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ハクのお母さん

「お~坊や。強くなったわね。ひょっとしたら私より強いかしら。」


ハクのお母さんがテレパシーで問いて来た。


なんで俺とテレパシーが出来るのかと思ったが、

この世界は何でもありだから、特に考えるのをやめた。


たぶん、強者は色々と出来るのだろう。


「そんなことないですよ。あ、ハクの面倒を見ていただいてありがとうございます。」


「なに言っているの。ハクは私の子よ。面倒を見るのは当たり前じゃない。」


ん、たしかハクの話から察すると、ハクを捨てたんじゃないの。


「ちょっと。聞こえているわよ。あなたもまだまだね。うまく制御できないとあとあと大変なことになるわよ。」


「おかあさん。主はまだ何も知らないだけなんだよ。それに、急激に強くなっているからまだ、知識がついて行っていないだけ。」


俺たちのテレパシーにハクが入って来た。


「大丈夫よハク。教訓を教えただけ。」


「テレパシーも使い方があるみたいだな。」


「魔法にはいろいろとあるわよ。ハクがだいたい知っているから、あとで教えてもらって。

それで、ハクのことなんだけど、別に捨てた訳じゃないの。ああするしかなかったのよ。

それに、ここの魔物はそんなに強くないし、殺される心配も少なかったのよ。

でも、本当はすごく心配したわ。

この世界、弱い者は死んで逝く定め。それは私だって同じこと。だから、天にハクを託したわ。」


「どうして?」


俺は聞いた。


「あそこを見て。」


そこには、穴が開いていた。


「あそこは、私がいた場所。」


「そういえば、あの場所に寝てたな。」


「そう。あれはダンジョンの入り口。何百年前だか相当昔のダンジョン。

私が身ごもって、たまたまこの洞窟を見つけたの。

なんか居心地が良さそうだったから奥に入ってきたら、ゴブリンが居たわ。3匹。目が赤いゴプリン。

そのゴブリンと戦いになったわ。ずいぶん長い戦いだった。やっとの思いで、3匹を倒したと思ったら、また、そこの穴から赤い目をしたゴブリンが現れて。何とか倒したけど。

また、穴を見るとゴブリンの手が見えて。

また出てくると思ったから、その穴の上に私自身が被さったの。蓋の役目をしたの。

案の定、下からゴブリンが私を退かすために攻撃をしてきたけど、普通のゴブリンの攻撃だから全然問題なかった。

それで、その後、ここでハクを生んだんだけど、やはり洞窟の中では子どもは育てられないわね。だから、ここを通ったエルフにお願いして、ハクを連れ出させたのよ。」


「たしか、エルフってダンジョンに入ると病気になるって。」


「ああそうね、たしかあのエルフは顔色が相当悪かったわね。だから魔法で直してあげたけど、完治は出来なかったみたい。」


「それで、今は大丈夫なの?」


「ええ、ハクが洞窟の中に入って修業をしたから。」


「そういう事ですか。っという事は、この洞窟は誰のものでもないってことか。しいて言えばハクのお母さんのか。」


「え、私のではないわよ。あなたたちが来てくれたおかげでやっと自由になれたわ。」


「ということは、このダンジョン貰っていいの。」


「いいわよ。でも、相当深いわよ。このダンジョンは。

だって、ゴブリンが4匹も出て来たんだから。」


「え、なんか理由があるの?」


「あるわよ。ダンジョンが出来てから、だいたい100年ごとにゴブリンが這い出ると言われているわ。」


「え、知らなかった。」


「だから、ここのダンジョンは400年以上ってことよ。かなり古い部類に入ると思うわよ。

それに、かなり狂暴化しているわよ。なんせ、ダンジョンが出来てから、ダンジョンの餌が一度たりとも入っていないから。」


「そっか。なるほど。ダンジョンは食料を求めて人を誘いたいが、全然来ない。だから狂暴化して中の魔物が強いと。」


「そうよ。でも問題ないか。坊やなら。」


「そんなことないですよ。挑んでみないとわかりません。ちょっと様子を見に行っても大丈夫ですか。」


