LVあげ3
そして、数日経った。
今では、ジェネラルホーンは3匹同時に倒すことが出来る。
メーテルが作ってくれたジェネラルホーンの剣が余裕であの固い皮膚を切り裂いたからだ。
もちろん角は切れないけど。
だから森地帯もそろそろ卒業だ。
「メーテルさん。山岳地帯で一番弱い魔物って解る?」
「え~解らなわよ。」
「そっか。あの蝙蝠男は?」
「え、蝙蝠男。」
「そう。蝙蝠の羽を持った人みたいの。」
「ああ、あれね。あれには絶対に手を出しちゃダメ。」
「え、なんで?」
「あれは、吸血鬼よ。ヴァンパイヤのご先祖様っていいってもいいと思う。正確には違うと思うけど。」
「吸血鬼とヴァンパイアの違いって?」
「私もよく解らないけど一番の違いは、吸血鬼は地上の太陽の光に当ると灰になるわ。」
「それって、吸血鬼らしいね。」
「は?」
「いや、なんでもない。他には?」
「う~ん。それ以外は容姿かな。吸血鬼とユートさんを比べるとユートさんの方がかっこいいし。」
「そりゃ~そうだな。でもさ、ヴァンパイアの僕と通じるところはないの?」
「わからないわ。一度会ったんでしょ。もう一度会ってみたら。」
「そんなに都合よく会えるかな。ちょっと行ってくる。」
「がんばってね。」
おれは、黒ヒョウを焼いて、蝙蝠男にを誘い出すため森に向かった。
取りあえず、この前みたいに黒ヒョウを一匹確保してバラし、大きめの石の上に乗せファイヤーを唱えて、焼きだした。
「また、これで現れてくれればいいが、そう簡単には誘き出すことは難しいだろうな。」
そんな独り言を言いながら、お肉を焼いて行く。
マジでいい匂いがしてきた。
今回はメーテルに少し塩を貰っており、蝙蝠男が現れなかったら、おれ一人で食べようと思っていた。
しばらくすると、パサパサと上空から音がした。
「げぇ」
やばい。寄りによって3匹いる。
俺の数メートル前に降りて来たと思ったら、
「キーン」
と音がなり、頭が痛くなった。
「やめてくれ。その肉はあげるから。」
そう言うと音が収まった。
「おい、お前、やっぱりしゃべれるのか?」
「ああ、しゃべれるよ。」
「そうだったのか。ごめんごめん。久しぶりに焼いてある肉を見たので、興奮して奪い取ってしまった。」
「いいよ。別に。っていうか。もう後ろのやつらは食べているし。」
「ごめんよ。こいつらも悪意はないんだ。許してくれ。」
「いいよ。俺から誘き寄せたことだし。」
「ん。誘き寄せたってことは、なんか俺たちに用か?」
「いや、ちょっと話が聞きたくて。」
「おお、いいよ。俺も食べながらでいい? 」
「どうぞどうぞ。」
「悪いな。俺たちは風の魔法しか使えなくて、焼いてある肉なんて数百年ぶりだ。」
そう言ってガツガツ食べだした。
「で、俺たちに聞きたいことってなんだ?」
「実は、俺はヴァンパイアで、貴方たちが吸血鬼と聞いたもので、僕のご先祖に当るのかなと思って。」
「なに? ヴァンパイアって。種族か何か? それにしてもよく俺たちが吸血鬼って解ったな。」
「いや、メーテルさんが教えてくれて。」
「ん、メーテルってあの青白い人間のことか?」
「そうです。」
「あいつも、ここに長く住んでいるからな。」
「え、メーテルさんのことを知っているんですか。」
「ああ、あいつは昔、ここに来てから一人ぼっちだ。透明になる能力があるみたいだが、ここでは、役にたたない。
だいたいの魔物があいつを認識している。」
「え、魔物もですか。」
「ああ。だから俺たちが興味本位で守っている。特に干渉はしていないが見て楽しむペットのようなものだな。
首に石が付けていたろ。
あれは、昔、あいつが魔物に襲われて気絶をしている時に俺が助けて、与えたものだ。」
「そう言えは綺麗なネックレスをしていましたね。」
「それがあるから魔物は近づいてこない。でも効力は砂漠地帯までだけどな。」
「ありがとうございます。」
「ん、お前にお礼を言われる筋合いはないんだが。」
「いえ、貴方たちがメーテルさんを助けたから今の僕が居るんです。」
「そうか。良かったな。それでこの肉は全部食べていいのか。」
「いいですよ。良かったらメーテルさんも紹介しますし、また、作りますよ。」
「有り難い。でも、あの青白い人間には会わない。」
