再びユートを探しに
「なんか後ろの方で声がしなかった。」
ネロはみんなに聞いた。
「きっと、さっきのやつらよ。無視
しましょう。無視。」
サラが返答した。
「久しぶりに、魔物がいっぱい出て来たわね。でも、全然余裕だったわ。」
ミラが戦いの感想を述べた。
「そうね。この程度だったら、20階までどんどん進んでも問題ないわ
ね。」
サラが言った。
「どうする?ネロリーダー。このペースでいい?」
「何よ。ミラ。わざとらしい。いいわよ。このペースで。」
「はい。了解しました。」
「ネロちゃん。リーダー頑張って。」
「もう、サラまで馬鹿にして。」
「してないわよ。ネロちゃんを頼りにしているの。」
「もう。解ったわ。行くよ。」
そうして、どんどん進んでいき、地下20階に到達した。
「ミラ、サラ。ここから少し慎重に行くわよ。」
「ええ。」「解ったわ。」
ミラとサラは返事をした。
しばらく歩いていると、ミラが立ち止まった。
「来るわよ。」
私たちは魔物に備えた。
前から現れたのは、3匹のゴブリンだった。
「ゴブリンよ。な~んだ。大した
こと無いわね。」
ミラがゴブリンを見て言った。
「ミラちゃん。なんかいつものゴブリンと違うわよ。気を付けて。」
「あ、ミラ。避けて。」
ネロが叫んだ。
ミラはサラの方に向いていたが、ネロの掛け声で危険を感じたので、
ゴブリンの方へ振り向くと野球ボールぐらいのの火の玉が飛んできた。
ミラは顔の前で火の玉を掴んだ。
「ちょと。ミラちゃん。火の玉を素手で掴むなんておかしいわよ。」
「大丈夫よ。サラ。こうやって、手の平に氷の膜で纏えば。」
「そんなこと、ミラしかできないわよ。っていうか、そんなことどこで覚えたの?」
「ほら、ホワイトオーガと戦った時の話をしていたでしょ。ホワイトオーガも体を氷で覆っていたのよ。だから私もマネしたの。」
「へ~すごいね。ミラちゃん。」
「ほら、ミラ、サラ。来るわよ。」
「大丈夫よ。ネロちゃん。」
そう言ってサラは弓を構えた。
すると、矢が発現し、ゴブリンに向けて放った。
その矢は、ものすごい速さで飛んで行き、 一匹のゴブリンの頭を貫通すると、2匹、3匹と頭を貫通し、消滅えた。
「よし!」
サラはちょっとガッツポーズをした。
「ちょっと、サラ。なに今の矢。途中で曲がってゴブリンに当ったけど。」
ミラはちょっとびっくりしている。
「実は、矢の軌道を操れるのよ。」
「すごいわね。」
「でも、あんまり威力が無いのよね。3匹のゴブリンだったら何とかなったけど、数が多いと途中で矢が消えるわ。」
「でも、すごいよ。相手を認識すれば、当たるってことでしょ。」
「そうなんだけど、強い敵にはあまり効力が無いわ。」
「そっか。他にも何かあるの?」
「いろいろ考えているわ。でも、こ
れからのお楽しみ。」
「え~教えなさいよ。」
「嫌よ。ミラだってなんかいろいろ隠していそうだし。」
「あははは~ばれた。」
「ほうら。私の目は騙せませんからね。」
「ちょっと、早く進むよ。ミラ、サラ。」
ネロはミラとサラの会話が長くなりそうだから、急かした。
「ごめんね。ネロちゃん。ネロちゃんは何か必殺技みたいのはないの?」
「え、私? 私は特に考えていないわ。」
そう言ってネロはグランの剣を上に向けて目の前に立てた。
「私はこれで、全ての物を斬るわ。それ以上でもそれ以下でもないわよ。」
「さっすがネロ。やっぱりネロはそうで無くっちゃね。やっぱり、純粋な強さが一番で、美しいわよね。」
「あ、わかる。ミラ。やっぱり強さを求めるなら絶対無比な力よね~」
ネロは、ミラの言葉で嬉しそうだ。
「たぶん、ネロちゃんの強さって、私たちと根本的に考えがちがうわよね。
私とミラちゃんは、小手先だけど、ネロちゃんは基本に忠実というか、一直線だよね。」
「そうそう。逆の言葉で言い返すと固いってことだけど。
本当の戦いになると地力が強い方が勝つからね。」
「もうこの話はやめにして、進みましょうユート君が心配だわ。」
「そうね、行きましょう。」
そう言って女性陣は下に降りる階段を探し始めた。
地下21階
「ねえ、一体、どれくらいこのダンジョンは深いのかしら。」
とミラが呟いた。
「わからないわ。」
サラも解らないようだ。
「そんなことどうでもいいわよ。今は、ユート君を助けたいだけ。行くよ。」
ネロは、かなりユートを心配している。
「ちょっと待ってよ。ネロ。」
ネロはユートが心配で足取りが速い。
「あ、魔物よ。」
ネロが叫んだ。そこには5匹のゴブリンがいた。
