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ライオネル王

ライオネル城に着いた。


辺りは黄色い光に包まれている。


夕方だ。


俺たちはエレナを王子に引き渡すために、お城に向かった。


「これはこれは、ユート殿たちでしたか。」


白髭執事が出迎えてくれた。


「あれどうしたんですか?」


「嫌な気配を感じたものですから。」


そう言って俺の剣に目線を寄越した。


俺はその言葉を無視して、


「アレク王子はいらしゃいますか?。」


「はい。おりますが、その前に王様にあっていただけますか。

我が王もユート殿にお会いするのを心待ちにしております。」


俺は、女性陣に目線を流した。


女性陣は頷いていた。


「わかりました。」


俺は王様に会うことを了承した。


今、謁見の間で王様が来るまで待っている。


左の扉が開くと、王様が現れ、その後にギルド長と数十人の兵士が現れた。


俺たちは片膝を床に着け顔を下げた。


「面を上げ~い」


王様の掛け声と共に俺たちは顔を上げた。


「ユート殿、久しぶりじゃの~。元気じゃったか。」


「はい。おかげさまで。」


「いろいろな噂はわしの耳にも届いておるぞ。

ユート殿はソロス城のダンジョンで攫われたって聞いていたのだが、無事で何よりだった。」


「ありがとうございます。」


俺は答えた。


「それでじゃ。どうやって生還したんじゃ。」


王様に問われた。


「いや~、気が付いたらここにいるミラとネロとサラに30階層で助けていただきまして。」


「お主、わしに嘘を付いておるな。」


王の顔つきが変わった。


「おい、ユート。わしに嘘を付くとどうなるのか、わかっているよな。おい。」


王がギルド長に目線を寄越すと、ギルド長は消え、気が付くと俺の前に移動して、俺の首筋に短剣の先を当てていた。


女性陣達はその動きに気が付いて、剣を抜いた。


残りの十数人の兵士たちも俺たちの周りを囲んでいる。


白髭執事は王様の前で構えている。


「待て」


俺は女性陣を制止した。


「王様、これは本気ですか。」


俺は聞いた。


「国王様、おやめください」


サラが胸に手を当て、叫んだ。


しばらく沈黙が続いたのち王が口を開いた。


「わしは悲しいぞ。ユート。なぜわしのことを信じてくれぬのじゃ。」


王は下を向いている。


「そ、それは。」


俺は言葉に詰まった。


「王様、ユーちゃんはまだ、世間のことが解らないだけなんです。決して王様を欺こうとは考えていません。」


サラが俺をかばった。


さあ、どうするか。正直に話すか。いや、さすがに不味いよな。


「王様、申し訳ございませんでした。」


とりあえず、自分の非を認め謝った。


「おい。」


王様が声を掛けると、ギルド長は俺の首筋に立てている剣を下げ、数歩下がった。


「ユート。実はお前たちの動きはこの執事のジャックが監視していた。」


まあ、そうだと思っていたよ。オーガの件も知っていたし。


あ、ヤベ。ドラゴンの時に俺の正体がばれたかな。


「報告を聞くとユート達は相当な修羅場をくぐって来たようだな。

だが、さすがにいっまでも見守っている場合ではいかないようじゃ。

わしの質問に正直に答えるのじゃ。

お主は、ドラン村のクエストを受けた様じゃな。」


「はい。」


「その時に、魔族と戦ったのか。」


「はい。戦いになりました。」


「まさか、倒したのか。」


王様が信じられないような顔で聞いている。


「まさか。私たちが、魔族に勝てる訳が無いじゃないですか。

あ、そうだったんだ。ジャックさんが私たちを助けてくれたんですよね。」


俺は勝手にジャックが俺たちを助けたことにした。


「私が助けられる訳がありません。これを見てください。」


そう言ってジャックは上着を巻くって、お腹を俺たちに見せた。


腹から胸にかけてあざよりも深い紫になっていて、ところどころ水ぶくれの様なおできが出来ている。


「うわ、ひどい」


ミラが呟いた。


「ユート殿たちに後ろからついて行くと、嫌な気配を感じて。

