女性陣サイド
女性陣は地下35階を過ぎて、地下40階に辿りついた。
このあたりから、サラの様子が変だ。
「サラ、大丈夫?」
ミラが心配している。
「ええ。大丈夫よ。ユーちゃんを助けないと。」
「一旦、戻りましょう。サラの顔色が悪いわ。」
ミラがネロに進言した。
「わかったわ。ミラ。戻りましょう。」
そう言って町に戻り、カミルの家に戻った。
「お帰りなさい。じゃあまた、友達の家に行くわね。」
「あ、カミルさん。魔物を持ってきたけど、どうすればいい?」
「ありがとうございます。じゃあこちらで受け取ります。」
そう言ってミラはカミルに案内されて、倉庫みたいな小屋にやって来た。
「あそこに入れてください。」
そう言って、カミルは車輪が付いた荷台を差した。
ミラは魔法袋からハリネズミを取り出し置いた。
「すごいわね。ネズミに似ているわね。この針痛そう。」
カミルは感想を漏らした。
「これを売って、友達にもお礼をしてください。」
「あのう、ちなみに、この魔物は地下何階にいたんですか?」
「あ、この魔物は地下21階。サラがいたから何とか倒せたわ。」
「わかりました。それじゃあ、有り難くいただきます。」
そう言ってカミルは重たい荷台を持ち上げゆっくりと進んでいった。
私たちはカミルの家に戻り、休息を取った。
ネロの回想
なかなかダンジョンの下の階に行くのが大変になって来たわ。
魔物も強くなっているし、サラのことも気になる。
サラはたぶん、ダンジョンに潜るのに制約があるみたい。
この調子だと、ダンジョンにいれる時間は10日間が限界みたいね。
どう考えても、地下45階がぎりぎりの線ね。
でも、サラが居ないと、ダンジョンを攻略するのは難しいわ。
だってサラしか回復魔法が使えないから。
う~ん。どうしう。
でも頑張るしかないわ。早くユート君を見つけないと。
ミラの回想
流石に心が折れて来たわ。
こんなにユートが居ないことで不安になるとは。
ネロが決して頼りにならないって訳じゃないの。
でも何かが足りない。それにサラ。
いつもはサラがみんなを一歩引いたところから見ていて、最後にはまとめてくれる。
でも、今回は体的に辛そう。きっとダンジョンが合わないのね。
サラに回復魔法を教えてもらったけど、全然できなかった。
やっぱり私には回復魔法の適正が無いのね。
でも頑張らなくちゃ。
みんなを支えるのは私よ。それにユートを早く見つけないと。
サラの回想
ユーちゃんごめんね。
私、もう無理かも。深くなればなるほど、体が辛いわ。
ネロやミラに迷惑をかけないように頑張って来たけど。これ以上はもう無理かも。
でも、ユーちゃんの為に行けるとこまで行くわ。
私の心を解放してくれたユーちゃん。
絶対助けるからね。まっててね。
女性陣は、あと、3回ほど、カミルの家とダンジョンを往復し、やっと地下45階までやって来た。
「なかなか進めなくなってきたわね。」
ミラがつぶやいた。
「あれから、30日以上過ぎているわ。ユート君大丈夫かしら。」
さすがにネロも、これだけ時間がかかっているので、少し心の中で、もうダメなんじゃないかと思っている。
「きっと大丈夫よ。ユーちゃんは、非常識なんだからきっとひょっこり現れるわよ。」
「それもそうね。私たちが弱気になっちゃダメよね。もうすぐ、最高到達階数届くわよ。頑張りましょう~」
とネロが自分の心にも言い聞かせている。
「サラ、顔色が悪いわよ。大丈夫。」
ミラが心配している。
「ごめんね。みんな。私がいるせいでなかなか先に進めなくて。」
「何言っているの。サラが居たおかげでここまでこれたんだから。サラしか回復魔法は使えないのよ。」
ネロがサラを励ましている。
「ありがとう。ネロちゃん。でも、辛くなってきたので、下の階段を見つけたら戻っていい?」
「もちろんよ。それまでみんなで頑張りましょう。」
そう言って、下に行く階段を探した。
しばらくすると
「また、扉だわ。」
ミラが前方の扉を発見した。
「区切りの階数で扉が現れるわね。」
ネロが感想を漏らした。
「サラ、扉の中はどうなっているか解らないよ。それでも大丈夫。さすがに戦力が均衡してきていて気が抜けないわよ。」
ミラが注意をした。
「まだ、大丈夫、やれるわ。」
サラが返事をした。
