ユニークな魔物
「今回も精が出るわね。」
「ああ、早く地上に戻りたいからな。」
「そうね。頑張ってね。あ、実は、お願いがあって、この前のお肉ぜんぶ食べちゃつたから。また、取って来てよ。森にいる魔物でいいわよ。」
「うん。わかったよ。少し休憩してからでいい?」
「いいわよ。よろしくね。」
そう言って、メーテルは奥の部屋に入って行った。
俺は、魔力と体力を回復するために、少し眠りに就いた。
数時間して目が覚めた。
「それじゃあ、行ってくるね。」
「お願いね。」
メーテルに見送られながら森に向かった。
なかなか魔物に出会えなかった。
たぶん俺が結構、魔物を倒したからだ。
あれ~、ここはダンジョンだから、魔物は次々と発生するはずなんだけど。たぶんだけど。
だって、仕組みがよく解らないし。解明もされていない。
それでもメーテルのために魔物を探すため森を歩いていると、「ぞっ」と鳥肌が立った。
後ろをゆっくり振り向くと、そこには、黒いヒョウでは無く、毛並みが金色に輝いたヒョウがいた。
そいつは俺をじっと見ている。
やつの姿を見た瞬間、俺は、思った。
こいつはやばいな。
この前倒したワームの比じゃないな。
素の俺だと絶対に勝てない。俺は背中から翼を出そうとした。
金のヒョウはその隙を見逃さなかった。
素早い動きで突進してきて、そのまま俺の首を狙って来た。
俺は、魔法の小手で防いだと思ったが、しっかりと金のヒョウの牙は小手を貫通して腕を噛まれた。
俺は残っている腕で、そいつの腹を殴り返したが、空を切った。
金のヒョウは、後ろにジャンプをして距離をとり、下をペロッとしている。
噛まれたところが治っていない。
なんだ。特殊な攻撃か。
今のやり取りがあった後、背中の羽は生え、それと同時に、噛まれた腕から血が止まった。
ん、血は止まったな。
力の差でこういう事もあるのか。
まあいい。
どっちにしろ、あいつの牙は要注意だな。
ん、手で顔をさわり指を見ると手に血がついていた。頬を切られた。
後ろに振り向くとそこに金のヒョウが居た。
あ、見えなかったぞ。
なんて速さだ。しかも、傷の治りも遅い。
最初のは挨拶代りだったのか、気づくとおれの体は次々と刻まれていった。しかも深く。
やべーよ。全然見えないし。
このまま俺はやられてしまうのか。
そう思っていると、腹に強い衝撃を受け吹っ飛ばされた時に金のヒョウの動きが見えた。
ん、そうか。
体当たりをされて同じ速さで吹こっ飛されたら見えたのか。
ということは、俺も早く動けばあいつを捉えることが出来るのか。
俺は、空中で態勢を整え、羽の力でスピードを上げた。
すると、あいつの姿が見えた。
俺は、久々に右手に風のボールを
作り、金のヒョウの噛みつき攻撃を紙一重で避けながら、金のヒョウの顔に当てた。
クリーンヒットして金のヒョウは吹っ飛び転がっている。
よし、何とか効いているぞ。
「ガルルル~」
と金のヒョウが唸った瞬間、俺の心臓を何かが貫いた。
え、なんだ。
胸を確認するとぽっかりと心臓の所に穴が開いている。
俺は、ロから血を吐いた。
金のヒョウはその様子を見ていて、勝負は付いたと思ったのか攻めてこない。
俺的には有り難いが、いくら心臓をつぶされても生きているって言っても、気持ちいいもではない。
俺は、今、完全にヴァンパイアだと自覚した。
今までは、ひょっとしたら人間かも。なんて思っていたが、さすがに心臓が無くても生きているなんてヴァンパイアとして認めるしかなかった。
でも、そもそもこんなヴァンパイアになりたかったんだけどね。