「どうしてですか。」
「俺たちは他の種族とは仲良くしない。
でも、お前は何か俺たちと同じ匂いがするな。」
「だから言っているでしょ。たぶん俺の先祖だって。」
「ははは~、そういう事か。で、なんでお前はここに居るんだ。」
「ダンジョンの罠に嵌りまして。」
「あははは~。俺たちと同じだ。」
「あなたたちは、このダンジョ
ンから抜け出さないのですか。」
「ばか言うでね~。俺たちは地上の太陽が嫌いだ。こんな快適な場所からわざわざ自分から出るわけがないだろ。」
「快適?」
「そうだ。というか死活問題だ。俺の仲間も大勢、太陽に殺された。で、やっと見つけたのかここだ。」
「なるほど。ここは、ある程度の強さがあれば、生活環境はすごくいいですからね。」
「そうだろ。お前も一緒に住むか。お前が居れば、いつでも焼いた肉が食べられるし。」
「あははは~。すみません。僕は地上に戻ってやることがありますので。」
「そっか。ん、お前は太陽の光を浴びても問題ないのか?」
「問題がないと言えばうそになりますが、灰にはなりません。
力が結構落ちるくらいです。」
「ほう、すごいな。俺たちから進化したってことか。」
「さぁ、それはわかりません。実は私も、ヴァンパイアのことが知りたくて冒険している身で。」
「なぁ、ちょっとお前の血を舐めさせてもらえないか。」
「いいですよ。」
そう言って俺は自分の手の甲を強めに切り、吸血鬼に飲んでもらった。
「うお!!」
吸血鬼は声を漏らすと目をつぶって、体が小刻みに揺れている。
「大丈夫ですか。」
「あ、大丈夫。問題ないからそのまよ黙って待ってて。」
肉を食べているもう一匹の吸血鬼に言われた。
しばらくすると、吸血鬼はカッと目を見開いた。
しかもなんかかなり疲れているようだ。
「おい、悪いがすべて見せても
らったが、ここですべてを話すのはやめよう。ただ、助言と力になることは出来る。どうする。聞くか?」
「あの~すみません。これからの冒険に支障が無い範囲で教えて頂ければ助かります。出生の秘密とかを知ってしまうとこれからの人生楽しくないので。」
「うむ。わかった。じゃあ、簡単なところから。
いつもお前は、大空を飛びたいと思って魔法を特訓しているだろ。でも飛べない。なぜだかわかるか?」
「そうなんです。空中に浮くことは出来ますが、一定の高さに制限があるらしくて。」
「ははは~。それはお前に羽が無いからだ。」
「そうなんですか。そんな単純な話なんですか。」
「そうだよ。いくらこの世界が魔法を使えるからって魔法も万能ではない。
種族や個人によってできない物もある。俺たちが炎を扱えないように。」
「そっか。なるほど。でもよくおれの悩みが解りましたね。」
「だから言ったろ。すべてを見させてもらったって。
相手の血を飲むと血の記憶を探ることが出来る。
しかも、血族すべてのな。」
「それは、すごすぎる。」
「お前はどうやら俺たちの子孫みたいだ。」
「やっぱりそうなんだ。」
「ただ、ヴァンパイアになったのは偶然が折り重なって生まれたみたいだ。
だから、俺たちが今からヴァンパイアになろうとしてもできない。」
「なるほど。」
「で、お前は体の中にすごい力を秘めている。きっかけを与えれは、たぶん俺たちより強くなるだろう。」
「え、本当ですか。」
「ああ、ただこれをやるには
条件がある。」
「何ですか?」
「俺たちに敵対をしないことだ。」
「しません。しません。絶対に。」
「枷をかけるがいいか。」
「いいですよ。ただ、貴方だけにしてもらえませんか。
あなたのお仲間が俺や俺の仲間に手を出すと敵対すると思うので。」
「大丈夫だ。俺の仲間は全員、俺と繋がっている。お前の仲間や今まであった人には、危害を加えない。というか。俺たちはここを出ないからそんなことはまずありえない。」
「それだったら問題ないです。僕はここを出たら、もう戻らないと思いますので、メーテルさんは連れて行きよすからね。」
「いいよ。どうぞ。たまには、戻ってきて肉を焼いてくれ。」
「わかりました。」
「ま、期待しないで待っているよ。よし、こっちに来て座れ。」
そう言われ俺は蝙蝠男の前に座り背中を向けた。
「痛て」
俺は、蝙蝠男に首を噛まれた。
その瞬間、俺は意識が遠のいて気絶した。