「わかったわ。サラ。あともうひと踏ん張りよ。これが済んだら町に戻るからね。頑張りましょう。ミラ、行くよ。」
そうネロに言われ、ミラは扉を開け中に入った。
するとそこも暗く、奥の方まで中が見えない。
「ネロ。サラ。また、中が解らないわ用心して。」
ミラに言われ、ネロとサラもミラに続いて中に入った。
すると。いつも通り扉は閉まった。
数秒経ってから明かりが着いた。
目の前には、いくつもの台座に乗っ
た石造が並んでいた。
形は人間の様だが、目が一つしかない。
しかも皆、微妙に形が違う。
っ言うか、それぞれに特徴があって、腕が剣みたいになっている石造や、大きい盾を持っている石造、明らかに魔法を使ってくるような杖を持っている石造、下半身が細く上半身がでかい石造。その逆もいる。
明らかにパンチ力があるぞってアピールしているし、蹴りがすごいと言っているような石像もある。
それが3体ずつ。
その後ろにはいかにもリーダーを守っていますよっていう体制でそれぞれの石像がリーダを守っている陣形になっている。
「ちょっと どうする。また数が多いわね。」
ミラが話した。
「どうするもなにもやるしかないでしょ。サラは、無理しないでね。後方の支援をお願い。」
「解ったわ。ネロちゃん。」
そんな話をしていると、石像が台座の上から降りてきた。
「来るわよ。」
ミラが叫び、石像との戦いが始まった。
「はぁー」
ミラが槍で次々と石造を壊して行く。
石造が攻撃する時間を与えないで前にいる石造15体をすべて壊し、バラバラにした。
「ん。なんか手ごたえが無いね。」
「ミラ!」
ネロが叫んだ。
リーダーを守っている石造から、ファイヤーボールが発射され、ミラの頬をかすめた。
「大丈夫。ミラちゃん。」
「ええ、ちょっとかすっただけ。」
石造のリーダーが右手をあげると、さっきミラがバラバラにした石造が復元し元に戻った。
「え、戻っちゃった。」
ミラは少しビックリしている。
「ミラ。どうやら、あの石造のリーダーを壊すしかないわね。」
「そうね。解ったわ。」
そう言ってミラは、石のリーダーを壊すべく向かった。
すると、さっきミラに壊された石造たちが前を遮った。
「この~」
ミラはさっきの力で槍を大きく振った。
しかし、その槍は右にいた、盾を持っている石造に防がれてしまった。
「あれ、なんか強くなっている。」
ミラはそのやり取りで石像が強くなっていることを解した。
「ミラ気を付けて、次の攻撃が来るわよ。」
ミラは一旦距離を取った。
しかしその行動がまずかった。
下半身が大きい石造がミラを追いかけそのまま横蹴りを放った。
ミラは槍を盾にして防いだが、蹴りが強力過ぎて、吹っ飛ばされてしまった。
「ミラ!」
ネロは叫んだが、助けに行くことが出来ない。
ネロの前には、剣と盾と杖を持っている石造9体がじりじりとネロに詰め寄っている。
「うりゃー」
ネロは9体に切りかかった。
ネロの剣は、盾の石像をものともせず、次々と破壊して、石像のリーダーに詰め寄ろうとするが、上手いタイミングで、ファイアボールがいくつも飛んで来て、一向に近づけない。
そのうち、破壊した石造も元に戻った。
「ちょっとやばいわね。」
「ええ、まさか連携をしてくるとはね。」
ミラは下半身と上半身の石像3体を破壊して、ネロのそばに戻って来た。
「ちょっと今回は力の出し惜しみをしている場合ではないわね。」
ミラの危機感が伝わってくる。
「ええ、サラのことも気になるし、私が突っ込むから、ミラ、後ろから援護して。」
「解ったわ。」
そう言ってネロは一直線に石造のリーダに向かった。
石像たちは、ネロの前に出たが、次々と切られていった。
「よし、次ね。」
そう言ったネロの前に、リーダーを守っている石造が現れた。
ガチャン。
「防がれた。」
ネロの剣は、石像の盾で受け止められた。
だがネロはすかさず、剣の石像を切り付け、戦いは、し烈になっている。
ミラはアイスランスを唱え、復活してくる石像を次々と破壊した。
「きゃ~」
サラの声が響き渡った。
石のリーダーを守っている下半身が強化された石造が、回り込んでサラに攻撃を入れのだ。
「大丈夫。サラ。」
ミラは急いでサラの元に戻り、下半身の石像を破壊した。
「はぁはぁはぁ」
サラの息遣いが荒い。
「サラ、大丈夫。ん。」
サラの体から首にかけて何か紫色のあざが出ていた。
