撮影その2
女性陣営
「あれ~、そこに居るのは、キキちゃん。」
サラが叫んだ。
「あ、サラちゃん。元気だった?」
「元気よ元気。どうしてキキちゃんがここにいるの?」
「え、聞いて無かったの? オータルから話があったと思うけど。」
「知らないわ。」
「そう。実はね、私も宝石の販売に一役買うことになったの。」
「へ~そうなんだ。」
「オータルから話を聞いてね。ユート殿の提案と聞いて、私も力になれればと思って。」
「じゃあ、一緒に頑張ろうね。」
「ちょっとサラ。この子は誰?」
「あ、ごめんねネロちゃん。ミラちゃんは知っているのよね。この人がドワーフ村のキキ姫よ。」
サラが紹介した。
「初めまして、ネロ様。ドワーフ村のキキと申します。
ユート殿とミラ殿にはホワイトオーガから助けていただきました。」
「え、思い出したの?」
ミラが悲しいような顔でビックリした。
「はい。すべて思い出しました。」
そう言ってキキ姫は自分の両肩を抱いた。
「キキちゃん、大丈夫?」
サラが心配するように、キキ姫の顔を覗いた。
「でも、もう大丈夫。」
と言ってキキはミラを見つめている。
「私、雪男に攫われて。でも、雪男はそんなに強くないし、滅多に人間を襲うことも無いと思って、きっとグランじいが助けてくれると思っていた。
でも、連れてこられた洞窟には、ホワイトオーガがいて、私より先に捕まった人たちが次々とホワイトオーガに食べられて行ったわ。
それも生きたまま。私も食べられて、腕を噛まれた時に気を失ったわ。
それで、気が付いたら、ユート殿とミラ殿とグランじいが居たの。」
「大変だったでしょ。怖かったでしょ。」
サラが慰めるように言った。
「うん。実は、ホワイトオーガのことを思い出した時、震えが止まらなくて。
でも、あの人の顔が浮かんで来たらその震えも収まって。」
そう言ってキキ姫は、両頬に手を当ててクネクネしている。
「ちょっとサラ。また、ライバルが一人増えたわよ。」
ネロは小声で言った。
「もうユーちゃんは。仕方がないわね。」
サラもネロに小声で返した。
「キキ姫、どうしたの?ユートのことが好きになったの?」
そう言ってミラは、キキ姫の肩に手を置いた。
「ん。どういうこと? 私、ユート殿にはとても感謝しているが、好きではないぞ。」
ミラ、サラ、ネロの頭に?マークが浮かんでいる。
「私が好きなのは、ミラ殿です。どうか付き合ってください。ミラ殿の顔を思い浮かべると、夜も寝れなくて。」
「は·あーーー!!」
3人でハモッている。
「わはははは~。ミラ、ユート君を忘れて、キキ姫と付き合ってあげなさい。」
「ちょっと、ネロ。他人事だと思って。」
「それは、いい提案ね。ネロちゃん。ミラちゃん、キキちゃんはしっかり者で よく気が付く子よ。」
「サラまで、何言っているの? ちょと。キキ姫、どうして私なの?そこはユートのことが好きになるんでしょ。」
「別にユート殿は好きではないぞ。だってミラ殿が私を助けるために50体以上の雪男を倒したって、グランじいが説明してくれたわよ。
それはそれは、私を助けるために必死で戦ってくれてたって。
そんな話を聞いて、好きにならないわけがないじゃない。」
「え、ちょっと待って。ホワイトオーガを退けたのはユートよ。」
「ホワイトオーガとミラ殿の戦いのお話も聞きました。
私を助けるために、ホワイトオーガの攻撃を受けて、顔が傷だらけになったと。こんな私のために大切な顔に傷を付けさせてしまって。より一層、好きになってしまいました。」
「え~~~」
ミラは困惑している。
「あら、いいじゃない。受け止めて挙げなよ。ミラちゃん。」
「そうよ。ミラ。キキ姫と付き合いなさい。ユート君のことは私たちに任せて。」
「ちょっと。ネロとサラ。いい加減にしないと本気で怒るわよ。」
ミラがネロとサラを見る目が鋭い。
キキ姫はうるうるとした目でミラき見つめている。
ミラはキキ姫に近づき
「キキ姫。あなたの気持ちは嬉しいけど、私には好きな人がいるの。というか。同性の人と付き合うとか考えたこともありません。」
「そんな~。今の時代、女同士で付き合うのは普通よ。」
キキ姫がお願いするような目で訴える。
「なに言っているの。私は違います。」
「私のこと嫌い?」
「嫌いじゃないけど~」
「じゃあ、付き合って。」
「ちょっと。サラ、ネロ助けてよう。」
「知らないわよ~。キキちゃん、私は応援しているからね~」
「ありがとう。サラちゃん。」
「裏切り者~。」
ミラは困った顔をしている。
「あの~すみません。時間があまりないので、早く着替えていただけませんか。」
案内係から注意された。
「あ、すみません。今は宝石を売るための撮影だから、ちゃんと仕事をしてからお話ししましょ。」
そう言ってミラは、着替えだした。
「逃げたわね。」
「うるさい。」
ネロがぼそってと言ってミラが反応した。