ってそんなこと夜考えている暇はねぇ。
俺は、心臓を取られても死ぬ危険が無いが、とりあえずヒールを唱えた。
すると、羽のおかげか、心臓はもちろんのこと、先ほど切り刻まれた傷も綺麗に治った。
それを見た金のヒョウは、また、何かを放ってくる様子だったが、今度は的を絞らせないように、俺は、飛び回った。
金のヒョウは先ほどのレーザーだと思うが、いくつも飛ばしてくるが飛んでいる俺には当たらない。
俺は、金のヒョウに向けて青いファイヤーボールを飛ばした。
金のヒョウは油断をしていたのか、簡単に命中した。
青い火はそのまま燃えあがり、金のヒョウを青い炎が包み込んだ。
よし、勝ったな。
そう思い、俺は、動きを止めた。
「うわっ」
金のヒョウが炎に包まれているところからレーザーが発射され、大袈裟に避けてしまった。
しばらくすると、青い炎が収まり、中から金のヒョウが何事も無かったかのようにこちらを睨んでいる。
マジか~。俺の最大の攻撃。
青い火が効かないのか。どうする。
金のヒョウは右腕を舐めている。
畜生、余裕を見せやがって。
でも、どうするかな。
そんなことを考えていると、金のヒョウは再び攻撃を仕掛けてきた。
さっきと同じ直接攻撃だが、威力がハンパない。
しかも、今度は首と頭を狙って来ている。
ち、あいつは頭もいいのか。
次々と飛びかかられ、繰り出される。
その目にも止まらぬ早さの攻撃をで、俺はその場所から動けないでいた。
やばいぞ。このままだとじり貧だぞ。
しかし、反撃のチャンスも与えてく
れない。
やべ~。自己回復も追い着いて行かない。
一か八かだ。
俺は、わざと、金のヒョウの攻撃を正面から受け、吹っ飛ばされた。
俺の腹は抉られているが何とか動ける。
俺は、青いファイヤーストームを
金のヒョウを中心に6か所に発生させた。
うまい具合に金のヒョウは炎を警戒して動けないでいる。
俺はファイヤーストームの威力を強めた。
すると、金のヒョウは力なく倒れた。
よし。うまくいった。
良かった~。
これがダメだったら俺はやられていたな。
そう思いながらヒールを唱え、腹と体の傷を癒した。
なんで倒せたかっていうと、青いファイヤーストームで酸素を燃焼させて金のヒョウの周りの空気から酸素を無くして、尚且つ二酸化窒素を増やしたからだ。
ここに森があるってことは、空気を吸って生きている証拠。
だから、酸素を無くして、且つ、吸い過ぎると猛毒というか、ほとんどの生物は生きられない二酸化窒素を増やしたってわけ。
ん、金のヒョウが倒れている後ろに金の宝箱がある。
お、ここに来て初めての宝箱だ。
しかも、金。
スッゲー豪華。
スマホが有ったら写メで撮ってみんなに送信して自慢したいぐらいだ。
もっと眺めていたいたいが、消えてしまってはもったいないので、すぐに開けることにした。
俺は、金の宝箱に触れた。
すると、上の蓋が開いた。
ん、なんだこの小っちゃい剣は。
そこには、宝箱の大きさの剣が入っていた。
短剣サイズだ。
そりゃそうだよな。
宝箱以上の大きさなんて入らないし。
ちょっと小さくて残念だったが、取り合えず、鞘に入っている結構強そうで小さい剣を取り出した。
すると、みるみる大きくなり、俺の体に合う大きさの片手剣になった。
すごっ。そっか。こうなるのか。
そう言えば、サラの木の弓も大きくなったような気がしたが、枝だったので、そこまで、関心が無かったんだよな。
ダンジョンの宝箱ってすごいなぁ。
俺は、鞘を左手に持ち、剣を引き抜いた。
な、なんなんだこの威圧感は!
