながら見ているんだ。


最悪だ。


泣きたくなってきた。

もうどうでもいい。


泣いちゃえ。


え~ん。え~ん。




泣き疲れて眠ってしまったようだ。


すると真っ暗は変わりないが、なぜだか揺れている様な気がする。


不安だ。


動物に運ばれているのか。


はたまた、ゴブリン系の魔物か。


頼む、人間であってくれ。




古い小屋がある。


それは丈夫に出来ていた。


四角い石を積み上げてできた4m四方ぐらいの小さな家みたいな小屋。


出入り口の扉が一つと窓も二つあり、屋根の上には煙突もある。


中には暖炉はあるがキッチンはない。寝床もない。


あるのは、古くて丸いテーブルと椅子が2脚あるだけ。


人が暮らすために作ったとは考えられない家のような小屋。


そこに、ちょうど赤ちゃんが1人ぐらい入る大きさの真っ黒な箱は古くて丸いテーブルの上に置かれていた。


「ギギギギー」


3匹のゴブリンがどこからともなくしゃべりながらその古い小屋にやって来た。


ゴブリンたちは警戒するように窓から中を覗いた。


そこには机の上に黒い箱があるだけ。


ゴブリンたちは興味を失ったのか、人間が来るのを恐れたのか、森に引き返そうとしたその時、


「オギャア」


と泣き声が響いた。


ゴブリンたちは立ち止まり、お互いの顔を見合せ、合図し、小屋に戻って中に入って行った。


真っ黒な箱の前に3匹のゴブリンがいる。


「赤子の泣き声がするぞ、この箱だ。開けてみよう。」


「ん、これどうやって開けるんだ。切り込みがない。」


リーダー格のゴブリンが


「棍棒で叩いて壊せ。」


と指示を出している。


ゴンゴン、ガシャーン。


古いテーブルは真ん中から亀裂が入りそのまま砕けた。


「全然だめだ。チクショー。

人間の子供を食べられると思ったのに。」


「とりあえず集落に持ち帰るぞ。」


そう言って黒い箱を持って森に消えて行った。


集落には、30匹前後のゴブリンが暮らしていた。


知能が低いゴブリンは、

太めの長い木の枝で骨組みを作りその上に森から持ってきたであろう大きな葉っぱを置いて、

雨や風を凌いでいる。


その形は歪で四角だったり三角すいだったり、

いろんなかたちの家があるが、完成度はかなり低い。


屋根の材料になっている葉っぱは、

茶色に変色して、みすぼらしい。


また、地面には、人間のものと思われる骨がいくつも散乱していて、数体のドクロが一ヶ所に積み上げられている。


力を誇示するかの様に。


その近くには虫がブンブンと飛んでいる。


野蛮なゴンゴンの巣だ。


3匹のゴブリンは、箱を壊すために、

まずは集落にある一番大きい30kgぐらいある棍棒でおもいっきり叩いたが、

その箱はびくともせず、棍棒の方が凹んでしまった。


次は、もとからここにある2mぐらいの大きな岩の

てっぺんから地面には投げつけたが壊れない。


今度は大きめの石を2つ用意し、

一つは地面に置いてその上に箱を起き、

もうひとつは、大きな岩のてっぺんから黒い箱をめがけておもいっきり投げた。


「ガキーン」


と大きな音を立てて、黒い箱は数メートル飛んでいった。


ゴブリンたちは箱が壊れたかどうか確認をしに行ったが、

傷一つと入っていない。


ゴブリンたちは壊すのを諦め、黒い箱はそのままにされた。


しばらくすると一匹のゴブリンが、


「ギギギ、ギィギー」

(人間が攻めて来たぞ)


と叫んだ。


ゴブリンの集落を囲む50人の人間。


それは蹂躙のごとく30匹はいたであろうゴブリンは全滅した。


討伐隊長が引き上げる前に最終の確認として、

冒険者アリス、23才は、

何か変わったことがないかどうか見回りをしていた。


すると遠くの方から泣き声が聞こえて、

それが人間の赤ちゃんの泣き声とわかり、その方向に歩き出した。


するとそこには、黒い箱が無造作に置かれており、

その中から聞こえるようだった。


アリスは箱を手に取りそこに書かれている文字を、


「ユート」


と呟いた瞬間。


箱から少し光が発したと思うと、


「カチャ」


と音がなり、

箱を半分に白い光の線が入ると、上の部分が持ち上がるように開いた。


そこには、白い布に包まれた赤ちゃんがいた。


アリスは泣いている赤ちゃんを抱き上げ自分のテントに向かった。


「ん、どうしたその赤ちゃん。」


いつもパーティーを組んでいるダンはアリスいに問いかけた。


「ああ、この箱に入っていたんだよ」


とアリスは左手でダンに箱を投げた。


「これはなんだ。見たこともない素材で出来ているな。魔法か何かで細工してあるのか?」


そう言ってダンは箱を開けたり閉じたりしている。


「たぶんそうよ。

そこに書いてある「ユート」って言葉を呟いたら急に光だして開いたのよ。

ねえ、ダン、この子を一緒にに育てましょう。

たぶん、この子の親はゴブリンたちに殺されたのよ。

きっと。

だって相当、ここのゴブリンたちは近くの村を襲い回っていて。

だから、私たちが呼ばれたのだから」


「そうだな。でも、報告しなくても大丈夫かい?」


「大丈夫よ。こういう仕事をしていると、身寄りのない子供はどうしても出てくるから。

国の方もその対応でいつも大変なんだって」


「そうか。

ま、そろそろ冒険者も引退しようと考えていたし、

アリスと一緒に暮らしたいと思っていたしな。

それに、アリスはこの前、

魔物討伐の時に下腹を刺されて、

子供が産めなくなったのも俺が原因だしな。

これも神様の思し召しだろう。」

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