ユート、両替所に行く。
次の日、朝食を頂いてから、
お金を両替えするために宿屋から外に出た。
ネロは朝食を食べて満足したのかとても幸せそうだ。
両替所に行く途中、なんか付けられているような感じがしたが気のせいだった。
両替所の扉を開け、中に入ると、
そこは狭い空間で、回りは茶色い木の壁になっていて、
正面の真ん中には鉄格子のカウンターがあった。
「いらっしゃいませ。」
鉄格子の中に居る男の人に声をかけられた。
「すみません。両替をお願いしたいんですけど。」
「はい。おいくらですか。」
そう言われて、小金貨を出した。
そうしたら両替所の男が少しびっくりして、
俺の顔を見たが、すぐに小金貨に手をやり、
くるくる回しながら小金貨よく見ている。
「なにか?」
気になって訪ねてみた。
「いやいや、こういう仕事をしているとね、
偽物をもってくる輩も多いんですよ。
だから、この小金貨が本物かどうか確認しております。
うん、大丈夫です。
それで両替の種類はどのように致しましょうか。」
そうだ、何も考えていなかった。
「あ~そういえば、手数料はかかるのですか?」
「もちろんかかります。手数料は小金貨の両替ですと、大銀貨1枚になります。」
「高い」
後ろからネロが驚いたように言葉を発した。
それを聞いたのか男は言い訳を言い出した。
「申し訳ございません。
私どもの職業は、国から許可を頂いてやっておりまして、
国中が一律この手数料になります。
手数料の安い闇の両替所なんかもありますが、
犯罪ですし、頭の悪い人が利用した場合、
ちょろまかされたり、騙されたり、
あらぬ抗争に巻き込まれたりしますので、
おすすめできません。」
「だってさ、ネロ。」
「・・・・」
ネロは黙った。
「それじゃ、大銀貨10枚、小銀貨170枚、銅貨200枚でお願いします。」
またもやビックリしたような顔で、男に見られた。
ネロも不思議そうな顔で俺を見ている。
「いあはや、お若いのに頭がいいんですね。
もしよければうちで働きませんか。
なかなか手数料も差し引いてこの計算をすぐにできる人はそうはいません。
先ほども言ったようにあまり計算が得意でない人がほとんどですので。」
「え、そうなの?」
ネロもすごいというような顔で見ている。
「僕、冒険者を目指していますので。」
「そうですか残念です。
働き口に困ったらいつでも相談にのりますよ。
では少々おまちください。」
そう言って奥の方に入って行った。
「ユート君、頭もすごくいいんだね。
私なんか字は辛うじて読めるけど、
計算は加えることがやっとかな。」
「ん、ネロが頭が悪いの?」
「ちがうよ。ユート君が良すぎるのよ。
さっきも両替の人が言っていたでしょ。
ほとんどの人が計算できないの。」
「へ~そうなんだ。みんな当たり前にできると思ってた。」
「できない、できない。」
そんな話をしていると奥から両替の男が、
「お待たせいたしました。
これに大銀貨10枚、小銀貨170枚、銅貨200枚入っております。」
そう言って袋を3つ出してきた。
「ありがとう。」
といって俺は、腰に巻き付けてある袋にしまった。
両替の男がビックリしたような顔で
「確認はされないのですか?」
と聞いて来たので、
「いろいろ教えてくれたし、
国の許可で商売をしているんでしょ。なら問題ないでしょ」
と言って両替所を後にした。
両替所の男は、
「いまどきにはめずらしい人だ。
もっと強く勧誘するんだった。」
と嘆いた。
宿屋に戻って、おばちゃんに、
「両替所に行ってきました。あのそれで相談なんですが、連泊は出来ますか。」
「ああ、できるよ。」
「それじゃ~お願いします。」
「何泊するんだい。」
「とりあえず10日ほど。」
「ん、この町でなんかするのかい。」
「実は冒険者になろうと思っていまして。」
「やっぱそうかい。
冒険者証も見せないから、
後ろのおね~ちゃんと仲良くやってんのかなあなんて、
疑ってしまったよ。
やっぱり後ろのおね~ちゃんも冒険者?」
「まだです。
俺と同じで冒険者になるためにこの町に来たようです。」
「来たようですっていうと?」
「いや~この町に来るときに知り合ったんです。」
「そうだったのか。」
「ええ」
「それじゃあ、冒険者になってもう一度、戻っておいで、部屋は取っといてあげるから。
後ろのおね~ちゃんと一緒でいいんだろ。」
「本当はよくないんですけど。いいです。」
「じゃあ、言ってらっしゃい。
それと、なんかあんたのことを嗅ぎ回ってる連中がいるみたいだから気を付けてね。
おね~ちゃんもいることだしね。」
って忠告された。
なんだろう。ちょっと心配になって来たが、
まだ外は明るいし問題ないか。
と思いネロと冒険者ギルドに向かった。
両替所の話ですが、20枚単位でお金の種類が上がって行くのは、計算が面倒くさいので、このあとは、両替の話やお釣りの話は多分、もう出てきません。今回も軽く流して読んでいただければと思います。




