撮影その3
「やっぱり、サラはお姫様ね。」
ミラが白いドレスを着ているサラの姿を見て言った。
「へぇ~。ミラちゃんは、神様の巫女みたい。なんかカミール神の女神みたいね。」
赤と白を基調とした、巫女みたいな服を着ているミラ。
「ちょっとなにそれ。ネロ。」
「知らないわよ。」
「似合っているわよ。ネロちゃん。なんか野生的で。絶対にその格好は強い男を虜にするわね。」
ネロの姿は、ビキニ風で、上手く茶色い布で胸を隠しており、いやらしくない。
しかも、右手には剣。左手には盾が用意されている。森林に住むアマゾネス風だ。
「キキちゃんは、民族衣装ね。」
「ええ。私は、産地と品質を紹介するだけだから。
このドワーフ村の民族衣装が適切よ。それにしても。ミラ殿はかわいいですね。」
キキはミラの姿を見て煩を赤らめているが、ミラは無視している。
「もう、ミラ殿はツンツンなんだから。」
キキは呟いている。
「それでは、みなさん撮影を開始しますので、それぞれの部屋に別れてください。
この衣装の撮影が終わりましたら、次の衣装に着替えて、今度は、ユート殿と一緒に撮影します。
それが最後になりますので、よろしくお願いします。」
と案内の人に言われ、それぞれ、撮影の場所に別れた。
それぞれが撮影を終わり、先ほどの着替え部屋に戻って来ている。
「ふ~。結構、疲れたわね。」
ミラが呟いた。
「そうね。さすがになれないことをすると疲れるわ。でも、さすがサラね。全然問題ないみたい。」
「サラの衣装は、お姫様だしね。着慣れているのよ。きっと。」
そんな話をミラとネロがしていると、
「う~、お腹が痛い。」
と言いながらサラがお腹をさすっている。
「どうしたのサラ?」
「このドレス。中にコルセットがあって、ものすごくお腹を締め付けているの。
私も、みんなと魔物と戦って、結構、筋肉が付いたでしょ。だから、前は問題なかったけど、今は筋肉がコノレセットと反発して、ものすごく痛いのよ。」
「と、いう事は、その笑顔は?」
ミラがサラの笑顔をみて言った。
「もちろん、作っているわよ。こういう撮影は、笑顔が大事。」
「すごいね。サラ。私は大丈夫だったかな。」
ネロは撮影風景を思い出して反省している。
「大丈夫よ。ネロちゃん。うまく編集してもらえるから。なんてったって、みなさん、本職の人たちですから。うまく魔法で対応してもらえるわ。」
「そうなの? いいの? 魔法を使ってそんなことして。」
「大丈夫よ。その辺はうまくごまかしているわよ。」
「あんまり考えてもよく解らないから、サラを信じるわね。」
ネロは考えをやめた。
ミラも頷いている。
「さ、もうひと踏ん張りよ。着替えましょう。ミラちゃん。ネロちゃん。」
そう言って3人は着替えだした。
「そう言えばキキ姫は?」
ミラがキキ姫が居ないことに気が付いた。
「キキちゃんは何か、他の用事があるって言って、オータルさんと打合せをしているみたい。
それに、この後の撮影は、私たちだけみたい。」
「そうなんだ。って、今回の衣装は、なんかみすぼらしいわね。」
ミラが自分の服を見て感想を漏らした。
「今回は、みんな同じ衣装の様ね。村人みたいね。」
ミラが感想を漏らした。
「たぶん。あれよ。ユーちゃんが言ってたと思うけど、誰でも手に入れやすい宝石だから。
手ごろ感を出すために村人の衣装なのよ。」
サラが想像した。
「そうね。サラ。きっとそうよ。」
ネロは相変わらず、適当というか。何も考えていない。
「みなさん、着替え終わりましたね。それでは、付いて来てください。」
案内係が指示を出した。
俺は、みんなを撮影場所で待っている。
銀のプレートメイルを着て。
