再会
「おい、ネロ。大丈夫か?」
ネロは俺に対して剣で上から切り付けてきたが俺は左手で、剣を持っている手を抑え、右手でネロの背中に手を回し、体を押さえつけた。
少し暴れたが、少しずつ意識が戻って来たみたいだ。
「ん、ユート君?」
ネロの剣が手から離れて落ちたと思ったら、思いっきり抱き着かれた。
ネロは泣いているようだ。
数秒の時間を置いて
「ネロ、サラが危なそうだ。ちょっと離れて。」
ネロは無言で離れた。
「サラ、意識は有るか?」
「あ、ユーちゃん。無事だったのね。ゴホゴホ。」
「ほら、しゃべるな。いま、楽にしてやるからな。」
そう言って俺はハイヒールを唱えた。
吹き飛ばされた肩は元通りに戻った。
だが胸元の紫のあざは残っている。
「どうした。サラ。これ?」
「これはね。ダンジョンの毒にやられたの。ダンジョンから出れば治るわ。大丈夫よ。」
「そうか。あとはミラだな。」
そう言ってミラに近づき、俺は片膝をついて「ハイヒール」を唱えた。
「んっ」
ミラは目を覚ました途端、俺と解ったのか抱き着いて来た。
「ユート」
ミラから声が漏れる。
たぶん離せと言っても離さないと思い、俺に抱き着いたままミラを強引に立たせて、サラの元に戻った。
「よかった。みんなにまた会えて。ここは何階?」
「ここは45階よ。」
ネロが答えた。
「そっか。やっとここまで戻って来たか。それにしてもお前たちも頑張ったな。
確か最高到達階数は52階だったよな。あともう少しじゃん。」
「ユート君を助けたい一心で頑張って来たけど結局、ユート君に助けられてしまったね。」
「そっか。ありがとう。少し戦いを見ていたけど頑張ってたじゃん。」
ミラが落ち着いたのか俺から離れた。
「全然だめだったわ。」
ミラが戦いの感想を述べた。
「いくつか指摘出来るけど今、聞く?」
「ええ。」
ネロは答えた。
「戦いの様子を見ていると、ネロがリーダーかな。」
「そうです。」
ネロは答えた。
「なるほど。リーダーはみんなで決めたの?」
「はい。」
ミラが答えた。
「それが一番の原因だね。たぶん安易に一番強いネロをリーダーにしただけでしょ。」
ネロとミラは下を向いている。
「別に怒ってないよ。 2人とももう理解したでしょ。」
「わかりました。」
二人は素直だ。
「ゴホゴホ」
サラが咳をした。
「あ、サラが辛そうだからすぐに地上にもどろう。積る話は地上に戻ってからね。さすがに俺も、もうダンジョンはいいや。」
そう言って俺たちは地上に戻った。
「やった~。ついに地上に戻って来た。」
地上の光を見た時に叫んでしまった。
だいたい100日ぶりかな、もう日数なんてわからない。
俺が歩き出そうとした時、背負っているサラに引き留められた。
「ユーちゃん。ユーちゃんがどれくらい下の階層から来たか解らないけど、気が着いたら地下30階に居たってことにしてね。
ほら、魔法が使えない人間なのに最高到達階数以上、下に居たらおかしいでしょ。」
「解った。ちょっと今テンションが上がっちゃっただけ。大丈夫。平常に戻すから。」
そう言ってダンジョンから出た。
「おい、まさか。あのあんちゃんか。無事だったのか?」
「あ、お久ぶりです。地下30階ぐらいでみんなに助けて貰って。この通りピンピンしてますよ。」
「そうか。良かったな。戻って来れて。」
「ええ、ただ、俺を助けるためにサラが無茶したそうで、すみませんがお話はまた後日。」
「おお、命を懸けてお前を探してくれたこの子たちを大事にしろよ。」
「はい。」
そう言ってダンジョンを後にした。
何んかやけに目線を感じるが、カミルの家に直接向かった。
「ただいま~」
ミラの元気な声が響き渡った。
「あら、お帰りなさい。今日はどうでした?」
「実は、ユートに会えたの。じゃ~ん。」
ミラは体を退けてサラを背負っている俺を前面に出した。
「あ、ユートさん。無事だったのね。よかった~。みんな心配していたのよ。
あ、ごめんなさい。すぐ出るわね。つもる話もあると思うので。」
「すみません。カミルさん。」
ミラが謝った。
「いいのよ。身に余るぐらいのお礼を頂いたわ。友達もとても喜んでいるわ。」
「そう。それなら良かったわ。ありがとう。」
ミラはお礼を言った。
「ん、カミルさんに何かお礼をしたのか?」
俺は聞いた。
「ええ、ダンジョンの魔物をあげたの。」
ミラが返答した。
「あ、そうか。ここのダンジョン産の魔物は食べれるんだっけ。忘れてた。こんなことならいっぱい持ってくるんだった。」
「そんなのいいわよ。ユート君が帰ってきた事が一番うれしいわ。」
ネロが恥ずかしそうに言った。
「サラのベッドはここか?」
「違う、あっち。」
サラが答えた。
「ん。なんかサラ。元気になってない?」
「なってないです。あそこに降ろして。」
そう言われたのでベッドに下したが、サラはなかなか離さない。まだ、背中にくっついている。
「早く横になりなさい。」