「どうぞ。好きにして。私はもうここに居るのは飽きたわ。後のことは坊やとハクに任せていい?」


「もちろんです長い間、お疲れ様でした。」


と言いながら、俺はダンジョンの入り口に向かい、穴を上から覗いた。


そこは、エルフのダンジョンみたいに、壁伝いに降りられるようになっていて、下の奥の方が明るくなっていた。


「ちょっとユーちゃん。なにしているの?」


俺の行動に気が付いたサラが言った。


「いやねえ。ハクが引っ張って教えてくれたんだよ だからこの中がどうなっているのかなって。ちょっと見てくる。」


俺はそのまま、落ちた。


「ちょっと。ユーちゃん。」


サラが叫んだような気がした。


「うん。ダンジョンだ。でも他のダンジョンより少し明かりが赤いな。

どれどれ、魔物は居るかな。」


そんなことを一人でしゃべりながら、適当に魔物を探すために歩いた。


「ん、あれはゴブリンか。」


そう思い近づいたらやっぱりゴブリンだった。


でも雰囲気が違う。


今まで遭ったゴブリンとなんか印象が違う。


ゴブリンは俺を見つけ、手に持っている槍を構え突進してきた。


俺は、ゴブリンの強さを確かめるため、一旦躱すことにした。


ゴブリンは俺の脇を通り、俺と目が合った。


「あっ!!」


ゴブリンの目は黒かった。


なんて言うかな。


全部の目が黒い。白い部分が無い。


よく、ホラー映画で目が真っ黒の幽霊とか出てくるじゃん。


あんな感じのゴブリン。


それ以外は普通だった。


でも、スピードはいつものゴブリンより2倍以上速い。


ま、これぐらいだったら俺には関係ないけどね。


そう思いながら、今度はゴブリンの攻撃を剣で受け止めた。


うん。だいたい解った。


力も2倍ぐらい強いな。


ということは、ソロス城のダンジョンよりこのダンジジョンの魔物は2倍強いってことか。


ま、このゴブリンしか見ていなから解らないけど。


とりあえず倒して、戻ることにした。


「ちょっとユーちゃん。ビックリしたでしょ。普通に落ちるから。」


みんな、穴の前に集まって来た。


「悪い悪い。サラ、朗報だ。

どうやら、この穴はダンジョンみたいだ。

しかも、ソロス城のダンジョンより2倍ぐらい魔物が強いらしい。」


「え、どういう事。ユーちゃん?」


「とりあえず、一匹目のゴブリンを倒してきたら普通のゴブリンの2倍ぐらい強かった。だから、サラはダンジョンに長く潜れないだろ。

でもここのダンジョンはなぜか魔物が強いから、深く潜らなくても、ある程度は修業が出来るぞ。」


「え、本当。やったぁ!」


サラは喜んでいる。


「ユート。もしかしてこのダンジョンはどこの国にも属していないの。」


「ああ、ミラ。そうみたいだ。」


「ちょっとそれって大問題じゃないの?」


ミラはかなりビックしている。


「黙っていれば問題ないよ。それに、ここには白い魔物、エルフの守り神が居ることになっているから、誰も近づかないよ。なぁ、サラ。」


「そうね。それに、正確に言ったらここはエルフ族の領土だし、他の国には文句は言わせないわ。」


「そういう事だよ。ミラ。」


「そっか。わかったわ。」


「ユート君。このダンジョンで修業していいの?」


「いいよ。今は商業ギルドの件があるから、無理だけど終わったら修業しよう。そうだ、ホープとサブも連れて来よう。」


「ガオーーー」


ハクのお母さんは咆哮を上げて、洞窟から出て行った。


「ひぃぃぃ~」


エレナは腰が抜けている。


だけどみんな、そんなエレナをほっといた。


「ハク、取り合えず、ここで留守番な。ダンジョンは任せた。ちょっと用事を済ませてから、また戻ってくるよ。」


そう言ったらハクが伏せをした状態で大きくなってハクの押さえていた力が解放された。


「ひぃぃぃ~」


また、悲痛な叫び声を上げているエレナ。


でも、エレナのことはみんなは無視だ。


「ハク~。相当、強くなったんだね。ちょっと悔しいわ。」