「ちょっとごめんね。」
そう言ってミラは、サラが着ている服の胸を開いた。
すると紫のあざは全身に広がっていた。
「何これ。サラ。」
「ごめんね。ミラちゃん。足でまといになると思って黙ってたの。」
サラの目から涙がこぼれた。
「どうしたの。サラ」
ネロもサラの悲鳴を聞いて戻って来た。
「ネロ、見て」
ミラはネロにも見せた。
「わかったわ。それで、サラはどれくらい動ける。」
「ごめんなさい。もう全然動けそうにないわ。」
「ミラ、サラを守ってあげて。ここは私が何とかするから。」
そう言ってネロは石像向かって行った。
「ちょっと、一人で大丈夫?!」
ミラは叫んだ。
石像たちは、私たちから間隔を取り始めた。
「まずいわね。でも、仕方がないか。あれをやるか。」
そう言ってネロは、何やら呪文を唱えている。
すると、ネロの周りを薄い光が包み込んだと思ったらネ口に吸収された。
「制御ができないからあまり使いたくなかったけど仕方がない。」
そうネロは呟き、次々と石造を叩き壊し、リーダーを守っている石造も壊し、石のリーダーも破壊した。
「すごいネロ。」
ミラはその様子に少し、恐怖を感じた。
ネロは、ハアハアしながらサラの元に戻った。
「ネロちゃん。すごいじゃない。」
サラはかすれる声でネロを讃えた。
「この技はまだ未完成だから使いたくなかった。さぁ戻ろうか。」
「ちょっと、扉が開いていないわ。」
ミラが言った。
「まさか。」
ネロは振り返った。ネロの予想通り、石のリーダーを始め、石像たちは元に戻っている。
「そ、そんなぁ~」
サラは絶望的だ。
「いいわ。もう一度やるわ。」
そう言ってネロは石像の方に歩き出した。
「サラ、ごめんね。ここはもう総力戦で行くしかないわ。出来ればサラもがんばって。」
そう言ってミラはサラの前に立ち、いくつもの氷の玉を発現させた。
「ミラちゃん。私もやるわ。」
サラはふらふらしながら立ち上がった。
「さすがサラね。ここをどうにかしないとみんなやられてしまうわ。頑張りましょう。きっとネロがなんとかしてくれるわ。」
「そうね。結局はネロちゃんにお願いするしかなさそうね。」
「行くわよ。サラ。」
そう言って、ミラはネロが戦っている場所に後方支援として、氷の玉を打ち出した。
サラは、何とか弓を弾いて矢を発現させ、飛ばしている。
「このままでは埒が明かないわ。どうして、倒れてくれないの。もうなんなの。」
ネロは、身体強化の呪文を使い、体が強化されたが、元々、この力を上手く制御が来ていない。
しかも今回は2回目なので、頭が冷静に働いていない。
「ネロ。大丈夫。石像が復活する時間が速くなっているわよ。それになんだかどんどん固くなっている。」
ミラはネロに話かけたが、返事が無い。
「まずいわ。このままだと。やられる。」
とミラがサラの方に向いたら、サラは、敵の魔法が当たったのか、肩が吹っ飛ばされ、後ろに倒れている。
「サラ~」
ミラは叫んだ。
ネロは、目に入るものに反応して、ただ切り付けているだけだ。
「ネロッ」
ネロの攻撃が単調になっているのか、ミラの周りに石像が集まって来た。
「あああ、どうしよう。」
その時、上半身の石像と下半身の石像が合体して、一つの形になった。
「あ、この姿は、ゴーレム。ということは ゴフゥ」
ミラは石像に殴られた。
だが、ミラはネロに伝えるため、声を振り絞った。
「ネロ~、ゴーレムよ。核が有るはずよ。」
しかし、ネロには届いていない。
「ああ~。私が、何とかするわ。」
ミラは、最後の力を振り絞って、氷を全方向に発射した。
それに当たった石像たちは崩れた。
「よし。石のリーダーにきっと核があるわよ。」
そう思い、石のリーダーにジャンプして接近し、グランの槍で渾身の一撃を脳天お見舞いした。
リーダーを粉々に破壊し、その勢いでダンジョンの地面に大きなクレーターが出来た。
「やったの?」
しばらくしたら、粉々になった石は、空中で一か所にまとまり出した。
「だめだったのね。あっ、あそこにもう一匹いた。」
台座の影に隠れていた、小さい雪だるまみたいのがこちらを見ている。
「うっ」
元に戻った石のリーダーが私の上に落ちて来て、私を押さえつけた。
「あいつを壊せれば、あ、壊·れ·た。」
石造の重さに耐えられず、そのままミラは意識を失った。