普通の人間だったら見ただけで気絶するほどの威圧感だ。
初めてだこんな剣は。
ま、今の俺にはちょうどいいか。
でも、メーテルには危険だな。これは鞘に納めておこう。
そう思い、鞘にしまうと威圧感も無くなる。
これは俺専用だな。
たぶん。ネロも扱えないだろう。
そんなことをしばらく考えてながら剣を見ていた。
あ、そういえば。
俺は、金のヒョウが倒れているところを確認したらを消えていた。
あ、どうしょう。メーテルの依頼が。
でも、金のヒョウを持って行っても驚かれるだけだし、まっいっか。
また、探せば、黒いヒョウは見つかるだろう。
そう思い、森を歩き出した。
「あ、いた~!」やっと見つけた。
何時間探したんだ。4時間ぐらいか。
金のヒョウを倒した後だからもう疲れた俺は、素早く黒ヒョウを捕まえて殺し、メーテルの元に帰った。
「おかえり、どうだった?」
「はい。これ。なかなか見つからなくてさ。疲れたよ。」
「ありがとう。どうする。休む?」
「うん。疲れた。」
俺は、本当にクタクタで、その場に倒れ込んだ。
「もう、仕方がないわね。ユートさんったら。ユー卜さんを寝床まで運べるかな。
ん、なんだろうこの剣。ユートさん、こんな剣持っていたかしら。
でも、綺麗。なにこの赤い宝石は。」
メーテルは剣の柄の部分についている赤い宝石を触った。
「キャーーー! !」
メーテルの大声が響き渡った。
「あ、どうした?なんかあった
のか?」
俺は、メーテルの叫び声で目を覚ました。
すると部屋の隅っこで顔を青くしたメーテルが震えている。
もともと顔は青いがもっと青い。
しかも目の上からいくつもの線が縦に入っているぐらいの勢いで震えている。
「おい、どうした。?」
「ひぃぃぃ~」
「おい、落ち着け。」
「な、なに?その剣は?」
「あ、これか魔物からドロップしたんだよ。」
「やめて~近づけないで~。」
「わかったよ。ちょっと待って。」
俺は腰から剣を外して、部屋の外に置いて、メーテルに近づいた。
「はぁはぁはぁ。」
メーテルは何とか自我を保つのに精いっぱいだ。
「大丈夫?」
「ええ、大丈夫。なんなのあの剣は?」
「実は、黒ヒョウの色違いの魔物が現れたんだ。」
「え、ユニーク?」
「ああ、ユニークね、そうかも。」
「何色?」
「金だった。」
「きんんんー!」
メーテルはかなりビックリしている。
「金がどうしたの?」
「あんたね~そんなことも知らないの?ユニークもランクが合って、色によって強さが違うのよ。それこそ金なんて化け物級よ。」
「え、そうなの?」
「たおしたの?」
俺の襟を掴んでメーテルが聞いている。
「はい・・・」
「はぁ。そりゃ~そうよね。あの剣を持っているんだから。
でも信じられなくて聞いてしまったわ。
それにしてもあんた、強くなったね。っていうか、強くなり過ぎよ。」
「あははは~俺は良くわからないけど。」
「もうユートさんってば。でも、その剣とあなたの力で絶対に地上に戻れるわよ。確信したわ。」
「それでさ、メーテルさんも一緒に行こうよ。」
「誘ってくれてありがとう。でも、私は無理なの。」
「え、どうして?」
「私の力だけじゃ、あの山を越えられないわ。」
そう言ってメーテルは火山地帯の山に指を差した。
「まさか、熱で溶けてしまうとか?」
「そうよ。そのまさかよ。氷の魔法が得意な方が居れは、助けてもらい何とかなると思うけど、ここにはいないしね。」
「あ、俺の仲間に氷の魔法が得意なやつがいるよ。」
「そう。でも、必要ないわ。ユートさんの邪魔になってもいけないし。」
「え、メーテルさんは、ここを出たくないの?」
「出たくないわけないじゃない。故郷に戻りたいわよ。でも、希望を持つと苦しいからやめて。」
「よかった~。大丈夫。必ず戻ってきます。それまで待っててください。」
「わかったわ。期待していいのね。」
「ええ、約束します。」
「ありがとう。でも、無茶しないでね。待つのは慣れているから。」