ミラがハクの右側の首に抱き着きながら言っている。


「はぁ~。最初に出会った時は私の方が強かったのに、抜かれてしまったわ。」


っと言いつつネロもハクの左首に抱き着いた。


サラは尻尾に抱き着いている。


あ、乗り遅れた。


俺のモフモフ、しかも、青みかかった白い高級モフモフ。


俺は、ハクの背中に飛び移った。


はぁ~。癒される~。


「まったく。しょうがないな。主は。」


そんな言葉が聞こえてきたが無視無視。


ふと、エレナを見ると怖いけど自分も触りたいという気持ちが行動に表れている。


手を出たり引っ込んだりしている。


「なにやってんだエレナ。大丈夫だよ。ハクは人を襲わないよ。」


エレナは俺の声を聴いて、怖る怖るハクに正面から近づいた。


でっかいハクの手がエレナの頭上に近づいた。


「ひぃぃぃ~」


エレナは叫んだ。


「ハク、可哀想だろ。驚かすなよ。」


もちろんハクの手は、エレナの頭の上で止まっている。


ハクはその手をエレナの顔にそっと近づけた。


エレナの顔にやわらかい毛がふれた。


エレナはビックリしたが、その柔らかさに心を奪われたのか、急に両手でハクの大きい腕にしがみついた。


「何これ。こんな感触はじめて~」


エレナはスッゴイ笑顔だ。


エレナもハクのモフモフに心を奪われたみたいだ。


時間がしばらく経った。


「主、いつまでそうしている気ですか。帰る用事があるんですよね。」


「いいの。いいの。幸せ~。」


するとハクが起き上がった。


ブルブルブル。


犬が水を弾くようにハクが俺たちを弾いた。


「うわ~。」「キャー。」


俺とネロとミラとサラは水滴の様に宙に舞った。


もちろんみんなきれいに着地したけど。


「うわ~なんなのこの人たちは?」


エレナはそんな光景を見て感想を漏らした。


エレナが捕まっていた前足は、吹き飛ばさなかったようだ。


エレナは普通にハクから離れた。


「ワオ~ン」


ハクが軽く吠えた。


「ちぇ、わかったよ。もう行くよ。」


「ハク。まったね~」


そうして俺たちは洞窟を出た。


「なんなのこの人たちは、あんなことがあったのに何事も無かったかのような振る舞いは。

ユートさんに付いて行くには相当頑張らないとだめね。」


そんなことを思うエレナでした。




オーガの村に戻ってきた。


「ユートどの~。」


サブの震えた声が聞こえてきた。


「よく帰って来たってわかったな。」


「解りますって。心の底から湧きあがるような恐怖心を抱くのはユート殿しかいません。」


「なるほどそういう事か。」


「あ、ユートさんたち。おかえりなさ。」


ホープも出迎えてくれた。


どうやらホープはだいぶ俺に慣れてきたみたいだ。


「ちょっと、時間が無くなってきたから、もう戻るわ。」


「え、もう旅立たれるのですか。エレナもですか。」


「ああ、エレナも連れて行く。いままで面倒を見てくれてありがとう。」


「そうですか。残念です。エレナにもいろいろとお世話になった。」


「そんなことないですよ。私も本当にお世話になりました。この村での出来事は一生忘れません。」


「おいおい。もう会えないって訳じゃないぞ。王子の許可をもらってたまには遊びに来ればいいんじゃないか。」


「そんなこと出来るんですか。」


「よく解らないけど、エレナが一生懸命働いたら、外出の許可をもらえるんじゃないかな。」


「本当~。私、。頑張る。」


「そうだ、ホープ。今度来たら、修業を付けてやるからな。約束だったし。」


「本当ですか。ユートさん。期待して待ってていいんですね。」


「ああ、ちょっとお願いしたいことも出来たし、期待して待ってていいよ。」


「ありがとうございます。ユートさんが戻られる日を楽しみに待つています。」


「さて、行きますか。サブ、またね。」


俺は挨拶をして、ライオネル城に向かった。


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