「また、ゴプリンね。」
「今度は私がやるわ。」
そう言ってネロは駆け出した。
ゴブリンは何もすることなく、ネロに切られていった。
「う~ん。この調子だと、あと10階は降りても問題なさそうね。」
ネロは言った。
「そうね。問題ないかもね。」
サラも納得している。
「わかったわ。どんどん進むわよ。とりあえず地下30階を目指しましょう。」
と言ってミラは軽く走り出した。
29階のダンジョンに来るまでかなりの時間が経っている。
「やっと29階まで来たわ。さすがにもうだめ。眠いし、疲れた。」
「そうね ミラちゃん。さすがに休憩なしに、3日間ずうっと。いくら魔物が弱いからといっても急ぎ過ぎよね。」
「わかったわ。それじゃあ、30階の階段を見つけたら一旦、町に戻りましょう。」
「そうね。その方がいいわね。ネロちゃん 」
そんな話をしながら、29階を探索した。
魔物については、少しは強くなっているけど、手こずるほどの強さではない。
あと宝箱が3つほど出たけど、魔鉄と短剣と小さい盾だった。
性能は良くわからないのでミラの魔法の袋に閉まってもらった。
「ちょっと、ネロ。扉があるわよ。」
ミラが立ち止まった。
「ん、なにこの扉。初めてだね。」
サラが答えた。
「ちょっとどうする。ネロ。開ける?」
「いままで、降りる階段を探していたけど、見つからなかったということは、この先に階段がある可能性が高いわね。」
ネロがいろいろと考えている。
「扉って言ったらボス部屋じゃないの?」
サラが聞いた。
「え、そうなの?知らなかった。じゃあどうしよう。」
ネロは答えた。
「私は大丈夫よ。まだ、魔物は弱いし。何とかなると思うわ。」
ミラが気丈に言った。
「サラは?」
ネロはサラにも聞いた。
「私も、ここを突破したら戻れるなら頑張る。」
「そう、わかったわ。行きましょう。」
ネロはミラに指示を出して、扉を開けさせた。
「行くわよ。」
ミラが先頭になり、慎重に扉の中を進んでいく。
その後をサラとネロも慎重に進む。
すると前方に魔物が現れた。
「なにあれ、ネズミ? 針?」
ミラが呟いた。
丸くて大きい、針がいっぱいついている魔物がこちらを睨んでいる。
「大きいわね。どうする?」
サラがネロに意見を求めている。
「サラ、やるしかないわよ。扉も閉まっているから逃げられないわよ。」
「とりあえず私が行くわ。」
そう言ってミラがハリネズミに駆けだした。
ハリネズミは、体を丸くして、針を突きだし、ミラの攻撃を待っているようだ。
ミラは、とりあえず、グランの槍で一撃を放った。
すると、その攻撃に合せて、体の針りの一本が急に飛び出してきた。
「きゃ」
ミラは軽く叫んだが、うまく躱した。
「ちょっとミラ、大丈夫?」
ネロはミラを心配した。
「大丈夫よ。見てて。」
そう言って、ミラはグランの槍を長くした。
「これで突けばダメージがあるでしょ。」
そう言いながら突き刺した。
すると針ネズミは、
「キャイ~ン」
と可愛い声を発した。
「えっ」
ミラはその声に油断したのか、槍がハリネズミの体から抜けてしまい、ハリネズミはミラから距離を取った。
「ミラちゃん気を付けて、何かやる気よ。」
サラが警告した。
するとハリネズミは体ブルブルと震えた。
そうするとだんだんと毛の針が全方向に散らばってきた。
ウニみたいな感じ。
ミラは警戒した。
針が飛んでくると思って。
だが、針では無く、一部の針から電気が発射された。
ミラは咄嗟にグランの槍を地面に突き差し、手を離した。
すると、その電気は、グランの槍に当り、地面に吸収されていった。
すると、ネロがハリネズミに駆け出し、グランの剣で、針ごと切り裂いた。
ハリネズミは絶命した。
「もう危なっかしくて観てられなかったわよ。」
とネロがミラに言っている。
「だって、まさか電撃が飛んでくるとは思わなかったわよ。あそこでは普通は、全体に針を飛ばす攻撃でしょ。それだったら、槍をくるくる回して防ごうと思ったのに。」
「はい、ミラちゃんの予想は大外れ。ミラちゃんはネロちゃんを見習った方がいいわよ。突発的な対処を。」
「私は無理よ。野生児じゃないし。」
「何よ。ミラ。私は、野生児なんかじゃありませんからね。私は、適応能力が優れているだけです。」
「それが野生児だっていうの。」
「なんか言った ミラ?」
「何でもないで~す。」
「ミラちゃんいい加減にしなさいよ。じゃあ、戻りましょうか。」
「はい。戻ろう。」
そう言って女性陣は町に戻った。