そう俺が言うとサラは仕方なく手を離した。
だが、サラはベッドに寝ていない。顔色もだいぶ良い。
「あれ、サラは元気なの?って、胸のあざが消えているし。どういう事?」
俺は聞いた。
「へへ~。実は、ダンジョンから出たら急速に回復するの。でも、ユーちゃんにおんぶしてもらいたくて、黙ってたの。」
「サラ、ずるいわよ。」
ネ口がちょっと怒り気味に言った。
ミラもサラを見る目が怖い。
「なんかみんなにいろいろと迷惑をかけたな。」
そう言った時、ネロとミラは押さえていた気持ちが爆発したのか、俺の左右から抱き着いて来た。
「ホントに生きてて良かった。もうダメかと思ったわ。」
ネロは泣いている。
「本当に心配したんだから。」
ミラもえんえん泣いている。
俺はどうしたらいいか解らなかった。
ふと、サラの方に目を向けると、笑顔で頷かれた。
それを見て俺は、二人の肩に手を回し、抱きしめた。
数分経って、ネロとミラは落ち着いて来た。
するとそのままの態勢でミラが
「なんで、サラだけ落ち着ついているの!ユートのこと心配じゃなかったの?」
と聞いている。
ネロもサラをチラチラと見ている。
「え、私。もちろんユーちゃんのことは心配だったわ。でも、おんぶしてもらっている時に心の整理を一足先にさせてもらったから。」
「あ、だから何度もぎゅってされたんだ。具合が悪いのにおっかしな~と思ったよ。」
すると、ネロとミラの腕に力が入った。
「うぉっ。ちょっと待って!苦しい。それ以上は絞めないで。」
俺はもだえた。
5分ぐらい時間が止まってから、俺に抱き着いている態勢でネロが話し出した。
「ユート君、あの剣はなに?
さっきからとても気になって。感動の再開なのに私の心に水を差しているわ。」
「そうなのよ。私も気になってる。」
「私も」
ミラもサラも剣を気にしているようだ。
「ああ、あれね。ダンジョンの魔物を倒した時、宝箱から出たんだよ。あの剣から発生している威圧がわかるのか。」
「ええ、なんとなくだけど。怖いわ。」
とミラが言った。
「そう。私もユーちゃんの物じゃなかったら近づきたくないわ。」
サラも答えた。
「私はちょっと興味があるけど、100年訓練しても私に扱える剣じゃないわね。」
ネロは言った。
「へ~。みんなは感じるんだ。それだけでもすごいよ。強くなったんだね。」
「そうよ。ユートを探すために、大変だったんだから。」
ミラが言った。
「そうよ。ユーちゃん。私なんて、ダンジョンの毒と戦いながら探したんだからね。」
サラも言った。
ネロにはギュッとされた。
「もう解ったから、そろそろ離れてよ。みんなでご飯でも食べに行こうよ。」
「嫌よ。」
ネロがつぶやいた。
ミラはそんなネロを見て、名残惜しそうに俺から離れた。
ネロはミラとサラを見た。
「解ったわよ。」
そう言って俺から離れた。
なんかよく解らないけど、やっとネロとミラから解放された。
「それでユーちゃん。どうやって戻って来たの?」
「それ、私も聞きたかった。」
「私も」
三人で聞いて来た。
「ここで話せる内容かな。誰かが聞いていたら絶対まずいことになる。
あ、そうだ。実は、ダンジョンから出た時にちょうどオータルから連絡が来ていたみたいで、
すぐ、ライオネル城に戻らないといけないから、その時に話すね。」
「そうね。それが良いわね。ユーちゃん。」
「じゃあ、すぐここを発つの?」
ミラが聞いて来た。
「あ、そう言えば、ギルドの依頼の件はどうなったの?」
「その件は問題ないわ。あ、そう言えは、ギルドカード預けっぱなしだった。」
ミラが思い出した。
「あ、今、考えたんだけど、ギルドはもういいかな。たぶん俺達、というか俺なんだけど、かなり常識から外れていると思う。」
「ユート君、あの剣は、本来の力を鞘が押さえているの?」
「ん、よく解ったな。ネロ。」
「ということは、それを扱えるユート君はかなりって言うか、だいぶ、もう訳が解らないくらい強いってことね。」
「たぶん。」
俺は答えた。
「ネロちゃん。解らないわ。どういうこと?」
サラが開いた。
「簡単にいうと、この前の魔族いたでしょ。今のユート君なら赤子の手を捻るようなものよ。」
「え、あの時は全然敵わなかったじゃない。」
「それぐらい、ユート君は、大変だったってこと。」
「そうなの? ユーちゃん。」
「ああ、5回ぐらいマジで死にかけたかな。」
「え、そんなに!」
ミラが驚いている。
「私たちが危なかったのって、ユーちゃんに助けて貰った1回のみよね。」
サラが比較した。
「ギルドの件みんなどう思う。」
俺はギルドについて聞いた。
「もちろん。ユーちゃんに従う。」
「私も」「私も」
二人とも了承してくれた。
「じゃあ、ギルドカードはもういらないからそのままでいいや。
たぶん俺が帰って来たことでこの町は騒がしいと思うから、夜出発しよう。
ミラ、馬の準備をして。
それと、長い間お世話になったカミルにお礼を言わないとな。」