「しっかし、動きづらいな。この鎧。戦争の時とか、騎士団はこれと似たようなのを着て戦っているのか。可動域が狭くて腕を上げるにも金属が体に当って痛いな。」
そう言いながら俺は腕を回している。
「ユートさん。それは衣装ですから見栄え重視ですよ。本物の鎧はもっと滑らかに動きますよ。」
案内係のマイさんに言われた。
ふ~ん。
今度、機会があったら、オータルに言って、展示品を試着してみよう。と思った。
「あ、ユーちゃん。」
サラの声が聞こえたので、振り向くと、普通の村娘3人が居た。
「あれ、なんか普通だね。」
「そうよ。ユートは鎧ね。」
「ああ、ミラ。今度は鎧だ。」
「え、ユート君。何回着替えたの?」
「これで、4回目だ。」
「私たちは、2回よ。」
「え、いいな~。少なくて。」
「でも、たいへんだったよのね~着替えが。」
「そうか。女の子はいろいろと大変だよね」
「そうなの。それでユーちゃんの方は順調なの。」
「よく解らない。一応指示通りにしていたけど。」
「はい。みなさん。撮影を開始しますから。お願いします。」
そう係の人に合われ、指示通りに動いた。
その間、黒い箱みたいのに撮られているのは解ったが、係の指示に対して理解不能だった。
完成がどうなるのか全然想像がつかない。
ミラもネロも顔に?マークを時折織り交ぜながら、終始笑顔だ。
サラに限って言えば、なんか要領が解っているのか、余裕がありそうだ。
「は~い。お疲れ様でした。撮影は以上です。」
「え。これでいいの?」
俺は、あまりにも撮影の仕方が不思議だったので聞いた。
だって、適当にポーズを撮ってただけだから。
「はい。大丈夫ですよ。後は、こちらで編集しますので、期待して待っててください。」
と簡単に係の人に言われた。
「大丈夫よ。ユーちゃん。任せとけば。いいのが出来るわよ。」
「そんなもんなのか。?」
「そんなもんよ。」
サラに説得された。
ま、いいか。撮影も終わったし。良しとしよう。
「じゃあ、帰る支度をしよう。」
「は~い。」
女性陣は返事をして着替え部屋に戻って行った。
「ユートさん。その鎧脱ぐの手伝いますね。」
マイさんに言われ俺も着替える部屋に戻った。
「お疲れ様です。ユートさん。」
「撮影はいつもあんな感じなんですか? 」
「そうです。詳しくは教えられませんが、みんなが知らない技術で映像を作っていくらしいです。」
「それって魔法かなにか?」
「簡単に言うと、魔法っぽいのです。」
「そっか。魔法なら何でもアリだな。しかし、不思議な撮影だった。」
「ええ、普通はそう思うでしょうね。でも、大丈夫です。良く撮れています。編集には3か月ぐらいかかると思いますので、楽しみに待っていてください。」
「そんなにかかるんだ。」
コンコン ドアが叩かれた。
「どうぞ」
俺は返事をした。
「ユート殿、お疲れ様でした。」
オータルだった。
「ユート殿、編集の作業がありますがどうしますか?」
「え、俺たちも編集に参加するの?」
俺は嫌な顔で答えた。
「ええ。絶対とは言いませんが・・・」
なんかオータルは含みを入れて答えている。
「あ~、その辺はオータルさんに任せてもいい?」
「いいですけど。今回の撮影の件はすべて任せてもらってもいいですか。?」
「なんか不都合がある?」
俺は聞いた。
「特には。ただ、編集作業は3か月ぐらい掛かります。」
「わかった。全部任せる。」
「了解しました。」
オータルはいつもの営業スマイルだ。
それが怪しいが、こんなのに付き合っている暇はない。
「それでは、出来上がったら確認されますか。」
「いや、全部任せるよ。今回は俺からの話だし。よく商品が売れるようによろしく。」
「わかりました。それでは私の方で進めさせていただきます。」
「よろしくお願いします。」
そうして、撮影会は終了した。