その方向を見ると、今まで感じたことのない邪悪な気配を感じました。私は咄嗟に身を潜めたが、気づかれていたらしく、

口から何か吐き出されたと思ったら、私の腹に当り、そのまま、私は気を失いました。」


あっぶね~。


ってことは俺の正体はまだばれていないようだ。


たぶん俺が魔族を倒したんだと思う。


ジャックが俺たちを助けていないということは、あの場に居たのは俺達しかいない。


いろいろ考えると、どうやったて倒したか解らないけど、たぶん俺が魔族を倒したな。


「あの~。その怪我は魔法で直せないのですか。」


一応、俺は魔法を使えないってことで話しているが魔法という言葉を出してしまったので意味がない。


「ヒール」


ジャックが自ら唱えてお腹を直そうとしたが効き目がない。


「この通りだ。全然だめだ。」


「あ、私。それ治せるかも。」


エレナが言葉を発した。


「ちょっと。エレナ。なに言っているの。」


ミラが咎め、エレナがシュンとなっている。


「ん。そなたは見ない顔じゃが。」


「すみません。紹介が遅れました。

この人はエレナと申します。私の奴隷です。」


俺は王様にエレナを紹介した。


「ああ、アレクから聞いておるぞ。そなたがエレナか。たしか魔女の。」


「ええ、たまたま入手しました。」


「ま、その辺はおいおい開くが、エレナはジャックを直せるのか。」


「やってみないとわかりませんが、多少は出来ると思いますが~」


そう言ってエレナは俺の顔を見てくる。


たぶん魔法を使っていいか迷っているみたいだ。


「王様、魔法を使ってよろしいですか。」


俺はもう面倒くさいので直接聞いた。


「ああ、そういうことか 言っとくけど、ユートが魔法を使えることはもう既に承知している。

お前のお母さん、アリスがわしにお願いしてきた。

どうか、ユートの力になってほしいと。」


「そうだったんですか。いろいろと旅をつづけるうちに魔法のことが解って来て、人前では使ってはいけない隠さなくてはいけないと思っていました。」


「それは、当たり前じゃ。だが、魔族が現れた以上、魔法の在り方を考える時期かもしれん。」


「ちょっといいですか。」


そう言って、エレナはジャックのお腹に手をかざした。


「ヒールキュア」


エレナは呪文を唱えた。


すると、ジャックの腹の痣がだんだんと小さくなっていく。


「あっ」


エレナが声を上げたと思ったら、紫の痣は元通りに戻ってしまった。


正確に言うと、エレナが治療をする前よりは若干、小さくなったような気がする。


「今の私ではだめでした。」


「ありがとう。エレナ。実は黙っていたが、この毒は、ゆっくりと体を蝕むみたいだ。

最初はこぶし大の大きさだったが、今はこの通り大きくなっる。

このままいけば、早い時期に私は死ぬと確信していた。

だが、エレナのお掛けで直せなくとも進行を抑えることが出来た。ありがとう。」


「ごめんなさい。完治できなくて。今の私には無理なようです。私が強くなれば、エリアヒールが出来るようになったと同じように効果が強くなると思いますが。」


「お主、エリアヒールが出来るのか。」


王様がビックリした様子で聞いている。


「あ、言ったらまずかったですかね。ユートさん。」


「いや、大丈夫だ。遅かれ、早かれ、王様には知られることになる。だって、アレク王子には伝えてあるから。」


「よかった~。また、失敗したかと思いました。」


「エレナと言ったか、その力はこれから何のため使うのじゃ。」


王様がエレナに聞いている。


エレナは俺の顔を見た。


俺は頷き、考えを言うように合図した。


「私は、困っている人を助けたいと思っています。人間族に捕まる前は、貧しい村に赴いて、病気や怪我を直しておりました。

その気持ちは今でも変わりません。」


「エレナ、すまなかった。人間族がお前にひどい仕打ちをしたことを。

だが、この件については、このわしとて変えることはむずかしい。」


「ありがとうございます。王様。私は恨んだりしていません。王様の気持ちがわかっただけでもうれしいです。」


そう言ってエレナはネロをチラッと見た。



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